このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
慰謝料コラム
目次
不倫を会社・職場にバラすと相手方(=交際相手の配偶者)から言われることは、決して珍しくはありません。
二人が今も同じ職場だとか上司部下や同僚同士の関係にあるという場合に、しばしば問題になります。
相手方の言葉は「慰謝料1000万円を支払え。嫌なら職場や家族にバラす」といった直接的な(脅迫めいた)言い方かもしれません。
あるいは「今後このような関係にならないよう、会社に報告させてもらいます」といったようなより丁寧な(?)表現かもしれません。
どちらにせよ、会社にバラすと言われている(バラされる可能性がある)のは同じで、実質的に変わりはありません。
それでなくても不倫が相手方にバレて動揺しているところに、追い打ちをかけて会社にバラされるとなると、気が動転してしまうのも当然でしょう。
しかし、会社にバラされたくないあまり、相手方の要求に言われるがまま応じるというのは避けるべきです。
相手方が会社にバラすと言っていても、誠意を持って話し合っていけば、結果的には不倫を会社にバラされることなく事件を解決できる方向性が見えてくることも多いです。
話し合っても示談成立に至らない可能性もありますが、実際に不倫をバラされる危険性は事実上低くなってくるでしょう。
不倫を会社・職場にバラすと相手方が言ってきている動機が、あなたからできるだけ有利な条件を引き出すためだということがあります。
そのプレッシャーに耐えかねて不利な条件で示談してしまうと、後からその内容を争うのが難しくなってきます。
したがって、「会社にバラす」というプレッシャーに負けず、減額交渉等を試みていくべきです。
あなた自身でそれができないのなら、弁護士に依頼すべきです。
(参照)不倫慰謝料の示談書(請求側・される側双方の視点から)
「不倫を会社にバラす」という発言だけでなく相手方からの連絡などを完全に無視し続けると、「話し合う気も無いようだ」と思われてしまいます。
そう思われるのは避けるべきです。
誠意が無いとみられて(その報復として)本当にバラされるかもしれません。
そうでなくとも、穏便に示談できたかもしれないのにその機会を失ってしまうことになります。
不倫を会社・職場にバラすと言われて動揺するのは当然ですが、まずは落ち着いてください。
「不倫を会社にバラす(報告する・抗議する)と言われています、どうしたらいいですか?」というご相談者も実際に多いのですが、これまでの経験上、当事務所が依頼を受けた後で実際にバラされたというケースはまずありません。
バラされたらどうしようと心配するよりもっと重要なことは、「バラすと言われ、相手方に抵抗できなくなって、言われるがまま要求を丸呑みせざるを得なくなった」という事態に陥らないようにすることです。
不倫を会社にバラすと言われたら、慌てて行動するのではなく、まずは落ち着いて(あるいは落ち着くために)弁護士に相談すべきです。
「不倫を会社・職場にバラす」という相手方の発言の意図が何なのか。
本当にバラすつもりで言ってきたのか、単なる駆け引きなのか、一時的に血が上って言い過ぎただけだったのか。
そういったことは、相手方と話をしてみないと分かりません。
まずは相手方と話し合いを試みてみましょう。
ただし、相手方の要求を丸呑みすることは禁物です。
話をすると相手方に押されてしまいそうだという場合には、弁護士を通じて相手方と話してみるべきです。
弁護士は裁判所の相場などをもとに相手方を説得していきます。
相手方が「自分で弁護士を付けたり裁判まではしたくない」と思って、示談に応じてくるかもしれません。
不倫を会社にバラさないように、と相手方の行動を牽制することも重要です。
この点、弁護士が仕事を受任すると、適切なタイミングで相手方に「受任通知」(=仕事を受任したという通知)を送ります。
この中には、今後一切本人に連絡するな、弁護士に連絡するように、といった内容が記載されています。
また、仮に職場にばらす等した場合は逆に責任を追及する、といったような文言を記載することもあります。
いずれにせよ、受任通知を送付することで弁護士が介入したと知らせることになるので、相手方への牽制となります。
受任通知は単に牽制だけではなく、「不倫の件でこれからお話し合いをさせていただきたい」ということも記載してあるので、誠実に話し合う意向があることを相手方に伝えることになります。
(備考)弁護士は、委任した本人には、受任通知送付後に相手方から連絡があっても一切応答するなと説明しています。その結果、相手方は、ご本人から有利な条件を引き出そうとして連絡しても応答が引き出せなくなり、下手なことをすると逆に責任を追及される可能性も出てくるため、ご本人への連絡自体が止むことになります。その後は、弁護士が代理人として、例えば謝罪の意思を伝える、妥当な金額の慰謝料を提案する等の活動をして話を纏めていくことになります。
当事務所での経験上はほぼありませんが、相手方によっては牽制にならず、弁護士から受任通知を受け取ってもご本人への連絡などを続けてくることも、考えられなくはありません。
相手方がこのようなキャラクターの場合、どうしても不安になるでしょうが、たとえば「会社にバラされるいわれはない。裁判所が判断する適正な額であれば支払うが、要求額には応じられない」というように、割り切って対応していくしかありません。
場合によっては、受けた被害の証拠を整えたうえで警察に申告したり逆に慰謝料を請求する民事裁判を提起したりしていくことも一つの方法でしょう。
(備考2)強制力で連絡を止めさせることができるかというと、実際問題として難しいです(着信拒否やブロックはともかく)。
(備考3)もしかすると、不誠実に見られかねない態度を以前に取ったことで、相手方の激しい反応を誘発してしまった可能性もありえます。もし身に覚えがあるのであれば、弁護士に依頼して、裁判所の傾向を踏まえた適正な内容で示談する意思があることを伝えつつ、話し合いを仕切り直すべきでしょう。
法律上の原則として、不倫の結果相手方が受けた精神的苦痛は、金銭(慰謝料)で賠償することになります。
不倫が事実だからといって、会社にバラされて当然だということではありません。
また、相手方から裁判で訴えられたとして、判決で慰謝料の支払を命じられることはありますが、退職を命じられることはありません。
相手方の立場からいえば、法的に(裁判所を通じて)できることには限界があり、それは慰謝料の請求に留まるということです。
では、相手方が不倫を会社にバラして(裁判所を通さず事実上の)報復を本当にしてくる可能性は高いのでしょうか?
以下で見るように、実際はさほど高くはないと思われます。
(備考4)判決で命じられるのは金銭の支払に留まりますが、もしそれ以外の内容を含む裁判上の和解をあなたがしたのなら、その約束は有効になります。
相手方が「不倫を会社にバラす」と言う意図は、次のように色々あるかもしれません。
もっとも、多くの場合相手方は、「もし本当にバラしたら、不倫慰謝料請求に支障を来たしたりしっぺ返しを受けたりするかもしれない」ということも考えてはいるはずです。
当事務所の経験からいえば、実際にバラされる可能性はそれほど高くないと思われます。
相手方としては「不倫されてしまった自分だけがどうして苦しまないといけないのか」「悪いことをしたのは不貞相手のほうなのに、平然と暮らしているのは許せない」という強い怒りを持っていることも多いです。
「職場の上下関係を悪用して関係を迫ったのではないか」などと思っていることもあります。
(実際はそうした事実がなくても、交際相手が、相手方から問い詰められて自己保身からそう釈明した可能性もあります)
不倫を会社・職場にバラすという発言が、このような怒りや報復感情が一時的に抑えきれずなされた結果であることも、少なくはありません。
相手方と真摯に話し合いを進めていけば、それを見た相手方が(「会社にバラす!」と言っている段階からは)軟化してくることも多いですし、会社や職場にバラされず解決できる道筋も見えてくるでしょう。
相手方が、不倫慰謝料額等々について有利な約束を取り付けようと、その交渉材料にすべく言ってきていることがあります。
この場合、相手方は「有利な条件を獲得したい」という(その限りにおいては)合理的な思考に基づいて行動してきています。
本気でバラそうとしているとは限りませんし、バラすと自分が非難されかねないこと等も分かっているのではないかとも思われます。
そうすると、やはり真摯に話し合っていくことで会社にバラされず解決できる方向へと向かっていくように考えられます。
とはいうものの、相手方が過大な条件に固執してきて話がまとまらないことは、往々にしてよくあります。
弁護士に依頼して、もし訴訟提起されたとしても裁判官の関与を得ながら合理的な相場で解決できるように進めていくべきでしょう。
(参照)弁護士に依頼するメリット
「不倫を会社にバラす、それが嫌なら自分から退職しろ」というような発言が何度も繰り返される場合があります。
このような場合は、一時的な感情の発露や交渉材料のための発言というより、「一緒の職場だとまた関係を持つかもしれない。退職させて関係を完全に絶たせたい」とか「退職させることでダメージを与えて報復したい」という意図によると推察されます。
もっとも、あなたには退職の義務はありませんし、判決で退職を命令されることもありません。
そのことを前提にしつつ、また関係を持つのではという相手方の懸念を解消できるような方策を提示するなどして、誠実に話し合いを進めていくことも可能でしょう。
それでもどうしても話がまとまらなければ、それは仕方がありません。
示談をするかどうかは双方の自由だからです。
(参照)不倫で会社を辞めろと要求されたら
対相手方との関係では、不倫を会社・職場にバラされたことで損害を受けた場合、その賠償を請求していくことが考えられます。
対会社との関係でいうと、不倫が会社にバラされた結果、会社から、不倫が事実かどうかといった調査を受ける可能性があります。
「不倫がバレると解雇されますか?」と質問されることもありますが、一般論としては、社内不倫のみでは解雇の理由にはなりません。
不倫が事実としてあったというだけではなく、その不倫によって会社の職場秩序が乱れた(企業運営を害した)とか会社の信用が傷つけられたという場合でなければ、解雇無効と判断される可能性が高いものと思われます。
(備考5)二人が同意のもと不倫関係になったのではなくセクハラにあたるような場合は、また別の話です。
不倫をバラすという相手方との示談交渉は、(相手方がバラすと言っていない)通常の場合と比較すると,交渉・和解がややまとまりづらい傾向にはあります。
先に述べたように、不倫をバラすことで会社を動かしてあなたを異動させたいとか、事実上職場に居られなくさせたい(退職させたい)というように、相手方が考えている可能性があります。
相手方が異動などを強く希望しており撤回意思がみられない場合もあります。
そうなると次にみるように、話し合いを纏められない可能性が出てきます。
「早く示談をまとめて、不倫を会社にバラさないと約束させたい」というように思う気持ちは分かりますが、まとまらない可能性も残念ながらありえます。
示談がまとまるのは、あくまでお互いが慰謝料額等の内容や諸条件に納得すれば、の話です。
たとえばあなたが「相場では不倫慰謝料は高くても100万円くらいでしょ、だからその内容で相手方に示談させたいです!」と言ったところで、相手方がそれに了承しなければ、示談はまとまりません(仮にそれが客観的に妥当な額であったとしても)。
逆に相手方が「どうしても退職してほしい」と言っていても、あなたがそれに了承しなければ、示談がまとめられてしまうことはありません。
自分の納得のいかない内容で示談する義務は、あなたにも相手方にも無いからです。
話し合いを続けても合意の糸口が見えない場合には、示談交渉を断念するしかありません。
一般論としては、示談がまとまらないと、相手方があなたに対して訴訟を提起してくることになります。
訴訟となった後、多くの場合は裁判官が介入する形で話し合い(和解交渉)の機会がありますので、そこで合意を目指すことになります。
合意が整わなければ判決となり、金額(慰謝料額)だけの問題になります。
そうすると、相手方がたとえば「慰謝料には興味が無い。どうしても会社を退職させたい、望むものはそれだけだ」というような場合には、そもそも訴訟を提起してこない可能性もありえます。
「裁判官が説得しても退職に応じないだろう。判決で退職が命じられることはないから、訴訟提起しても望むものは得られないだろう」と相手方が考える可能性があるからです。
示談交渉ができず相手方からの訴訟提起もなされずそのまま時間が経過していくと、いずれは消滅時効期間が満了し、「時効だから不倫慰謝料は支払う義務はない」と主張することが可能な状況に至ります。
法律上、相手方が損害及び加害者を知った時から3年、あるいは不法行為の時から20年で時効になると定められています(民法724条)。
「時効になるまでそんなに時間が掛かるの?それまで会社にバラされるかどうかを心配し続けないといけないの?」と思うかもしれません。
しかし、会社にバラされるかどうかと時効かどうかは関係がありません。
時効になれば不倫慰謝料を支払う義務がなくなるというだけです。
「時効になったからバラされない」とか「時効になるまではバラされるかもしれない」ということではありません。
不倫関係に陥るのが同じ会社・職場の二人であることも多いです。
そのため、相手方が「不倫を会社にバラす」、「職場を退職しろ」などと要求してくることもそう珍しくはありません。
その言葉に動揺して不利な内容で示談してしまうと、後から覆すことが難しくなってしまいます。そのような事態は避けなければいけません。
不倫を会社や職場に100%確実にバラされないようにする方法はありませんが、当事務所にご依頼頂いた後の経験でいえば、本当にバラされる事態に陥ったことはまずありません。
また、誠実に話し合う意向があることを示していけば、相手方の言動が落ち着いてくることも多いです。
不倫慰謝料の金額を吊り上げるための材料としてバラすと言ってきているような場合もあります。
しかし「カネの問題ではない」と相手方が思っている場合もあります。
どういう意図なのかは、相手方とまずやり取りをしてみないことには、把握しようがありません。
「不倫を会社にバラす」と言っているような相手方とは自分では話しづらいでしょうし、弁護士から受任通知を送付して相手方を牽制しつつ話し合いを進めていくべきでしょう。
弁護士は裁判所の相場などをもとに相手方を説得していきますし、相手方が「自分で弁護士を付けたり裁判まではしたくない」と思って示談がまとまるかもしれません。
もし示談がまとまらず相手方が訴訟提起してこなかったとしても、あなたとしては「責任を取るためにできるだけのことをした」と言いやすくなるでしょう。
これも当事務所の経験から判断する限りではという話にはなりますが、話し合いがまとまらなかったから実際にバラす相手方というのはほぼ居ないように思われます。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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