不倫慰謝料を請求されたとき、すべきことは?
目次
はじめに
「不倫慰謝料300万円は高いと思うけど、肉体関係を持った証拠も押さえられているようだし、その内容で示談するしかないのかな・・」
「たった一晩だけのことと相手方も知っているはずなのに、こんなに請求されるなんてあり得ない。そのままにしておけば、相手方もそれ以上のことはやってこないだろう・・」
「交際相手(=相手方の配偶者)から離婚寸前だと騙されて関係を持っただけ。悪いのは交際相手なのに、どうして自分だけが請求されないといけないの?腹が立つから放っておこう・・」
不倫慰謝料を請求されたときにやってはいけない典型例が、こうした対応です。
以後ここからは、やってはいけないことをまず説明したうえで、すべきことを説明していきます。
(備考)説明の分かりやすさを優先しておりますので、法的議論の正確さを犠牲にしている部分があることはご了承ください。
不倫慰謝料を請求されたとき、やってはいけないことは?
相手方の請求を丸のみしてはダメ!
「不倫を申し訳ないと思うなら,誠意(謝罪意思)があるなら,要求を全て認めろ」
そういう風に言われることもしばしばあります。
しかし、不倫慰謝料として相手方が請求してきている額が相場より高いことは、よくあります。
示談後に「相場より高かったから無しにして欲しい」と言っても、事実上難しいのが現実です。
「自分で約束したのにどういうつもりだ。やっぱり反省してないじゃないか」
そのように相手方に思われてしまうでしょう。
そう思われるのが嫌で、渋々払わざるを得ないことも多々あります。
もし請求額が相場の範囲内だったとしても、落とし穴があることもあります。
「慰謝料は30万円でいい。ただし、もし再度連絡したら違約金500万円を払え」
もしかしたら、慰謝料を払った後で交際相手から連絡があり、対応したら相手方から500万円を請求されてしまった、なんてことにもなりかねません。
あなたの自由な意思で示談に応じたら、あなたは、その示談の内容に拘束されることになります。
相手方の要求を検討もせずそのまま丸のみすることは、避けなければなりません。
「この場さえ切り抜ければ、後で示談内容を争えばいい」
そのように安易に示談すると、痛い目に合います。
(備考2)争う余地が全く無いわけではありません。しかし、基本的に難しいと思っておいてください。
請求をそのまま放置してしまうのもダメ!
不倫を知った相手方は、ただでさえあなたに対して許せないという強い感情を抱いています。
それなのに、不倫慰謝料の請求をそのまま放置してしまったらどうなるでしょうか。
「しらばっくれるつもりか。反省していないのか」
そのように思われて、さらに強硬な態度に出てくるかもしれません。
相手方から訴えられてしまい、話し合いで解決できる可能性を自ら潰してしまうかもしれません。
訴えられて自宅に訴状が届くことで、不倫を家族に知られてしまったりする可能性も否定できません。
不倫慰謝料を請求されたとき,すべきこと
金額のほかにも何を請求されているのかをよく確認しましょう。
そもそも相手方から何を請求されているのでしょうか。
それをよく確認しなければなりません。
どうしても300万円といった金額に目が行ってしまうでしょうが、不倫慰謝料の金額のほかにも、いろいろな要求が含まれていることもしばしばです。
「配偶者(=あなたの交際相手)に今後一切接触するな。もし接触したら違約金500円を払え」
「会社を辞めろ、異動願いを出せ」
「配偶者に、この請求の内容を伝えるな」
このように、相手方から何を要求されているのかを、きちんと把握しましょう。
これが交渉のスタートラインになるからです。
「相手方からの通知書なんて見るのも嫌」
その気持ちは重々分かりますが、確認をおろそかにしてはいけません。
お互いがどういう状況にあるかを把握しましょう。
不倫慰謝料以外のものを実は主たる目的として、相手方があなたに請求してきている可能性もあります。
相手方の意図を把握するためにも、あなたと相手方とのお互いがどういう状況にあるのかを押さえておく必要があります。
相手方は離婚するのか?
相手が離婚してしまうと、裁判で認められる金額のレンジ(いわゆる相場)が上がってしまいます。
交際相手とコミュニケーションが取れるなら、本当に離婚方向なのかどうかを確認しておくべきです。
(備考3)その接触が露見すると相手方の心情を害することがあるかもしれませんが、それを上回るメリットが得られるかもしれません。
接触禁止が相手方の主たる目的のようなら、本当は離婚しないのかもしれません。
不貞のどんな証拠を持っているのか?
裁判では、不倫慰謝料を請求する相手側が、不貞行為(肉体関係)の事実を証明しないといけません。
極論すれば,不貞行為が事実であっても,相手方がその証明に失敗すれば,あなたに対する慰謝料は最終的に認められないという結果にもなりえます。
相手方に不貞のどういう証拠を握られているのか?
それが分かれば、裁判になった場合の有利・不利の見当をつけやすくなります。
ある程度の情報を交際相手が持っている可能性があるので、コミュニケーションが取れるのであれば、そのことも確認しておくべきです。
(備考4)もっとも、相手方が本当はどういう証拠を握っているかというのは、正確なところは分からないことも多いです。肉体関係を否定した後で相手方から証拠を突き付けられる事態もありうるので、方向性は慎重に検討すべきです。
きちんと交渉しましょう。
不倫慰謝料を請求されたとき、丸呑みしたり無視したりせずにきちんと交渉することは重要です。
とはいうものの、
「相手方が話を聞いてくれない・・」
「相手方から昼夜を問わず連絡が入り、精神的に追い込まれている・・」
「家族や職場に連絡があり、社会生活に支障が出ている・・」
このように、相手方と交渉しようにも話にならないということも、実際上は多いです。
解決に向けて話が進むどころか、かえって事態が更に悪化する可能性もあります。
早期に弁護士に依頼して進めたほうが良いでしょう。
示談するなら示談書を作りましょう。
示談書を作らないのは危険です。
不倫慰謝料について話し合いを進めて行って、この内容で示談しようという話になったとします。
示談書を作らなくても、示談自体は有効です。
しかし、示談書を作らず口頭だけで済ませるのはお勧めできません。
細かい取り決めができなかったり、示談内容につき後で争いが出てしまったりすることがあるからです。
清算条項(※)を入れた示談書を作ることで、あなたが相手方に対して果たすべき約束の内容を、固定化・明確化することができます。
(※)「この書面で明確に約束していること以外には、すべきことは一切ない」という意味の条項です。
示談書は相手方の利益のためだけではありません。
あなたのすべきことを限定・明確化することで、あなたを守るものでもあります。
「示談書を作ると誰かに見られるかもしれない」
そのように不安に思うかもしれませんが、示談書を作らずに後から紛争になってしまうリスクのほうを心配すべきです。
示談書一部を受け取って保管します。
示談書を相手方だけが持っておく、ということがあります。
これでは、あなたの身を守るために示談書を役立てることができません。
示談書=契約書なのですから、相手方とあなたの分と合わせて同じものを二部作って、一部は自分に渡してもらいましょう。
示談書に基づく約束を果たしましょう。
あなたが示談書に基づく約束を果たさないとします。
裁判で示談書が証拠として提出されて、あなたに対する支払いを命じる判決が出てしまう可能性があります。
示談書を公正証書で作った場合は、裁判を経ずに、いきなり給与差押えなどの強制執行を受ける可能性もあります。
あなたが自由な意思で示談した以上、示談内容は守らなければなりません。
訴状が届いたら放置厳禁です。
訴状が届いたのに放置すると、相手方(原告)の言い分通りの判決が出されてしまう可能性があります。
訴状を絶対に放置してはいけません。
あなた自身で訴訟に対応していくことは難しいですので、弁護士に依頼して進めていくべきです。
「訴訟を取り下げるように説得するから気にしなくても良い、放っておいても良い」
交際相手がそんな風に言うかもしれません。
しかし、本当に説得してくれるのかどうか、してくれたとして相手方が翻意してくれるかは、全く分かりません。
もし判決が確定してしまったら、困るのはあなた自身です。交際相手ではありません。
そのような交際相手の言葉を鵜呑みにするのではなく、きちんと弁護士に依頼して訴訟に対応すべきです。
そのうえで(それと平行して)交際相手が原告を説得してくれることに期待を寄せておけば良いのです。
仮に交際相手からの説得が失敗したとしても、訴訟の中で戦っていくことができます。
まとめ
不倫慰謝料を請求されたとき、相手方の要求を検討もせず言われるまま丸のみしたり、逆に無視したりしてはいけません。
相手方の要求内容が何なのかを確認しましょう。
そして、相手方とあなたの双方の状況を踏まえたうえで、相手方の主たる関心事がどこにあるのか、その意図を推測します。
それをもとに、あなたに有利な結果となるように交渉を進めていきます。
交渉がまとまったらきちんと示談書の形にし、清算条項を入れて、相手方に果たすべき約束の内容を固定化・明確化します。
もっとも現実には、あなたがいくら相手方と交渉しようとしても、全く話にならなかったり取り合ってくれなかったりする場合も多々あります。
「訴えられるまでは何とか自分で交渉してみよう」
そう思うかもしれませんが、現実的にはなかなか難しいことが多いです。
正当な言い分であっても、あなた自身の口から言うと相手方の感情を逆撫ですることも多いです。
逆に「不倫をした自分が悪いのだから・・」という負い目が出てきて、言い分を言えなくなってしまうこともあります。
ですから、相手方から不倫慰謝料請求を受けた段階で、すぐ弁護士に依頼する方が無難です。
当事務所では不倫慰謝料問題を多数手がけてきております。
相手方から請求を受けたら、まずは今後どう対応すべきかご相談いただくことをお勧めします。