不倫慰謝料の請求額、相場と増額のテクニック
目次
はじめに
あなたの配偶者が他の異性と肉体関係を持った(=不貞行為があった)場合、その異性(=不貞相手)と配偶者に対して,不倫慰謝料を請求することができます。
不倫慰謝料と合わせて、たとえば「今後お互いに会わないことを約束しろ」という請求をすることもあります。
不貞行為の証拠があったとしても、請求した相手方がすんなりと慰謝料を支払うとは限りません。
無視を決め込むことも少なくありません。
口先では謝罪の言葉を述べるものの、結局はお金がなく払えないの一点張り、ということもあります。
「相手方から実際にどこまで回収できるのか」を考えて対応しなければなりませんが、他方で「そのことはさておき、私の痛みを分からせるため、できるだけの請求はやっておきたい」ということもあるでしょう。
そのためには、不倫慰謝料の相場と増額のテクニックを知っておかなければなりません。
なお、説明の単純化のため、以下の解説は「あなたが不貞相手に不倫慰謝料を請求しようとしている」という場面を想定してお読みください。配偶者に対しても不倫慰謝料請求は可能ですが、その場合は離婚問題に繋がる可能性が高く、説明が複雑になってしまうからです。
(備考)説明の分かりやすさを優先しておりますので、法的議論の正確さを犠牲にしている部分があることはご了承ください。
不倫慰謝料の請求額
金額は自由に決めて構いませんが・・
相手方に不倫慰謝料を請求するとき、具体的にいくらを請求するのか。
あなたが自由に決めて構いません。
「相場を参考にしないといけない」とか「いくらまででないとダメ」という金額の制限はありません。
相手方がどう出てくるかを考えて決める必要があります。
とはいえ、「その金額を請求したら、相手方はどう対応してくるだろうか?」を考える必要があります。
もし請求額が1000万円だったらどうでしょうか。
高額を突きつけることで、あなたが本気で怒っていることは相手方に伝わるかもしれません。
しかし、相手方はどう対応してくるでしょうか。
「一回きりなのにこんな法外な金額を払う必要なんてないはずだ」と請求を無視したり,「不当請求を受けて困っている」と弁護士に相談に行ったりするかもしれません。
逆に請求額が50万円だったらどうでしょうか。
さっさと話を纏めたいとあなたが思っているということは相手方に伝わるかもしれません。
しかし、相手方は「この程度しか請求してきていないということは、本当は何も証拠がないのだろう」などと思って、請求を無視してくるかもしれません。
最終決着をどのようにしたいのか、を考えて決定します。
不倫慰謝料をそもそも請求するかしないか。
仮に請求するとして、不貞相手と配偶者のどちらに対していくらを請求するか。
それは、あなたが自由に決めてよいのです。
あなたとしては今回の不倫問題をどのように最終決着させたいのかを考えて、決める必要があります。
不貞行為で受けた精神的苦痛の大きさを相手方に分からせたい、というのを優先するとします。
それなら、慰謝料額をできるだけ大きくすることが目標になってくるでしょう。
配偶者と相手方との関係を断たせたい、というのを優先するのなら、接触しない約束に応じさせることが目標になります。
もちろん、できるだけ大きな慰謝料額を獲得したうえで、接触しない約束にも応じさせることができれば、それが一番です。
しかし、相手方は請求に対抗してくるのですから、簡単に全てを得ることはできず、優先順位を付ける必要があります。
そういった最終決着も見据えたうえで、請求額を決定すべきです。
不倫慰謝料の相場はどれくらい?
数十万円~300万円程度です。
裁判所で認められる慰謝料の額は諸事情によりかわってきますが,その中で重要な事情は次のとおりです。
①不貞行為によってあなたと配偶者が離婚するに至ったのか否か
②不貞行為の内容・回数
③不貞行為が始まった経緯
④不貞行為をした際の夫婦関係はどうであったのか
これ以外の様々な事情もあわせて総合的に考慮されますので,一言で言いきれるものではありません。それでもあえて相場を示すとするなら,このようになります。
①あなたが離婚する場合 200~300万円程度
②あなたが別居した場合 100~200万円程度
③あなたが離婚しない場合 数十万~100万円程度
この幅の中で、不貞行為の内容・回数等の事情によって増減される、というようなイメージを持って頂くとよいでしょう。
婚姻関係が完全に破綻した後の不貞行為では、慰謝料は認められません。
「不貞行為は事実だが、それ以前に配偶者とは長期間別居状態にあり、夫婦関係の実態も既になくなっていた」
という場合があります。
このような場合、慰謝料は認められないと裁判所に判断されてしまう可能性があります。
既に夫婦関係が壊れている以上、その後に不貞行為があってもあなたに精神的損害は発生しない、という理屈になってしまうのです。
相手方が、あなたの配偶者の説明を信じただけではダメ!
「ずっと前から(あなたとは)破綻していて・・」
「離婚協議を進めていて,近々籍を抜けられる」
そのような説明を配偶者がして、異性と肉体関係を持つようになった、という場合がしばしば見受けられます。
仮にあなたの配偶者がそのような説明をしていた場合でも、「客観的事実としては,破綻の事実はなかった」と裁判所に判断されれば、不貞相手に対する慰謝料請求は認められます。
配偶者から既に慰謝料を受け取っていたら、減額されてしまいます。
法律的には、不貞行為の慰謝料は、配偶者とその不貞相手とが共同で負担すべきものだとされています。
二人の行為で,あなたに精神的苦痛を与えているからです。
あなたが既に配偶者から慰謝料を一部でも受け取っていると、その分だけ不貞相手から回収できる金額は小さくなります。
ちなみに減額されるのは、あなたが実際に受け取った分だけです。
配偶者が200万円支払うとあなたに約束した場合であっても、実際にはまだ一円も受け取っていないというのであれば、減額されません。
不倫慰謝料増額のテクニック
あなたとしては、不倫慰謝料が増額されるならもちろんそれに越したことはないでしょう。
もっとも、最終決着をどのようにつけるべきかをきちんと考えておかなければなりません。
増額を優先するのか、あるいはそれ以外のことを優先するのか(ex.接触禁止文言を入れる等)。
その点についての態度決定を、いずれは迫られることになるからです。
強気で押すだけではダメです。
強気で交渉を進めていけば相手方が高額の請求に応じてくるのでしょうか。
決してそういうことはありません。
むしろあなたの対応次第では、相手方があなたと直接話したくないと考えて、弁護士を間に入れてくる可能性があります。
そうなると逆に、あなたも弁護士を入れて対応していかないと、話が進まなくなりかねません。
裁判手続きの利用
交渉段階でのプレッシャー
「この請求に応じないのなら、裁判する」というプレッシャーを交渉段階で掛けることが最も効果的です。
仮に訴訟が提起されると、相手方としては、平日昼間に裁判所に赴いたり、それが嫌なら自腹を切って弁護士を依頼したりしなければならなくなるからです。
相手方によっては、裁判になると誰かに知られるのではないかというような点を恐れるかもしれません。
相手方が訴訟をどうしても嫌がるのであれば、裁判所の相場を超えた金額を払うと約束する可能性も出てきます。
訴訟を実際に提起すると、相手方が弁護士を依頼する可能性も高まります。
そうでなくても、訴えるにも法的知識が必須ですので、あなた自身での対応はかなり難しいです。
訴訟提起前にあなたも弁護士をつける必要があるでしょう。
尋問のプレッシャー
訴訟提起後も和解がまとまらなければ、いずれは尋問手続きが実施されることになります。
尋問手続きでは、あなたと相手方が裁判所の証言台に立ち、色々な質問を受けることになります。
「この条件を呑まないなら和解には応じられない。尋問では不貞行為の詳細を話してもらうことになる」
といったように、プレッシャーを掛けることも考えられます。
ほとんどの相手方は尋問を嫌がりますので、和解に応じてくる可能性が高まります。
もっとも、逆にあなたとしてもそのプレッシャーを受けることになります。
不貞行為前に破綻していたという反論は相手方からしばしばなされますので、「夫婦関係が不貞行為の前に破綻していたこと」について、あなたが尋問を受ける可能性は高くなります。
慰謝料額は最終的には裁判所が決めるものです。
慰謝料額についての話し合いがまとまらないと、最終的には裁判所が金額を決めることになります。
先に述べたような相場が一応あるとはいえ、裁判所が個々のケースに即して判断するのです。
実際に認められる慰謝料額を増額するためには、あなたに有利な事情を主張し証明していかなければなりません。
そのためには、浮気の証拠をきちんと取っておくことが重要となります。
裁判になってから弁護士を入れるよりも・・
裁判になったとしても、あなたが弁護士に依頼している場合には、尋問手続き以外はほぼ弁護士限りで対応できます。
裁判になってから弁護士に依頼するくらいなら、相手方に請求をする段階で依頼しておいたほうが良いでしょう。
交渉も弁護士に行わせることができますし、あなた自身が手間をかけて訴訟提起する必要もないからです。
まとめ
請求金額をいくらにするかは、あなたが自由に決めることができます。
不倫慰謝料問題をどのように最終決着させるかをよく考えて、請求額を決めます。
相手方はその請求額を見て、今後の対応をどうすべきかを考えてくるからです。
一般的には、増額のためには訴訟提起をちらつかせることが最も有効です。
裁判所での一応の相場というものはありますが、相手方がどうしても訴訟を嫌がる場合には、訴訟を避けるために高額の支払いに応じてくる可能性もあります。
交渉段階から弁護士をつけておくと、訴訟提起の可能性を匂わせながらの交渉が可能となりますので、有利になることが多いです。
当事務所では不倫慰謝料問題を多数手がけてきております。相手方に請求を始める前に,まずは今後どう対応すべきかご相談いただくことをお勧めします。