熟年離婚
目次
熟年離婚
熟年夫婦の離婚だからといって、法律上何か特別に扱われるというわけではありません。
しかし、若年世代の場合と比較して、特に注意すべき点があります。
また、離婚問題と同時に相続問題をも考慮する必要がある場合があります。
離婚後の生活の見通しについて
特に現在働いていない側についてですが、一般的にいえば、若年世代と比べると、離婚後に再度働くことが難しいことも見受けられます。
年金があるにしてもそれだけで生活ができるのかなど、離婚後の経済的な生活の見通しをきちんとつけておく必要が、より一層高くなります。
離婚原因について
熟年離婚の場合も、一方配偶者が離婚を拒む場合に裁判離婚を認めてもらうためには、離婚原因が必要です。
裁判において離婚原因が認められそうかどうかによって対応を考える必要があることも、変わりはありません。
離婚原因の一般的な解説はこちら「離婚原因」をご覧ください。
財産分与について
熟年離婚の場合、一般的には婚姻期間(同居期間)が長いことから、精算すべき財産が様々存在していることが多いでしょう。
また、離婚後に働くことが難しい場合、財産分与で得られる財産を生活の糧にする必要が高くなることも多いです。
そのため、精算すべき財産として何があるのかを可能な限り調査しておくことが、より重要となります。
財産分与の一般的な解説はこちら「離婚原因」をご覧ください。
年金分割について
婚姻期間中に厚生年金保険料を納めた実績を夫婦で分割することにより、分割後の実績に基づいて計算された年金がもらえるようになる(分割後の実績分だけ、自分が厚生年金を支払ったものとして扱ってもらえる)、という制度です。
ちなみに、国民年金や企業独自の年金はこの制度の対象外です。
しばしば誤解されますが、配偶者がもらっている厚生年金をそのまま分けてもらえる制度ではありません。
熟年離婚の場合、一方あるいは双方が長期にわたって会社で勤務を続けてきたこともしばしば見受けられますので、若年世代の場合と比べるとより重要なものとなります。
協議がまとまらない場合、調停や審判の手続きを取ることになります。
この場合、分割割合はふつう2分の1とされます。
相続問題について
離婚により、配偶者としての地位を失うことになります。
したがって、離婚後に元配偶者が死亡してもご自身は相続人にはなりませんし、離婚後にご自身が死亡しても元配偶者は相続人にはなりません。
なお、離婚しても子どもが相続人となることに変わりはありません。
相続に関しては、離婚後に再婚を考える場合に特に注意が必要となります(後述)。
再婚と相続問題
再婚すると、その相手が配偶者として相続人となります。
もっとも、連れ子が自動的に再婚相手の相続人になるわけではありませんので、そうしたいのであれば両者間での養子縁組が必要です。
熟年世代の場合、ある程度の財産をお築きのことも多いかと思われます。
そのため、ご家族が、相続での取り分が減ることを心配して再婚に反対することもあるようです(表面上の反対理由は様々でしょうが)。
ご家族の心情にも配慮しておかないと、再婚後にご自身の相続が発生したとき、再婚相手と自分の子どもが激しくいがみ合うことにもなりかねません。
この場合、ご家族の立場にも配慮した遺言を作成しておくなどの方策が考えられます(詳細は弁護士にご相談ください)。
夫婦財産契約とは何ですか?
例えば、結婚後に得た財産を夫と妻のどちらが所有するのか、管理はどちらが行うのか、仮に離婚する場合財産をどちらがもらうのか、といったことを結婚前にあらかじめ定めておく契約のことです。
契約内容を夫婦以外の者に主張するためには婚姻届を出す前までに登記しておく必要があるうえ、婚姻中に契約内容を変えることができないことから、ほとんど利用されていないのが実情です。
「死後離婚」について
最近になって、死後離婚という言葉を、テレビ、新聞などでちらほら見聞きするようになりました。
法律で「死後離婚」という制度があるわけではありませんが、配偶者親族との法律上の関係を断つということを意味しているようです。
法律的には、まず婚姻により、配偶者の3親等の者と親族関係となります。
配偶者が(離婚することなく)死亡した場合、それらの者との親族関係が自動的になくなるわけではありません。
そうしたいなら、「姻族関係終了届」を出すことにより、法律上の親族関係(姻族関係)を終了させる必要があります。
これにより、それらの者に対する法律上の扶養義務から解放されることになります。
熟年離婚の場合、世間体の問題から配偶者が協議に一切応じず、弁護士を入れないと話が進まないような場合もしばしば見受けられます。