離婚原因
総論
離婚について夫婦間で話し合い(=離婚協議)、そして家庭裁判所で話し合った(=離婚調停)としても、離婚話がまとまらないこともあります。このように、相手方が離婚を拒否しているがそれでも離婚をしたいという場合は、離婚訴訟を提起して裁判官に離婚を認めてもらうしかありません。
但し、訴訟で離婚を認めてもらうためには、以下にあげる「離婚原因」が必要です。
これを相手方の立場からいえば、離婚原因がなければ、意思に反して離婚をさせられることはない(=離婚を拒否し続ければよい)ということになります。
そこで離婚したい側としては、長期間の別居が離婚原因となることを踏まえて、別居に踏み切ることが選択肢の一つとなってきます。
➀不貞行為
不貞行為というのは、配偶者以外の異性と肉体関係を持つことです。
実際上、不貞行為をした者の有責性が重いと捉えられる傾向にあります。
不貞相手との愛情の有無は関係ありませんし、1回限りの関係でもこれにあたります。
夫が女性を強姦した場合は、夫が不貞行為をしたことになります。
妻が強姦被害を受けた場合、妻が不貞行為をしたことにはなりません。
妻が自由意思で肉体関係を持ったわけではないからです。
異性と肉体関係はないが度を越した親密な交際をしている場合、不貞行為には当たりませんが、④「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたる可能性があります。
同性との肉体関係も不貞行為には当たりませんが、④「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたる可能性があります。
不貞行為があっても、それを宥恕した(=許した)といえる場合には、離婚原因にあたらないと判断されることもあります。
②悪意の遺棄
夫婦には同居・協力・扶助義務がありますが、正当な理由がないのに、この義務を果たさないことをいいます。
もっとも、破綻後の別居は、破綻の結果であって原因ではありませんので、悪意の遺棄にはあたりません。
悪意の遺棄とまではいえないが④「婚姻を継続しがたい重大な事由」がある、とされる場合もあります。
➂3年以上の生死不明
生死が確認できない状態が3年以上続いていることをいいます。
生きていることは分かっているが単にどこに居るか分からないだけの場合は、これにあたりません。
なお法律上は、仮に①~➂の事情がある場合であっても、裁判所の裁量により離婚を認めないことができる、と定められています(民法770条2項)。なお①~➂にあたらない場合であっても、④にあたるとされることがあります。
(参考)かつては「強度の精神病」という規定がありましたが、批判があり、2026年4月施行の民法改正で削除されています。
④婚姻を継続しがたい重大な事由
婚姻関係が破綻しており、共同生活の回復の見込みがないことをいいます。
例えば、暴力、不貞行為そのものではないが不適切な関係(異性との親密な交際、同性との性交渉など)、多額の借金、長期別居など様々な事情のほか、配偶者の病気や障害が原因で実質的に婚姻関係が失われているような場合も、この「婚姻を継続しがたい重大な事由」に含まれ得ると考えられています。
この判断にあたって重要視されているのは、別居期間が相当の長期となっているかどうかです。
大まかな傾向としては3~4年程度の別居で破綻していると考えることが多いようですが、一概にはいえません。
その他よく問題にされる事情としては次のようなものがありますが、これにあてはまるからといって直ちに婚姻破綻が認められる(=裁判離婚が認められる)というものでもありません。
- 暴行・虐待
- 重大な病気・障害
- 勤労意欲の欠如
- 多額の借金
- 性交不能・拒否
- 宗教活動
- 親族との不和 など
裁判所としては、別居期間が相当長期になっているかどうか、上記のような事情があるかどうかなど全ての事柄を総合的に判断して、婚姻関係が破綻しているか否かを、そして最終的に離婚を認めるかどうかを判断します。
なお、性格の不一致もよく問題とされますが、単にそれだけを理由に離婚を認めてもらえることはまずありません。
性格の不一致があることだけではなく、その結果として別居が続いている、暴行・虐待を受けているなど、他の事情が必要とされます。
有責配偶者からの離婚請求
既に婚姻関係が破綻している場合であっても、婚姻破綻に責任のある側の配偶者(=有責配偶者)から離婚訴訟を提起するという場合は、裁判離婚が認められるためのハードルは高くなります。
具体的には、①夫婦の別居が双方の年齢・同居期間と対比して相当長期間となっていること、②夫婦間に未成熟の子が存在しないこと、③離婚によって相手方配偶者が過酷な状態に置かれないこと、の3つの要件を満たさない限り、離婚は認めてもらえません。
そのため離婚を実現するためには、相応の条件を提示することで相手方に合意してもらうことが必要となってくることも多いです。
結論
「離婚問題解決の流れ」でも述べましたが、離婚協議や調停での話し合いの段階から、「仮に裁判となった場合に離婚は認められるのか」について予測しておかなければ、自分が有利な立場にいるのかそうでないのかも分からず、有利な解決を引き出すことができません。
有責配偶者に該当する場合には尚更で、むしろ離婚成立のため譲歩を強いられる可能性もあります。
もし相手方に不貞行為などの離婚原因がないのなら、別居に踏み切って離婚原因を作り出していくことが必要になるかもしれません。
このような判断のためには、離婚原因の有無を検討しておくことが必要です。
(2026年4月施行の民法改正に対応済み ※執筆時点)


