不倫の慰謝料(請求する側)
目次
不倫の慰謝料(請求する側)
別途、不倫慰謝料問題についての特設サイトもご参照ください。
不倫慰謝料を請求する場合のよくあるご質問も掲載しています。
「配偶者が浮気・不倫していたので、配偶者と不倫相手の両方に慰謝料請求して離婚したい」「離婚はしないまでも、不倫のけじめとして慰謝料を請求したい」…このような場合、まずは経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
不倫が明るみになったとき、不倫相手(不貞相手)の属性・社会的立場等によっては、問題を大ごとにされたくない、できるだけの慰謝料を払うから何とか穏便に…と打診してくることもありえます。
しかし、そういうケースは稀です。
あなた自身で不倫相手と話そうとしてみたとしても、そもそも不倫相手が応答すらしないとか、不倫相手が「あなたの配偶者に騙されていただけだ」などと逆上してくるとか、不倫の事実すら認めてこないとか、全く話にならないこともよくあることです。
逆にそうした不倫相手の態度に、あなたのほうの怒りが爆発してしまい、行き過ぎた行動に出てしまうこともありえます。
また、不倫相手と落ち着いて話ができたとしても、不倫相手から予想外の反論を受けて、あなたの側からうまく反論できず、かえって不利な言質を取られてしまう可能性すらあります。
不倫慰謝料を相手方(不倫相手・配偶者)に請求する前に、まずは弁護士に相談するべきです。
あなたのケースの事情を踏まえたうえで、もし裁判になったらどれくらいの不倫慰謝料が認められるのか、相手方はどういう反論をしてくる可能性があるのか、示談交渉と訴訟とではどちらが有利なのか、といった点を予測しつつ請求していくことが可能となります。
不倫慰謝料を請求しようという方の中には、「弁護士をつけたら裁判になってしまうのではないか。
できれば示談で早期解決したい…」という方もおられます。
しかし弁護士をつけたからと言って、必ず裁判になるわけではありません。
と言うよりもむしろ、示談で解決できるほうが圧倒的に多いです。
不倫相手のほうとしても、訴えられるのはそれだけで非常に大きな精神的負担となりますし、訴訟対応を弁護士に依頼する費用も掛かってきてしまいます(ごく一般の方が自分で訴訟に対応するのはかなりの苦労が伴います。)。
それなら示談に応じたほうがまだマシだ…となることが多いためです。
不倫慰謝料が認められる場合
不倫・浮気といってもその内容は色々とありえますが、典型的には、配偶者と不倫相手とが肉体関係を持った(=不貞行為をした)と認められる場合です。
「肉体関係があったとまでは認められないが、親密な交際をしていたようだ」という場合でも、慰謝料が認められることはあります。
しかし不貞行為がある場合に比べれば、低額に留まる傾向があることは否定できません。
不倫慰謝料が認められない場合
不貞行為より前に既に婚姻が破綻していたという場合があげられます。
不倫相手(不貞相手)が、あなたの配偶者が既婚者だと全く知らず、知らないことに過失もなかったという場合もありえます。
その場合、不貞相手に対する慰謝料請求は認められません。
不貞行為について時効期間が過ぎており、相手方が時効を援用してきた場合も、認められません(後述)。
不倫慰謝料を誰に請求すればいいのでしょうか?
不倫慰謝料を請求する相手方としては、配偶者あるいは不倫相手(不貞相手)のどちらかに対してだけ請求することも、あるいは双方に対して請求することも可能です。
今後の夫婦関係についてのご希望(離婚したいのか修復したいのか)や、双方の資力(請求したい相手に収入や目ぼしい財産があるかどうか)、こちらの配偶者が既婚であったことを不貞相手は知っていたのかといった点を踏まえつつ、不倫慰謝料を実際誰に対して請求するのかを検討していくことになります。
不倫慰謝料を請求する手続きについて
不倫慰謝料を請求する手続きは、一般的には任意交渉(協議)から始まります。
場合によっては調停や訴訟の場で請求していくことになります。
任意交渉がまとまれば、示談書(合意書)を取り交わすことになります。
仮に相手方が支払わない場合の強制執行のことも考えて、公正証書を作成する、即決和解とする、といった形を取る(債務名義化する)こともあります。
任意交渉がまとまらず、そしてあなたが不倫慰謝料請求を諦めるのでなければ、訴訟で決着をつける必要があります。
弁護士をつけていなければ、あなた自身が訴状を作成して裁判所に提出し、以後も自分自身で訴訟を続けていかなければなりません。
自分が言いたいことをそのまま書き連ねればよいというものではありません。
不倫慰謝料は配偶者と不倫相手の両方から取れるのでしょうか?
不倫慰謝料(不貞慰謝料)は、配偶者と不倫相手(不貞相手)が共同で負担すべきものだとされていますので、両方から取ることは可能ということになります。
二人が共同でした不貞行為によってあなたに精神的損害が発生しているからです。
例えば仮に不貞行為によってあなたが受けた精神的損害の額が300万円だとします。
この場合、あなたは300万円を配偶者に対してだけ請求するか、不倫相手(不貞相手)に対してだけ請求するか、あるいは両方に300万円を請求するか、を選ぶことができます。
たとえば「配偶者に200万円、不倫相手(不貞相手)に100万円」という形で300万円を割り振って請求するのはあなたの自由です。
しかし割り振らないといけないわけではない、ということです。
もっとも、精神的損害の総額が300万円ですから、二人合わせて300万円があなたに支払われた場合には、精神的損害は補填されたということになります。
したがって、例えば不倫慰謝料を不倫相手(不貞相手)から先に受領済みの場合、後の配偶者に対する慰謝料請求において、「300万円を既に受け取っているから、自分にはもう支払う義務はない」とか「受け取った250万円分だけ、自分の義務は減額されるはずだ」という反論がなされる可能性があります。
そのことは、一応予想はしておかなくてはいけません(実際に配偶者がそのような反論をしてくるかどうかは別問題ですが)。
求償権について
不倫慰謝料は、配偶者と不倫相手(不貞相手)が共同であなたに精神的損害を与えたことについての慰謝料です。
ですので不倫慰謝料は、二人があなたに支払うべきものです。
したがって、上の例で不倫相手(不貞相手)が300万円全額をあなたに支払った場合、配偶者に対して、配偶者が責任を負うべき分を支払えと請求することができます。
これを求償といいます。
求償がどれだけ認められるのか、すなわち「配偶者と不倫相手(不貞相手)との間では、300万円の負担を何割ずつ分かち合うべきなのか」というのは、どちらが積極的だったか、主導的だったのかといった諸般の事情で決まります。
一般的には、半々だとか、配偶者が多めに負担すべきとされる場合が多いです。
不倫慰謝料の相場は?
不倫慰謝料の相場について質問を受けることはよくありますが、不倫相手(不貞相手)あるいは配偶者に請求する最初の段階では、相手方にプレッシャーを与えることも意図して、かなり大きな金額を請求することもしばしばあります。
事情にもよりますが、弁護士が請求する場合は300万円とか500万円とかいった金額となることも特段珍しくはありません。
不倫慰謝料額についての争いが最終的に裁判所で決着がつく場合、数十万円~300万円程度が認められることが多いようです。
もっとも、裁判官が不倫慰謝料の額を決めるにあたっては、不貞行為の内容・回数、不貞行為が始まった経緯、不貞行為の始まった際の夫婦関係はどうであったのか、不貞によって離婚するに至ったのか否か、等々の諸般の事情を考慮しています。
中でも不貞行為によって別居・離婚となったかどうかが事実上重視される傾向があるようです。
不貞の事実があっても、同居して夫婦生活を継続しているような場合は、損害が小さいとみなされ、不倫慰謝料の額は100万円未満と判断されることが多いように思われます。
しかし、諸事情によって別居・離婚したくても離婚できないような場合などには、より大きな額の不倫慰謝料が認められることもあります。
相場感をあえて言うならばですが、離婚しない場合には数十万円~100万円程度、離婚する場合には200~300万円程度といった感じです。
いずれにせよ、裁判官にできるだけ大きな金額を認めてもらえるよう、こちらに有利な事情としてどのようなものがあるのか、きちんと把握して対応していくことが重要となってきます。
不倫慰謝料の請求期限(時効)について
基本的には、不貞行為の結果離婚となる場合は離婚成立時から3年、離婚とならない場合は不貞行為と不倫相手(不貞相手)が誰なのかを知った時から3年が経過すると、時効期間が満了してしまいます。
不倫慰謝料の請求が時効期間満了後になってしまった場合、「時効だから払えない」と相手方から言われると、不倫慰謝料の請求権は消滅してしまいます。
不倫慰謝料問題でよくある反論はどのようなものですか?
「不貞行為をしていない」
不貞行為の確実な証拠としては、不貞行為中の写真や動画、ラブホテルに数時間滞在したことがわかる探偵の調査報告書、といったものが考えられます。
こうした確実な証拠まではなくても、配偶者が不貞行為を自白しているとか、配偶者と不倫相手(不貞相手)とのLINE、メッセージやメールで肉体関係が伺われるといった場合も、不貞行為があったことの証拠となりえます。
また、仮に全く証拠がない場合であっても、経験豊富な弁護士が間に入って交渉することにより、不貞の事実を認めさせることができることもあります。
その他証拠の取得方法についてのアドバイスも可能ですので、証拠がない場合は、早めに弁護士などに相談することをおすすめします。
また弁護士に相談する前に、証拠がないことを相手方に悟られないように気を付けることも大切です。
「既婚であると知らなかった」
既婚者と知らなかったというのは、不倫相手(不貞相手)からの反論としてしばしば見受けられるものです。
しかし正確には、「既婚者であると知らなかった」というだけではなくて、「知らなかったことに過失がなかった」という場合でなければ、慰謝料請求を免れることはできません。
不倫・不貞の相手としてしばしば選ばれるのは、職場の同僚や友人といった親しい関係にある人たちです。
そうすると、あなたの配偶者が既婚者であることを知る機会は多々あったはずですし、知らなかったにせよ過失があったといえる場合が多いでしょう。
あなたとしては、既婚だと不倫相手(不貞相手)が知っていた可能性が高いことや、もし本当に知らなかったのだとしても過失があった(気を付ければ既婚者だと分かったはずだ)という点を、きちんと主張立証していくことが重要です。
「不貞行為以前に婚姻は破綻していた」
以前から破綻していたという反論は、不倫慰謝料事件では常に不倫相手(不貞相手)から主張されると言っても過言ではないぐらいよくあるものです。
不倫慰謝料は、不貞行為より前に婚姻関係が既に破綻していた場合、認められません。
したがって、不倫慰謝料を請求したいあなたとしては、不貞行為より前には破綻していなかったことや、それまで円満であったのにも関わらずまさしくその不貞行為がもとで婚姻関係が破綻したのだということを主張立証していく必要がある、ということに一応なります。
裁判官としては、たとえば不貞行為よりも前に別居していたかどうかといった諸般の事情を総合的に見て、不貞行為より前に婚姻が破綻していたといえるかどうかを判断することになります。
もっとも、よくある反論だというのは裁判官も認識していますし、もし破綻していたと事実を認定してしまったら慰謝料ゼロという極端な結果につながってしまうため、そう簡単に破綻を認めるわけではありません。
たとえば夫婦ゲンカがちょくちょくあったというような程度で破綻が認められる可能性は低いです。
不倫慰謝料請求するとき、してはいけないこと
不倫慰謝料の請求に相手方(配偶者・不倫相手)が応じないからといって、例えばその職場に乗り込んで大騒ぎしてしまったり退職を強要するような行動をしたりしてしまうと、そのことによる慰謝料を逆に請求されてしまったり、場合によっては刑事事件に発展してしまったりする可能性もあります。
そこまでの大ごとにはならないとしても、反撃に移る格好の口実を相手方に与えることになってしまいます。
日本の法制度上、不倫・不貞行為で受けた精神的苦痛は、不倫相手(不貞相手)や配偶者から慰謝料を受け取るという形で決着をつけることとされています。
さらに配偶者に対する関係では離婚という選択肢も出てくることになります。
二人の交際を断たせたいというような場合でも、例えば不倫慰謝料請求を粛々と行う中で関係を断つ約束(接触禁止)を求めていくなど、冷静に対処することが大切です。
いくら腹立たしくても、あなたのほうが糾弾されかねないような行動は慎むべきです。
まとめ
不倫慰謝料を受け取ったとしても、配偶者に裏切られたショックはそうそう簡単に癒えるようなものではないかもしれません(「お金の問題ではない」ということですね)。
しかし、不倫慰謝料を請求するというのは、不倫相手(不貞相手)なり配偶者なりに対して、不倫のケジメをつけるようにはっきりした形で求めるということです。
離婚を希望して二人に不倫慰謝料を請求していくにせよ、夫婦関係修復を目指して不倫相手(不貞相手)にだけ不倫慰謝料と配偶者への接触禁止を併せて求めていくにせよ、新しいステップを踏み出すことに繋がってきます。
一言で不倫慰謝料請求といっても、ご依頼者によってその意向も様々です。
離婚したいのか修復したいのか、お金の問題なのかお金以外(接触禁止など)が実は重要なのか、訴訟を厭わず時間を掛けてでも相手方にケジメを求めていきたいのかできるだけ早く解決したいのかなど、何を優先して実現していきたいのかというのは人それぞれです。
当事務所はできるだけご依頼者の意向を尊重しつつ事件を進めて行くよう心がけています。
不倫慰謝料問題を当事務所では多数手がけてきておりますので、弁護士の法律相談をご利用ください。