例えば大阪夫妻と東京夫妻がいたとして、それぞれが結婚している間に、大阪(夫)と東京(妻)が、お互いを既婚者と認識したうえで肉体関係を持つといったような場合もよくあります。
このようなダブル不倫の慰謝料問題の特殊性として、加害者と被害者が、双方の夫婦の中に存在することがあげられます。この例では、大阪(夫)は東京(夫)に対する関係で加害者、東京(妻)は大阪(妻)に対する関係で加害者となるわけです。
このように「被害者が加害者に慰謝料請求できる」という関係が双方に対して同時に存在している点で、解決が複雑になります。不倫慰謝料の問題が離婚問題に発展することも多いのですが、双方とも離婚するとは限らず、逆に双方とも離婚しない場合や、一方のみ離婚する場合もあります。
あなたが慰謝料請求をする側/請求されている側のどちらであるかにかかわらず、2夫婦=4名全体の関係を見通さないで下手に進めてしまうと、非常に落ち着きどころの悪い(しっくりこない)結果になってしまう可能性も高いです。特にこのようなダブル不倫の場合は、経験豊富な弁護士に相談しながら進めていく方が望ましいケースです。
なお、ダブル不倫に限らず、慰謝料請求したい側についての一般的な説明、あるいは慰謝料請求されている側についての一般的な説明に関しては、各リンク先をご参照ください。

ダブル不倫の特殊性

不倫慰謝料問題が2件あるだけ?

ダブル不倫の場合であっても、形だけ見ると、不倫慰謝料問題が2つあるだけだとも考えられます。
それはそれで正しいのですが、次の点に気を付けておく必要があります。

2夫婦間の関係があること

生計一共同体に、加害者・被害者双方がいます。

夫婦は本来生計を一つにする(=収支共同の)共同体ですが、その中に加害者個人と被害者個人との双方が存在しています。上記の大阪夫妻側でいえば加害者個人は夫、被害者個人は妻になります。

夫婦単位ではお互いが加害者かつ被害者

そして、大阪夫妻側が損害賠償を請求できる相手も支払うべき相手も、夫婦共同体単位でみれば、同じ東京夫妻側になります。
あくまで「夫婦単位で見れば」ということですが、お互いの夫婦が加害者側かつ被害者側ということになります。

双方離婚しない場合

ある意味二度手間かも?

仮に、上記の大阪夫妻・東京夫妻双方ともに離婚しない方向で進めることになったとします。
金銭賠償原則により不法行為(不貞行為)の損害は金銭でカタをつけることになりますが、損害賠償を請求できる人間(被害者個人)と支払うべき人間(加害者個人)が、生計を同じくする共同体の中にいるわけです。そして、そのことは、どちらの夫妻にとっても同じことです。
そうすると、大阪(夫)が東京(夫)に損害賠償を支払い、かつ大阪(妻)が東京(妻)に損害賠償を請求するというのは、ある意味では二度手間なだけともいえなくはありません。

求償請求を視野に入れる必要性

求償請求自体はダブル不倫の場合に限った話ではありませんが、たとえば仮に大阪(夫)が東京(夫)に慰謝料50万円を支払ったとすると、大阪(夫)が東京(妻)に求償請求をする可能性があります。これが認められると、東京(妻)は、大阪(夫)に25万円を支払う必要が出てきます。
さらに東京(妻)が大阪(妻)に慰謝料50万円を支払ったとすると、求償請求が認められれば、大阪(夫)は、東京(妻)に25万円を支払う必要が出てくることになります。
上記の場合、夫婦単位でみれば、相手夫婦に50万円を請求できる権利と50万円を支払う義務の両方がある(大阪夫妻にとっても東京夫妻にとっても)、という状況になっています。

配偶者も訴訟に関与せざるを得ない可能性大

被害者である大阪(妻)の心情としては、加害者に対して不倫(不貞)慰謝料を請求したい、払ってこないなら裁判を提起したいと思うことも当然でしょう。
その場合、訴訟で慰謝料を請求された東京(妻)としては、大阪(夫)に訴訟告知をする可能性があります。 また、訴訟を提起されたとなれば、「自分の配偶者だけが請求されるのはおかしい」と、東京(夫)の側も大阪(夫)に対する訴訟を提起してくる可能性が高いです(大阪(妻)を例にあげましたが、被害者である東京(夫)が大阪(夫)に対して訴訟を提起する場合も同様です)。
どちらにせよ、被害者としては、自分が慰謝料請求の裁判を起こして終わりというわけではなく、婚姻を継続していく配偶者も訴訟に関与させられる可能性が高いことを念頭に置いておく必要があります(ちなみに、訴訟告知を受けて放置するのは勝手ですが、その訴訟の結果について後から文句はいえなくなります)。

四者間ゼロ和解の可能性

以上を踏まえて、早期解決のため四者間でゼロ和解をするという方向もありえます。どういうことかというと、「大阪(妻)と東京(夫)のどちらの損害賠償請求権もゼロ円とするということを双方夫婦間で確認し、どちらも支払いをしない形で示談してしまう」ということです。
なお、ゼロ和解に限った話ではありませんが、「今後は会わない」などという約束をつけることもあります。

留意点

もっとも、そのような形で四者間での話が実際にまとまるかどうかは全く別問題です。上記では双方の慰謝料額を50万円と単純化していますが、大阪(夫)と東京(妻)のどちらが関係継続に主導的であったのか等により支払うべき慰謝料額がそれぞれで異なる(=求償額も変わってくる)ことも十分に考えられます。さらに大阪(夫)と東京(妻)の資力(=損害賠償の回収可能性)の違い等もあるでしょうから、誰かがゼロ和解に合意をしてこない可能性も十分考えられます(「そんな和解をしてたまるか」というような感情的な面はさておくとしても)。
もしゼロ和解の方向で終わらせたいのなら、それによるメリット・デメリットを十分に理解したうえで、全員を説得していくことが必要です。

離婚の方向性が違う可能性

損害額が大きく異なるかも

双方離婚しないという場合のほかに、双方とも離婚する、あるいは一方のみ離婚する、という可能性があります。ここで、そもそも不倫(不貞)慰謝料の額は、その行為によって離婚するに至ったかどうかでかなり変わってくることに注意が必要です。
例えば大阪夫妻は離婚、東京夫妻は婚姻継続を選択するという場合でいえば、慰謝料の額は、「大阪(妻)が東京(妻)に請求できる額」>「東京(夫)が大阪(夫)に請求できる額」となる可能性があります。そうすると、例えば東京(夫)は大阪(夫)に対し50万円の慰謝料が認められたとしても、逆に東京(妻)は大阪(妻)に対して200万円の慰謝料支払い義務を認められてしまった、ということになる可能性があります。

離婚すれば他人

ここで、仮に東京夫妻が離婚を選択した場合であれば、東京(夫)としては、「離婚することになった以上、東京(妻)が個人的にしでかした件の慰謝料支払い義務など知ったことではない」と言いたくなって当然でしょうし、現実にもそういう解決で終わりです。
その後は、大阪(妻)と東京(妻)との関係では、前者が後者から現実に慰謝料を回収できるのかという問題が残ってくるだけの話です。

婚姻継続の場合は?

しかし、婚姻継続を選択した場合には、200万円の支払義務を無視して終わりとは言いきれない面があります。理屈上は、このような妻の債務は妻個人のものであって夫が負担すべき謂れなどありませんが、法律を離れた現実問題としては、夫の資産から支払ってあげないといけないような場合も出てきうるでしょう。そのことは、たとえば東京(妻)が長年専業主婦をしておりめぼしい財産も今後働けるめどもなく、夫の収入からしか慰謝料を払えないというような場合を考えれば、想像がつくと思います。
夫婦という生計一の共同体を維持する方向を選ぶ以上は、そうなる可能性を織り込んでおくべきだということになります。

まとめ

ダブル不倫の場合、同じ夫婦の中に加害者と被害者が存在し、かつそのような夫婦が2組あることになります。
離婚するかどうかが不倫慰謝料額に大きく影響しますので、あなた側と相手方側がそれぞれどちらの方向を選ぶのかによって、今後の見通しが大きく変わってきます。また、求償分の回収可能性にも影響が出てくることが考えられます。
自分が被害者だからといって深く考えずに配偶者の不貞相手に請求していくと、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。逆にこちらが不倫(不貞)慰謝料を請求されている側であっても、ダブル不倫であることをうまく利用して請求額からの減額につなげていくことも考えられます。
当事者間で迂闊に合意をする前に、経験豊富な弁護士に相談しておくことをおすすめします。