解決事例
【調停和解成立】不当な500万円の確約書を白紙へ。離婚調停との同時解決で実質125万円まで減額した事例
40代
- 不倫慰謝料を請求された
相談前
相談者は、交際相手が既婚者とは知らずに交際していましたが、ある日突然、単身で住む自宅に、相手方の夫と「離婚コンサルタント」を名乗る人物の訪問を受けました。
夕方から約3時間にわたり、自宅という密室で執拗な追及を受け、「サインすれば裁判にはならない」「裁判になれば社会的地位を失うし、取引先にもバレる」などと強く迫られました。手が震えて文字も書けないほどの極限状態の中、相手方は「メールを全て見せるなら600万円を500万円に負けてやる」と譲歩を装った提案を突きつけ、最終的に総額500万円、翌日昼までに100万円を支払うという過酷な内容の確約書に署名させられてしまいました。その原本も渡されず、手元にはスマホの写メしかない絶望的な状況で、翌日、当事務所へ駆け込まれました。
相談後
当事務所は直ちに受任し、まずは翌日に迫っていた100万円の支払いを即座にストップさせました。署名のわずか2日後には相手方へ通知書を送付。正式合意は成立していないこと、本件署名は強迫的な状況下でなされたものであり公序良俗に反し無効であること等を強く主張しつつ、適正な金.額であれば慰謝料を支払う意思があることを伝えていきました。
その後、相手方から慰謝料請求の調停が申し立てられました。通常、金額の開きが大きい慰謝料事件では調停に出向くメリットは少ないのですが、本件は「相手方夫婦の離婚調停」も同時に進行しているという特殊な状況でした。
三者間で一挙に解決を図る絶好の機会と戦略的に判断し、あえて調停に出頭。交渉の結果、当初の500万円という不当な請求を退け、交際相手の女性と「連帯して250万円(一人あたりの実質負担125万円)」を支払うという、法的に適正な範囲での和解を成立させました。
弁護士からのコメント
サインを迫られ応じてしまったというケースは決して珍しくありませんし、弁護士ではない第三者が介入してくるケースもあります。
ただ、今回は慰謝料調停と離婚調停が同時進行しており、慰謝料支払という点については交際相手と共同歩調を取れたことが、解決の戦略的な選択肢を広げる要因になりました。
以下、①署名の効力、②第三者介入の問題、③調停戦略、の順に解説します。
署名してしまっても、まず相談してください
あなたが確約書や示談書にサインさせられたとして、それが、直ちに法的に有効な合意として確定するわけではありません。
本件のように、重要部分が未作成で合意として成立していないと主張できる余地があったり、無効や取消しを主張できたりする場合があります。
参照:不倫の誓約書を無理やり書かされたら?無効・取消を争えるケースを解説
また、一応は示談書として整っており合意が成立したように見える場合であっても、弁護士が介入したうえ、改めての示談締結を交渉してみると、再度の示談が可能なケースもあります。
相手方としても、示談書の締結経緯に問題があったのではという認識を内心では有していることもありますし、あなたが約束に応じない場合には訴訟による回収が必要となりますが、そのためのコストを避けたいと考えて、一定の譲歩に応じる動機が生まれることもあるからです。
もっとも、そのような示談書を作成していない場合に比べれば、減額幅が小さくなるなど、相対的には不利な状況に陥りがちです。
弁護士への相談は、サインさせられた後すぐ、支払いを始める前に行うことが重要です。
支払いを一度でも開始してしまうと、合意を認めたが故の行動であると相手方から指摘される可能性が高いです。
本件でも、署名翌日の相談により、翌日昼までに迫っていた100万円の支払いを止めたことで、サインさせられた書面の内容については承諾していない、ということを示したわけです。
「離婚コンサルタント」の介入という問題
本件のように、弁護士ではない「コンサルタント」などの第三者が介入し、密室で数時間にわたって執拗に署名を迫るケースがあります。
弁護士資格を持たない者が報酬を得て示談交渉や慰謝料請求といった法律事務を取り扱うことは、弁護士法72条が禁じる非弁行為に当たる可能性があります。
相手方がこうした第三者を介入させた経緯・状況は、示談合意の有効性に疑問を抱かせる事情となりえます。
また、慰謝料額算定にあたっての一事情として、相手方の言動の不当性も考慮されることがあり、そうした不当性を示す事情ともなりえます。
こうした第三者が介入したうえで示談したのであれば、事実上、かなり不相当な内容になっていることも多いかと思われますし、争うのであれば速やかにその手続きをとるべきです。
なぜ調停に出頭することが戦略になったのか
その後、相手方から慰謝料請求の調停が申し立てられました。通常、金額の開きが大きい事案では調停に出頭してもメリットは少なく、調停委員が両者の妥協点を探るにとどまるため、大幅な減額は期待しにくいのが実情です。
しかし本件では、相手方夫婦の離婚調停が同時進行中で、その期日と同じ時間に慰謝料請求調停が実施されることになったのです。
この状況を踏まえ、あえて調停に出頭することを選択しました。
調停を断って訴訟で争うという手もありましたが、その場合、示談書へのサインという事実がクローズアップされる可能性が高い(万が一有効だとされれば500万円になってしまう)のに対し、調停であれば、交際相手も含めた三者間での実質的な話し合いの場を作ることができ、500万円という数字にとらわれない解決を図れる余地が生まれるであろう、という判断がありました。
また、訴訟となれば離婚調停とは切り離された別件として進行することになり、「示談書の合意は無効としても、では慰謝料額はいくらか」という点を判断するために離婚調停の行方を横にらみで進めることになりかねず、結局は解決までに相当の時間がかかる可能性もありました。
結論として、慰謝料の点については、交際相手と連帯して250万円(実質一人125万円)ということとなりました。調停に出ることにより、500万へのサインについては事実上問題とされることなく、連帯していくらで解決するかという点が話し合いの中心になったという意味で、こちらに有利な交渉の場を作り出すことになったのです。
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