解決事例
【訴訟で和解】中絶同意書に署名。慰謝料800万超を請求され、100万に減額
30代
- 不倫慰謝料を請求された
相談前
「特別」という言葉の罠。不自然な妊娠と執拗な脅迫、中絶同意書への署名
相談者はライブ配信者Aさん(原告の妻)の視聴者で、Aさんは子持ちだと公言する「ママライバー」でした。相談者はAさんから「リスナーの中であなたが一番特別だ」と執拗に求められ、いわば「囲い込まれる」形で、彼女が主導する関係に陥ってしまいます。さらに「夫の浮気やDVから逃れるための離婚資金を貯めるため配信をしている」との境遇を聞かされており、相談者は深く同情して、Aさんに一度に10万円以上もの「投げ銭」をするなどしていました。
しかし、Aさんの「妊娠」の連絡で事態は暗転します。Aさんは「数年間、別の男性と避妊せずに関係を持っても妊娠しなかった」と語っていたにもかかわらず、関係を持ってからわずか1ヵ月で妊娠を告げてきたのです。あまりに不自然なタイミングでの妊娠報告に、相談者は「本当に自分の子なのか」と強い疑念を抱きますが、Aさんは「自分の子だと認めないなら家族にバラす」と脅迫し、自殺をほのめかして相談者を精神的に追い詰めました。相談者は極限状態の中、事実上の強要を受ける形で中絶同意書への署名を余儀なくされたのです。
相談後
「中絶同意書=実父」の予断を覆す。他男性の存在を立証し、尋問前のスピード解決へ
依頼を受けた当事務所が相手方弁護士に接触したところ、「すでに提訴した」との回答があり、相談者のもとには825万円という、一般的な相場から乖離した巨額の損害賠償を求める訴状が届きました。逃げ場のない訴訟という現実に、相談者は深い絶望の中にいました。
当事務所は即座に訴訟における反論を展開しました。
最大の争点である「妊娠・中絶」について、中絶同意書への署名は「Aさんのヒステリックな言動や暴露の脅し、自殺の示唆を受けた強い心理的圧力に屈した結果」であり、決して相談者が実父だと認めたわけではなく、その証拠にもならないと真っ向から反論しました。
さらに、相談者が提供したメッセージ記録を精査し、相談者と同時期にAさんが「元彼」とも避妊せず肉体関係を持っていた事実を法的に構成して立証。相談者が妊娠させたという原告の主張を根底から揺さぶりました。
一方で相談者は、自分の子かどうか疑いを持ちつつも、Aさんの求めに応じて中絶費用を負担するなど、道義的に誠実な対応を尽くしていました。当事務所はこの事実を、不当な増額を阻止するための「加害の悪質性がない」とする有力な根拠として主張しました。
このように、客観的な証拠に基づく反論を粘り強く続けた結果、当初の請求額から約725万円を減額する「100万円」で、尋問実施前という早い段階で和解が成立。裁判所での証言(尋問)という多大な精神的負担を伴う手続きを回避し、相談者を最短ルートで平穏な日常へと解放することができました。
弁護士からのコメント
「サインしたから終わり」ではない。激しい対立事案こそ、裁判での「戦略的防御」が鍵
不貞事案において、中絶同意書に署名したという事実は、慰謝料を請求される側(被告側)にとって重い意味を持ってしまいます。
相手方(原告側)は示談交渉(話し合い)でも裁判でも、経験則(※)を盾に、
・「不貞行為がなければ中絶同意書に署名することは通常ない」
・「自分が父でなければ署名することは通常ない」
・「自分の子か疑わしければ署名することは通常ない」
といったように、攻め立ててくることが予想されるからです。このように「ふつうはこうなるはずだ」という論理は、一見すると非常に強力で、裁判官の心証にも響きやすいのが現実です。
※経験則:多数の経験的事実の蓄積から導かれる、事物の性質や因果関係に関する一般的法則をいいます。 もう少し噛み砕いて言えば、多くの事例から「ふつうはこうだ、こうなる」と考えられている、物事の成り行きに関する法則的な考え方のことです。
その経験則を崩すべく、当事務所のほうでは、「実父ではない可能性」を示していくことに注力しました。
本件では、相談者と同時期に、Aさんが別男性とも避妊せず関係を持っていたことを示すメッセージ記録が存在していました。
そこで、これをもとに別男性が実父である可能性を主張し、原告側の主張に対して正面から反論していきました。
また、署名行為そのものについても反論しました。
本件では、暴露の脅しや自殺の示唆といった強い心理的圧力を受けた末の署名であり、「自分が実父だから署名した」という経験則がそのままあてはまる状況ではないことを主張しました。
さらに、相談者が中絶費用を支払った事実についても、当事務所は「疑わしさを認識しながらもAさんの求めに応じて誠実に対応した」という側面から評価し、「加害の悪質性がない」という減額根拠として主張しました。
慰謝料額は諸般の事情を総合考慮して判断されるものであり、こうした誠実な対応も有利な事情として考慮されうるのです。
そもそも「妊娠・中絶」が絡む事案では、相手方の感情が極めて激しくなり、示談交渉では冷静な妥協点を見出すことが困難なケースも少なくありません。
相手方は、「妊娠・中絶という重大な結果が生じているのだから、こちらの要求が通って当然だ」という強い確信(あるいは、絶対に譲れないという激しい感情)を抱いていることが多いからです。
特に本件のように同意書への署名がある場合は、相手方の態度はより硬化し、話し合いでの解決は一層困難になりがちです。
当事務所では「中絶や出産があっても示談で解決できた」事例はありますが、話し合いが平行線をたどる場合には、あえて早期に戦いの舞台を「裁判」へと移すことが、最も効果的な戦略となります。
公平な第三者である裁判官の前で、他男性との関係性や、署名に至るまでの心理的強制の実態といった「客観的な事実」を淡々と積み上げていく。そうすることで、相手方の主観的な感情論を、冷静な「法的なロジック」で解体し、適正な解決へと導くことが可能になるのです。
妊娠・中絶・出産が絡む案件では、どうしても原告の怒りの感情が激しくなってきますので、原告がなかなか妥協してこず、和解が成立せずに尋問や判決に至る可能性も高くなってきます。
その状況で和解成立の可能性を高めるには、充実した反論・立証をすることにより、原告に「このまま判決を取得してもメリットが薄いかもしれない」と認識させることが必要になってきます。
充実した反論・立証は、判決結論を有利にするための戦いであると同時に、和解成立の可能性を高めることでもあるのです。
本件でも、主張立証に力を尽くしたことで尋問前に和解が成立し、証言台に立つという精神的負担の大きい局面を迎えることもなく解決に至りました。
なお、本件ではライバーであるAさんに多額の投げ銭をしていた、囲い込まれていたという事実もありましたが、当事務所ではこれを、相談者が関係を主導していなかったことを示す事情として、減額要素に組み込んでいきました。
あなたが「有利に使えそうなやり取りなど無い」と思い込んでいても、弁護士がプロの目で履歴を精査すれば、決定的な反論の糸口が見つかるかもしれません。有利・不利を自分で判断してしまわず、まずは全ての履歴を弁護士に見せてみてください。
仮にメッセージ履歴などの物的証拠が一切残っていない場合でも、あなたの記憶を法的なロジックに沿って緻密に整理しておくことが極めて重要になります。自分では不利だと思っていたやり取りが、相手方の主張の矛盾を突く「反撃ポイント」になることもあり得ます。供述証拠(尋問でのあなたの発言)が信用できると裁判官に理解してもらうため、「陳述書」を精緻に作成し、万全の準備を整えた上で尋問に臨む必要があります。
たとえ物的証拠が乏しい状況であっても、今ある記憶や記録からどのような反論を組み立てるのが最善か、プロの視点で共に探ります。「証拠がないから無理だ」と一人で抱え込んで諦めてしまう前に、まずは現在の苦境をありのままお聞かせください。
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