離婚に有利なタイミングや切り出し方は?
はじめに
春先や秋口には離婚のご相談が多くなるように感じています。はっきりとした理由は分かりませんが,「年度替わりを迎えて夫婦関係にケリをつけたくなった。そろそろ離婚を切り出したい」,「子どもの進学を考えると秋口から離婚協議を始めておくのがタイミング的には良いだろう。春までにはケリをつけたいから…」というように考える方が多いのかもしれません。
ご相談者が離婚を考えたきっかけを大きく分けると,①離婚を考えざるを得ない事件が突然勃発した場合と,②特にそういう事情があるわけではないけれど,これ以上結婚生活を続けるのに疲れたという場合があります。それぞれの場合で圧倒的に多いのは①では相手方の不貞で,②ではいわゆる性格の不一致です(ささいなすれ違いでも塵も積もれば・・という感じですね)。
離婚を有利に進めていくためにはどう切り出したらいいか,切り出すタイミングはどうすればいいか,というご質問を頂くことも多いですが,その人の置かれている様々な状況によって異なってきます。そのため本当は一言では言いきれませんが,一つのご参考にして頂ければと思います。
離婚を切り出すタイミングはどうすればいい?
離婚を切り出すタイミングにお悩みの方は,相手方と同居している場合が多いと思います。まずは財産や不貞の証拠を集めておきましょう。
切り出す前に,同居しているうちに証拠を集めましょう。
あなたが離婚を切り出すと,相手方は自分の不利になる証拠を隠したり捨てたりする可能性が高くなります。そのため,集められるだけの証拠を集めてから切り出すことが重要です。
相手方に離婚原因がありそうな場合
例えば不貞の場合であればメール,LINEのやりとりや浮気写真などが考えられます。
仮に離婚を切り出す前なら,相手方が「●●さんと肉体関係を持ったのは事実です。深く謝罪します」というようなことを書面にしてくれたり,あるいは相手方がそのように発言した内容を録音できたりするチャンスもありえます。しかし,離婚を切り出した後からでは難しいでしょう。
参照:浮気の証拠の取り方
相手方に離婚原因がなさそうな場合
例えば性格の不一致しかないような場合で,財産分与の問題で離婚がまとまらないこともあります。相手方がどこにどのような財産を持っているのか分からないとどうしようもありません。離婚を切り出して相手方が警戒する前に調べておく必要があります。
①不貞が判明した場合
離婚を切り出すタイミングは,証拠確保次第というのが望ましいです。
不貞の証拠が確保できたら切り出しましょう。
離婚の意思が完全に固まっているのなら,相手方の不貞(=第三者との性交渉)が窺える証拠を確保できた段階で,早めに切り出した方がスムーズに解決できることが多いようです。
あなたに問い詰められて不貞を認めた相手方はふつう引け目を感じていますし,あなたとしても心理的に有利な状態で離婚の話をすることができるため,離婚を切り出すのに良いタイミングなのです。
その後ズルズルと時間が過ぎてしまってからその不貞行為を理由に離婚しようとすると,相手方から「あの件は謝ってお前も許してくれたじゃないか。●年も経っているのに何をいまさら・・」というような反論が出てくることがあります。また,不貞発覚直後とは違って,相手方が心理的に引け目を感じなくなっていることも多いです。そうなると「離婚を切り出すタイミングを完全に逸してしまった・・」ということになりかねません。
「宥恕」って何?
宥恕というのは許すという意味です。相手方の不貞行為は離婚原因になりますが,もしあなたがそれを宥恕したということになってしまうと,「一度許した以上,その不貞行為を理由とする裁判離婚は認められません」と裁判官に言われてしまう可能性があります。例えば,夫の不貞を知った後で,夫と性交渉をして子どもを出産したような場合だと,夫の不貞を「宥恕した」と認められてしまう可能性もありえます。
したがって,離婚意思が固まっているのなら,証拠を集めた上で早めに離婚を切り出したほうがよいといえるでしょう。
②性格の不一致の場合
性格の不一致の場合には,人生の節目ごとに適したタイミングがあります。
子どもができる前
子どもができると,否応なしにそれまでとは全く生活状況が変わってきます。妻のそれまでの収入が見込めなくなって,経済的な面での夫の責任が非常に重くなるということもよくあります。そうなると,夫が離婚したいと思っても妻が抵抗するのは当然ですし,逆に妻が離婚したいと思った場合でも,夫の収入なしには生活できない,かといって子供を預けるところもなく自分では働けない…という状況に陥りかねません。
子どもができる前の段階で性格の不一致を耐え難いと考えているのなら,その段階で離婚を切り出して,離婚後の新生活に向け早期の再出発を図るべきです。
子どもが一人立ちした後
子どもが出ていって相手方と二人で過ごす時間が増えることになりますので,性格の不一致を改めて痛感させられ辛い思いをされることも多いようです。
子どもが社会人として一人立ちすると手が掛からなくなりますし,その養育費を心配する必要もなくなりますので,離婚を切り出すにはいいタイミングです。
相手方(特に夫)の定年退職時
退職金がもらえることがほぼ確実になっており,かつ相手方が退職金に手を付ける前に離婚を切り出していくということです。支給がほぼ確実なら財産分与の対象として考慮できますので,一つの区切りのタイミングではあります。
別居について
自分から離婚を切り出すのはためらわれる,でも一緒にはいたくないということで,別居という行動で示すこともよくあります。もっとも,別居はメリットだけではなくデメリットがありますので,事前によく考えてから踏み切らないと痛い目を見ることもありえます。
離婚を切り出すときの注意点は?
妻から切り出す場合
感情的な物言いは避けましょう。
あくまで一般論ですが,妻が離婚を切り出す場合,夫に対して感情的な言葉を投げつけてしまうことが多いように見受けられます。しかし,(これまた一般論ですが)男性はどちらかというと理論的に物事を考える傾向にありますので,感情的な言葉を投げつけたところであまり意味がありません。それどころか「またいつものヒステリーか…,今はまともに話ができないから落ち着くまで放っておこう」という感じで,離婚を切り出しても真面目に受け取ってもらえないことがあります。
そのような物言いは避けて,あくまで冷静に要求事項を伝え,真剣に離婚や離婚後の生活を考え抜いた結果今こうして切り出しているのだ,ということを態度で表しましょう。そうすれば,夫はあなたが本気であることを理解してくれるはずです。
夫から切り出す場合
妻が感情的になるのは織り込んでおきましょう。
妻自身が離婚を全く考えていなかった場合なら,かなりの感情的反発があるでしょう。あなたはいつも自分勝手だ!などと,ここぞとばかりに罵詈雑言をぶつけられるかもしれません。ここで感情的に対応しても,妻の機嫌を損ねるだけで意味がありません。
離婚後の不安を取り除けるかどうか
別コラムでも述べたように,妻が離婚を拒否するのは,離婚後の生活が不安だからという可能性がかなり高いです(もちろんそれ以外にもプライドの問題などもあるでしょうが)。妻としては,今住んでいる住居を追い出されるのか,離婚後の収入はどうなるのか,子どもの生活費は払ってもらえるのか等々,いろいろな不安を抱えています。
特に性格の不一致があるような場合なら,妻の側からみてもそれなりに苦痛を感じていたという可能性も高いため,離婚後の不安をある程度解消してくれるなら離婚しても良い,という方向に傾きやすいです。
同じ離婚を切り出すにしても,こうした点を事前に詰めておいてからにするほうがタイミングとしては効果的です。
まとめ
離婚を考えたきっかけが何であれ,有利な離婚のためには,離婚を切り出す前に色々な証拠を集めるとともに資産を把握しておきましょう。離婚を切り出すことは証拠集めのタイミングを逸することと同じだ,というくらいに考えておいたほうがよいでしょう。
一般論としては,離婚意思が固まっているのなら,不貞がきっかけの場合には証拠が集まり次第早期に切り出すべきです。また,不貞相手への不倫慰謝料請求も検討すべきです。性格の不一致がきっかけの場合には,子どもの有無など夫婦の状況によって異なりますが,人生の節目ごとに適したタイミングがあります。
もっとも,あなたや相手方の置かれた状況,あなたが何を優先して生きていくのかといった個別の事情によって,切り出し方や切り出すべきタイミングなどもそれぞれ違ってきます。どうすればよいのか迷ったら,まずは専門家に相談することをおすすめします。
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