不利な示談書にサインさせられてしまったときは?

サインした以上,内容を守る義務があるのが原則です。

法律的には,一度約束したことは守らなければなりません。
「一度は払おうと思ってサインしたが,やっぱり払いたくなくなったので示談書を無効にしたい」というのは,通用しません。

示談書はどんな場合に無効にできる?

自由意思で約束したのではない場合

ただ単に「支払うつもりは本当はなかった(その場を逃れたいだけだった)」というだけで,裁判で示談書の無効を認めてもらうことは(当然ですが)まず無理です。
もっとも,「約束に縛られるのは,自由な意思でその約束をしたからだ」というのが大原則です。
そのため,約束する際に(こちらに落ち度なく)極めて重大な誤解があったような場合とか,相手方の悪質な行為によってサインさせられたような場合は,「自由な意思で約束したものではない」と主張して,裁判で示談書の有効性を争うことが考えられます。
とはいえ,例えば「部屋に閉じ込められ何時間も詰問された。サインするまで帰さないと脅されてサインせざるを得なかった」というように,それなりの重大な事情があったことを証明することが必要となります。

示談書を無効にしてもらうためには?

相手方が話し合いで示談書の無効を認めることは考えにくいので,示談書が無効であることを確認する裁判を起こすか,相手から裁判を起こされたときに,反論主張として示談書が無効であることを主張する方法が考えられます。
もっとも,ちょっとやそっとのことで無効になるのであれば示談契約をする意味が無くなってしまいますので,先に述べたようにそれなりの事情(「確かにこのような事情があれば,本人の意思でサインしたとは言えない」と裁判所が思ってくれる事情)がないと,裁判で無効を認めてもらうことは困難です。
ただ,相手も裁判まではしたくないと思っている場合は,示談書の作り直しに応じてくれる可能性もゼロではないかもしれません。

まとめ

「これできっちり解決しよう」というのが示談です。ところが,生半可な知識で進めたり,迂闊にサインしたりしてしまうことで,逆に後から揉めてしまうことがよくあります。これでは何のために示談書を作っているのか分かりません。
慰謝料請求側から言えば,「示談書さえ取りまとめてしまえばそれで安心」とは言いきれません。相手方の自由な意思を阻害したと言われないように気を付け,さらに,そのことを後で証明できるような状況で示談書を交わすようにしておくことをお勧めします。さらに公正証書の形で作成すれば,効力の面でもより確実と言えるでしょう。
逆に請求されている側から言えば,「いったん示談書を交わしても後からひっくり返せるだろう」と甘く見ていると,とんでもないことになりかねません。迂闊に示談書にサインする前に,弁護士に相談するのが一番です。万が一サインさせられてしまった場合でも,なるべく早く弁護士に相談し,善後策を練るほうがいいでしょう。