はじめに

離婚には、その手続きによって協議離婚・調停離婚・裁判離婚がありますが、最も多いのは、夫婦で話し合って離婚する、協議離婚です。
夫婦間で協議する際にも弁護士を付けるほうがいいの?という疑問をよく耳にします。弁護士というと、調停や裁判になった時点でつけるもの、というイメージもあるようです。また、離婚の話をするのにわざわざお金を払って弁護士を付ける必要はないのでは?という意見もあります。
確かに、全くもめずに妥当な解決にいたることができるのであれば、ご本人どうしで解決するのが一番です。しかし、実際はなかなかスムーズにはいかないのが現実のようです。ご本人同士の協議となると、情報の偏りや力関係によって、最終的に非常に偏りのある合意をしてしまうことも珍しくありません。また、相手から「弁護士に相談したら〇〇と言われたので、これが正しいはずだ」などと言われると、反論が難しかったりするようです。
したがって、可能な限り協議段階から弁護士を付けることをお勧めします。
なお、弁護士を付けるといっても、本人に代わって離婚協議の前面に出て交渉をするのか、裏方としてサポートをもらうのか、2つの方法がありえます。

弁護士を前面に立てる場合

専門家による交渉

力関係の不平等の解消

夫婦の双方が離婚に合意しつつ、他の条件について話し合う場合、こちらが口下手で自分の言い分や気持ちをうまく伝えられないという方も多くいらっしゃいます。離婚協議はあくまで夫婦間での話し合いですので、それまでの夫婦の力関係の延長でなされてしまいます。
また、交渉ごとで相手方が自らの有利になるような条件を色々出してくるのはよくあることですが、特に離婚問題では、相手方が相場からみて不相当な条件を出してくることもしばしばあります。
このような場合、相手方とやり合うことに疲れてしまい、意に沿わない内容や不利な条件で話をまとめてしまうこともあるようです。しかし、一度合意してしまうと、後で取り返しがつかないことになる可能性があります。離婚協議書の内容を後から修正したいというご相談をいただくこともありますが、 一度合意した内容は原則として有効ですので、覆すのは非常に難しいことがほとんどです。

相場を踏まえた経験・テクニック

また、離婚事件の場合は、離婚の可否に加え、財産分与や住宅ローン問題、養育費や慰謝料など複数の問題を同時に進めていくので、有利に協議を進めるためには、経験やテクニックが必要な面もあります。弁護士は調停、審判や訴訟となった場合の相場についても熟知していますので、それを踏まえた交渉を行うことが可能です。
不慣れな交渉で精神をすり減らした上、不利な条件で合意してしまうというリスクを避けるために、依頼のメリットがあるかどうかの確認も含め、弁護士に相談することをお勧めします。

相手方からの連絡の遮断

相手方が暴言を吐いてくる、理性的な話し合いができないといった場合もよくあります。この場合、夫婦間だけで進めていても埒が明かずストレスが溜まるだけですので、弁護士をつけて交渉を仕切り直す方がよいでしょう。
弁護士が依頼を受けると、受任通知(=依頼を受けたという通知)を適切なタイミングで相手方に送付し、ご本人に連絡をしないように求めます。
これによって相手方からの連絡を遮断し、弁護士があなたに代わって話し合いをしていくことになります。仮に相手方との理性的な話し合いができない場合は、場合によっては警察へも相談しながら、調停や離婚訴訟を視野に入れて進めていくことになります。

本気度を示すことができます。

離婚の話し合いをしようとしても、相手方があなたの意思を本気と捉えず、適当にあしらわれることもよくあります。
弁護士を付けることで、離婚したい/したくないというあなたの意思の本気度を示すことができます。

裏方のサポートに回ることも

相手方を刺激したくない・・

例えば、離婚協議において、相手方がそれなりに合理的と思われる額の財産分与に応じる意向を既に示している場合があります。このとき、あえて弁護士を前面に立ててしまうと、相手方を刺激して話がこじれてしまうこともありえます。
このような場合、弁護士は、当面は受任通知を送付せずに、ご本人の裏方のサポートに徹するということがあります。相手方からの要求にどのように返答し、逆にどのように要求をしていくべきか、調停や審判となった場合の相場も踏まえながら、陰からサポートしていくことになります。
もちろん場合によっては、途中で双方の話がこじれて進まなくなってしまうこともあります。そのような場合は、弁護士が前面に出て協議を開始します。弁護士としても事案の状況を把握していますので、スムーズに交渉を開始することができるのです。

まとめ

当人同士で離婚協議がまとまれば一番ですが、離婚にいたるまでに、感情のもつれなどが生じている相手とお金について話し合うのは、精神的な負担が大きく、話し合いが進まないことも多々あります。また、合意内容が相場に照らして公平かつ妥当だという保証はありません。
協議段階から弁護士を付けることにより、調停・裁判の可能性まで見通した上で、可能な限り有利に進められるように交渉していくことが可能になりますし、相手方と直接対応したくないような場合でも交渉を進めていくことができます。仮に弁護士を付けることで相手方を刺激することが心配な場合は、弁護士を前面に出さないで交渉していくことも可能です。
不利な条件であっても一旦合意してしまうと後でひっくり返すのは極めて難しくなりますので、合意する前に弁護士に相談することをお勧めします。