「身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴えに係る訴訟」のことで(人事訴訟法2条)、典型例は離婚訴訟です。この人事訴訟の手続きには民事訴訟法も適用されますが、人事訴訟法が優先して適用されることになります。

通常の民事訴訟と何が違うの?

貸金返還請求のような通常の民事訴訟と人事訴訟とで、大きく違う点があります。

家庭裁判所が管轄

通常の民事訴訟は地方裁判所か簡易裁判所が管轄ですが、人事訴訟の管轄は家庭裁判所です。

調停前置主義

調停をせずに通常の民事訴訟を提起することは可能です。しかし、人事訴訟の提起前には調停をしておく必要があります。ちなみに、離婚調停が不成立に終わったからといって自動的に離婚訴訟になるわけではありません。そのため、離婚訴訟を提起したいなら、改めて訴えを提起することが必要です。

職権探知主義

「裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる」とされています(人事訴訟法20条)。通常の民事訴訟では、このようなことは認められていません。

もっとも現実問題としては、当事者が主張しなければ、その事実を裁判所が知ることもできないということが多いです。そのため、「全てを裁判所に任せておけば、裁判所が全ての事情を自ら調査してくれて、公正妥当な判決を出してくれる」と期待するのは見当違いです。

また、離婚訴訟(人事訴訟)では、いわゆる欠席判決が出ることはありません。すなわち、「被告が欠席しているから、それだけで離婚を認める」ということにはなりません。裁判所は、原告の行う立証活動を元に、離婚を認めるか認めないかの判決を下すことになります。

そのためか、調停までは当事者だけで手続きを行っていても、離婚訴訟になると弁護士に依頼することが多いようです。

参与員

離婚訴訟(人事訴訟)では、参与員という民間人が関与してくることがあります。人事訴訟を提起した後で和解がまとまらないと当事者を尋問する段階に進みますが、このあたりから参与員が関与してくる可能性があります。ちなみに通常の民事訴訟では、参与員が関与してくることはありません。