夫婦共同で築き上げた財産を清算するための制度が財産分与であることは、リンク先のページでも説明したところです。

ところで、細かく言うと、財産分与の中には扶養的財産分与と呼ばれるものがあります。これはその名の通り、築き上げた財産の清算ではなく、離婚後の扶養として認められるものです。もっとも、扶養的財産分与は常に認められるものではありません。少なくとも、夫婦共同財産を精算しても十分な財産を得られない場合であることが必要です。

扶養的財産分与とは?

離婚後の生計維持のため、財産を分与することです。

離婚すると、夫婦間で扶養すべき義務はなくなります(なお、離婚しても親子の関係に変わりはありませんので、子どもに対する扶養義務はそのまま残ります)。

その理屈からいえば、離婚後にまで一方が他方の面倒をみなければならない理由というのは、本来ありません。

離婚後の扶養がなぜ認められるの?

一つの説明として、「婚姻中の性別役割分担の結果として夫婦間で財産形成能力に差ができたのだから、離婚後の生活保障の形で精算するのが公平だ」というような説明もなされています(要するに、結婚して妻が専業主婦になり稼ぐ力が鈍ったという場合のことです)。しかし、扶養的財産分与が認められる理由についての定説は、実はまだありません。

ちなみに最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与について、夫婦共同の財産の精算とともに「離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とする」という言い回しで、財産分与には扶養的な要素があることを認めています。

扶養的財産分与は、どういう場合に認められるの?

共同財産の精算や慰謝料だけでは十分な財産を得られないこと

夫婦共同で築き上げた財産の清算や慰謝料だけでは十分な財産を得られない場合にはじめて、扶養的財産分与が認められる可能性が出てきます。それらで十分な財産を得られるのであれば、扶養の必要性がないからです。

支払い側に扶養能力があること

支払い側に相手方を扶養する能力がなければ、扶養的財産分与も認められません。婚姻中の夫婦には、自分と同じ生活水準を相手方にも提供する義務があります(生活保持義務。婚姻費用の分担はその表れです。)が、離婚後にはそのような義務はなくなるからです。

扶養的財産分与は、どういうものがどの程度認められるの?

原則として、生活安定までのごく一時的なものです。

裁判例で認められているのは、妻が離婚後に安定した収入を得るまでの一時的な補助という程度のものです。ごく最近の裁判例でも、「扶養的財産分与は、離婚後の一方配偶者の生活を保障するために、一時的に他方配偶者がこれを援助する趣旨でなされるものであるから、財産的分与がなされる期間はそれ程長期に及ばないのが通常である」と述べられています(東京地裁平成27年1月16日判決)。

いくら再婚まであるいは死ぬまで扶養してほしいといっても、そのようなものが認められる可能性は極めて低いです(下記ケースはごく例外的なものです)。

比較的大きな扶養的財産分与が認められた裁判例

それでも、比較的大きなものが認められた裁判例が全くないわけではありません。

妻の死亡or再婚まで月額1万5千円を認めた裁判例

夫が他の女性と不貞していると考えても無理はない事情があったというケースです。

裁判所の判断としては、夫は、妻の死亡または再婚に至るまで、生活費の全部或いは一部を支払うべきである。そして双方の生活程度を考慮すれば、離婚後の生活費の補助として夫が毎月末日に支払うべき金額は1万5千円が相当である、というものでした(新潟地裁長岡支部昭和43年7月19日判決)。

妻の死亡まで月額2万円を認めた裁判例

妻の精神病を理由に夫が離婚裁判を提起したケースです。
裁判所の判断としては、妻は自活能力がなく今後も精神病の治療を継続しなければならないのに対し、夫は貸家業を営み相当の資産を有していることとして、離婚後の治療費及び生活費相当額として妻死亡まで月額2万円を認める、というものでした(札幌地裁昭和44年7月14日判決)。

まとめ

精算すべき夫婦共同財産がなく慰謝料などの支払いも十分受けられない場合には、扶養的財産分与が認められる可能性があります。「夫婦共同で築き上げた財産なんて何もない」というような場合であっても、扶養的財産分与を忘れずに請求しておくべきです。
もっとも、離婚すれば他人というのが大原則です。審判で扶養的財産分与が認められる場合であっても、低額が短期間認められるにすぎない可能性は高いです。

もっとも重要なのは、離婚後に自活できるよう努力することです。お住まいの自治体のホームページなどもチェックして、離婚後に受けられる手当や支援についても調べてみましょう。なお、離婚後にもらえる手当についてはこちらのコラムもご参照ください。