このコラムの監修者

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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
慰謝料コラム
目次
「不倫が発覚して、誓約書(念書)でもう二度と会わないと約束したのに、破ってしまった…」
「交際相手から連絡が来て、またやりとりをしてしまった…」
相手方から突きつけられた高額な違約金(違反金)や、法的措置という言葉に絶望していませんか?
率直にいって、誓約書(念書)を作っていない場合に比べれば、約束を破ったという事実は法的に不利になりがちですが、『即、人生終了』ではありません。
もし誓約書の違反が事実でも、違約金発生を争う余地は残されています。
仮に発生自体は争えなくても、相手方にとっては、違約金を現実に回収するためにはいくつものハードルがありますので、交渉の余地が残されていることも多いです(実務上「誓約書には違約金の定めが有るが、公正証書にはなっていない」という場合が非常に多いので)。
他方で、相手方が誓約書違反に憤激し、「再度の違反を防ぐため家族・職場に通告する」などと言ってくることも多いです。
この記事では、不利な状況だからこそ必要な、誓約書に違反したらどうなるのか、 金銭や損害賠償の支払を拒否できるのか、家族や職場に知られるリスクを最小限に抑え『傷口を広げないための防衛策』などを、裁判例を交えながら徹底解説。
後悔しないために、 ぜひ最後までお読みください。

誓約書(念書)は差し入れる人の約束や誓いなどを記載した書類のことで、「不倫(浮気)した人が、不倫(浮気)された人に差し入れる」という形が多いです。
典型的な内容は、「今後一切接触しない」「接触したら違約金100万円を支払う」といったものです。
ありません。しかし、誓約書へのサインを単純に拒否するだけでは、「謝罪するつもりはないのか、これからも連絡を取るつもりか」などと指摘される可能性も高いです。
「その誓約書にはサインできないが、お互い納得のいく内容で示談書を作成しよう」という方向で交渉してみるのも1つの方法です。
誓約書を提出する前に、事前に内容を十分に理解し、安易な約束はしないようにしましょう。
(1)誓約書には一応法的効力がありますので、違反すると、その法的責任を問われたり、事実上の紛争を引き起こしたりする可能性があります。
もっとも後述のとおり、取消し・無効により、法的効力が無くなる場合もあります。
事実上の紛争の典型は、職場や家族に不倫や誓約書違反の事実を告げられてしまう、といったことです。
(2)誓約書には、「違反したら、違約金○○万円を支払う」といったように、約束を破った場合に備えた文言が記載されていることが非常に多いです。
そのため、誓約書に違反すると多くの場合、「違約金(違反金、いわゆる「罰金」)を支払え」という争いが発生します。
もし金額の記載がなくても、約束違反により精神的苦痛を受けたということで慰謝料を請求される可能性はありますし、改めて不貞行為に及んだ場合、新たな不法行為についての損害賠償(慰謝料)を支払う義務が生じてきます。
(3)もっとも、誓約書を自由意思で作成したといえない場合、たとえば強迫があった場合には取消すことで無効とすることができます。
誓約書に記載された内容が、あまりにも高額な違約金や不当な内容である場合、そのすべてが認められるとは限りません。
裁判所は、具体的な状況を考慮し、金額を減額したり、一部の条項を無効と判断したりすることがあります。
(4)誓約書に違反したとして請求された金額に納得がいかない場合は、弁護士に相談し、交渉を依頼することも1つの方法です。
誓約書の内容を活かしたままにすると更に後日争いとなることが懸念される場合は、「新たに示談書を締結し、その中で、誓約書は効力を持たないことを双方が確認する」という形を目指して交渉を試みるべきでしょう。
違反を指摘されているのに放置すると、家族や職場などを巻き込んでのトラブルにも発展しかねません。
「約束を破ったからすぐに給与が差し押さえられる」と怯える必要はありません。
公正証書などの債務名義がない限り、相手方が強制執行するには裁判の手続きを経る必要がありますので、話し合いの余地が残されています。
不倫の誓約書は、多くの場合、公正証書などの形にはなっておらず、ふつうの書類(紙)にサインしてあるという形です。
その場合、違反で違約金が発生するとしても、いきなり財産を差し押さえられるということはありません。
さらには、「そもそも約束違反はない」「違約金は発生しない」などと争う余地もありえます。
相手方の立場からいうと、違約金を現実に回収するためには、いくつかの段階を踏む必要があります。
具体的には、「あなたを訴える→裁判で債務名義(ex.判決)を取得する→強制執行→回収実現」という流れとなります。
あなたを訴える為のコスト、例えば弁護士に依頼する費用や労力、回収までの時間などが掛かってくることになります。
相手方としても、高い弁護士費用を払い、長い時間をかけて裁判を戦うのは大きな負担です。
そのため、あなたが弁護士を介して「裁判を避けて早期に解決できる、適正なラインの額」を提示すれば、相手方が現実を見て譲歩に応じてくるケースは、実務上決して少なくはありません。
(1)まず前提として、不倫の誓約書に違反した場合、その後に相手方から請求されるのかどうか、請求されるとして何を請求されるのかというのは、誓約書自体の規定内容や、違反行為の内容などによって異なってきます。
例えばごく軽微な違反に留まる場合、相手方が事実上指摘をしてこないこともあるでしょう。
(2)誓約書の内容として、「二度と会わない、関わらない。約束に違反した場合は違約金50万円を支払う」といったように、約束に従わなかった場合の文言が設けられていることが多いです。
この場合、約束違反を理由とする違約金(違反金)50万円を請求される、という事態になりえます。
あるいは「今後不貞行為をしない」という誓約を破った場合、違約金の定めがなくても、新たな不貞行為について損害賠償(慰謝料)を請求される事態となりえます。
そして、誓約にもかかわらず再度関係を持ったという点で悪質だと評価される可能性もあります。
すなわち、相手方から請求される可能性のあるものとして、「誓約書を根拠とする違約金」のほかにも、「不貞行為(不法行為)を根拠として慰謝料を請求する。その違法性・悪質性を示す1つの事情として、誓約違反の事実がある」といった場合も考えられます。
後者は、端的に言うと「不貞が発覚し、誓約書で約束したのに再度不貞したから、極めて悪質だ」ということです。
(3)違約金などの請求は、約束違反があった、新たな問題行為があった、という指摘とともに開始されます。
もし話し合いがまとまらなければ、最終的には訴訟で、その請求が認められるかどうかを裁判官に判断してもらうことになります。
(4)裁判で、違約金を支払うという和解がまとまったり、判決が確定したりしたにもかかわらず、なおも支払わないと、強制執行を受ける可能性があります。
逆に言えば、ここまでの段階に至って初めて、強制執行される可能性がでてきます。
相手方としては、あなたを訴えることに伴う諸々のコスト(弁護士の費用、労力、時間など)がかかってくることになります。
誓約書に違反したということで、相手方としては、「一度は穏便に済ませてあげたのに」などと、あなたに対して強い不信を抱いている可能性が高いです。
あなた自身で弁解や話し合いをしようとしても「信用できない」などと門前払いされたり、あなたの自宅や職場に接触を試みるなどの事実上の抗議活動に出てきたり、といった可能性もあります。
すなわち「不倫が発覚したが、まだ約束等はしていない」という時点よりも、あなた自身で交渉するのは極めて難しい可能性が高いので、その点は注意が必要です。
ではどうすればいいのか?といえば、弁護士を介して交渉することをお勧めします。
不倫の誓約書にサインしたからといって、必ず違約金や慰謝料を支払わなければならない、というわけではありません。
請求を拒否できるケースも存在します。
以下に、主なケースを解説します。
誓約書の約束内容が公序良俗に反する場合や、強迫によって書かされた場合など、取消しや無効を主張できる場合があります。
無効となる場合でも、裁判所が「一部有効、一部無効」と判断する場合もあります。
具体的事実が違反に該当するのか明確ではない、という場合には、請求を拒否できる可能性があります。
そもそも約束自体が不明確である、違反に該当せず許された行為である、違反は事実だが不可抗力である、といった場合も同様です。
違約金の金額が、違反行為によって生じた損害に比べて著しく高額であるとか公序良俗に違反するような場合、その金額の一部または全部が認められないことがあります。
金額それ自体だけではなく、禁止内容などとも比較のうえで判断されることになります。
違反行為により違約金が発生しても、そこから一定期間が経過すると、違約金を請求する権利が消滅時効にかかることになります。
消滅時効期間は、違約金を請求できると知ってから5年あるいは違約金を請求できる時から10年となり(民法166条)、期間が満了していれば、時効を援用して、請求を拒否することができます。
「脅された」「無理やり書かされた」など、書いた人の自由な意思に基づいて作成されていない誓約書は、無効となる可能性があります。
違法性のある強迫によって意思表示をした場合、その意思表示を取り消すことができ(民法96条)、取消しが認められるとその結果無効となります(121条)。
「自由な意思に基づいて誓約書が作成されたとは言えない」ということを裏付ける事情としては、例えば以下のようなものが考えられますが、こうした事情があれば直ちに「強制的だった」ということになるわけではなく、裁判官が諸事情を総合的に判断して結論を出すことになります。
誓約書の内容が公序良俗(公の秩序や善良の風俗)に反する場合、その誓約書は無効です(民法90条)。
公序良俗違反にはいくつかの類型があり、暴利行為、個人の自由を極度に制限するもの、不当な利益を収得するもの、といったものがあります。
誓約書違反との関係で問題になるのは、多くの場合、「慰謝料・違約金の額が大きすぎる、暴利行為ではないか」という点です。
公序良俗違反が認められるとしても、必ずしもその全部が無効とされるわけではありません。
「一定限度で有効だが、超える部分は無効」という判断がなされることもあります(後記裁判例を参照)。
誓約書の内容を争うために、今からでもできることとしては、たとえば以下のようなことがあります。
(1)無理矢理書かされた証拠
これらの記録は、後々、誓約書の公序良俗違反や強迫取消しなどを主張する際に、重要な証拠となります。
(2)内容を承諾していない証拠:内容証明郵便の活用
内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったかを日本郵便が証明してくれるサービスです。
この内容証明郵便を利用して、誓約書にサインしたのは強要されたからであり本意ではない、したがって誓約書の内容には拘束されない、という認識を明確に伝えることができます。
具体的には、例えば以下のような内容を記載した内容証明郵便を送付します。
このような内容の内容証明郵便を送付することで、誓約書は無効だという認識を持っていることや、誓約書を理由に請求されても応じるつもりは無い旨の意思を伝えたことの証拠になります。
もっとも、内容証明の内容(=あなたの言い分)を、裁判所が認めてくれるかどうかは別問題です。
後日に裁判所が「取消しや無効の主張は認められない=誓約書の約束は有効である」と判断する可能性もあります。
また、内容証明郵便を受け取った側が態度を硬化させ、弁護士をたてて改めて誓約書の遵守を求めてくるとか、違約金を支払えという裁判を提起してくる可能性なども考えられます。
それでも、誓約書の内容に異議があるという点を通知しておくことには、意味があると言えるでしょう。
不倫の誓約書違反(示談書・合意書中の誓約の違反)が問題となった裁判例はいくつかありますが、その判決文の中で指摘されている内容の一部を紹介します。
裁判例はあくまで当該事案について判断したものであり、単純に一般化できないことには注意が必要です。
裁判所としては「具体的にどういう違反をしたのか、それは高額の違約金が認められても仕方のないことなのか」といった事柄の実質を見極めようとしている、とは言えるでしょう。
具体的な事例の判断が上記のように分かれているということは、あなたとしては争う余地もありうる、ということです。
万が一、誓約書違反をしてしまった場合は、早めに弁護士に相談し、適切な対応をとることが重要です。
相談者と既婚男性の不倫が発覚し、二人はそれぞれ妻に慰謝料を支払ったうえ、何らかの約束に違反したら一回ごとに100万円を支払うという違約金の約束をしました。
その後、再度関係を持ってしまい、妻の弁護士から、不貞行為8回分の違約金として800万円の支払を求める通知が届きました。
当事務所は、妻が離婚届にサインした時以後の不貞行為についての違約金は発生しないこと等を主張して、200万円に減額して示談解決しました。
誓約書違反が発覚したとき、相手方から「約束を破られたので信用できない。家族・職場に今回のこと(不倫や誓約書違反のこと)を説明して、あなたを見張ってもらう」などと通告されることは、よくあります。
相手方との交渉を弁護士に依頼すれば、弁護士に窓口が一本化されますし、弁護士から相手方に送付する受任通知(依頼を受けたという通知)の中に家族への接触などを止めるよう記載しますので、相手方がそのような通告を控えてくることになります。
誓約書違反によって相手方が家族・職場へ通告してくるのを防ぎたいという場合は、弁護士に依頼して交渉を進めてみることにメリットがあるでしょう。
先述のような、誓約書の約束が無効、違反が明確ではない、違約金が不当に高額、といった事情が存在する場合もあれば、そういう事情が全く存在しない場合もあるでしょう。
それでも、交渉のうえで減額や改めての示談締結を打診してみれば、話がまとまる場合もあります。
違約金の請求を拒否するだけではなく、「サインしてしまった誓約書それ自体は無かったことにして、改めてきちんとした内容の示談書を取り交わす」ことができれば、そのほうが将来のリスク回避という意味では価値があります。
誓約書の内容にもよりますが、サインをしてしまっている以上、後々になって約束違反を問われるなどのリスクが残るからです。
「誓約書を無かったことにする」ことと「誓約内容自体を無かったことにする」ことはまた別問題ですが、誓約が広すぎたり内容が重すぎたりするような場合には、誓約内容や違約金を合理的ラインにまで引き下げたうえできちんとした合意内容に改めることを目標に、交渉してみることも検討すべきです。
あなた自身で交渉しようとしても、相手方からみれば既に誓約書を反故にされている以上、感情的な反発を招くだけで終わりかねません。
誓約書違反による請求を拒否したい場合や、「誓約書を無かったことにしてきちんと示談書を取り交わしたい」というような場合には、弁護士に依頼して交渉すべきです。
弁護士に依頼する主なメリットは以下の通りです。
誓約書の有効性を争う場合、法的知識に基づいた適切な主張が必要です。
「書かされた」「不当だ」などと言うだけではなく、どのような事実から公序良俗違反や強迫だと言えるのか等を主張し、きちんと反論していく必要があります。
裁判に発展する可能性も十分ありますので、交渉段階から、法的な検討も必要となります。
誓約書の有効性を争うべく自分で交渉するのは、おすすめできません。
「納得したからサインしたのではないのか。約束を反故にするのか、反省していないのか」などと反論されて、交渉の実が得られないことが予想されます。
交渉を弁護士に代行してもらうことで、精神的な負担を軽減することができるうえ、冷静な話し合いを試みることができますし、相手方が自ら弁護士へ依頼したり訴訟提起したりする煩わしさを避けて交渉に乗ってくる可能性も出てきます。
相手方に対し、「請求には一切応じられない」と回答することもありますし、無効などを主張しつつも妥当なラインでの合意を目指して減額交渉することもあります。
その点は、事実経緯を踏まえた弁護士の見立てや、それを踏まえたあなたの意向にもよります。
交渉がまとまる場合、最終的な示談書(合意書)の内容が不当になっていないかについてのチェックなども、弁護士が行います。
交渉がまとまらない場合、「違約金を払え」といった訴訟を提起される可能性が出てきます。
その場合でも、弁護士に依頼していれば、答弁書・準備書面の作成や、訴訟への参加(通常Web会議)、裁判官を通した和解交渉など、必要な手続きを全て任せることができます。
自分で書面を作成したり裁判所に出頭したりするよりも、時間や労力を大幅に削減することが期待できますし、正確な対応が可能です。
裁判前の任意交渉(示談)がまとまる場合、あるいは裁判上の和解がまとまる場合には、清算条項をいれた合意をすることになります。
「誓約書の内容は効力を持たない、この示談(和解)の中で約束したことだけが有効だ」ということで約束内容を明確にすることができ、最終解決が図れることになります。
弁護士に依頼すると費用はかかりますが、精神的な負担が軽減できること、窓口を弁護士に一本化できること、自分で交渉するよりも効果が見込めること、仮に訴えられても裁判官を介した交渉で妥当な内容で決着できる可能性が出てくること等も踏まえると、総合的に考えるとメリットが大きいと言えるでしょう。

Q1.不倫が発覚し、誓約書にサインするよう要求されています。サインするしかないのでしょうか?
A1.その誓約書の内容にもよりますが、サインすると往々にして不利な事態を招きますので、慎重に検討する必要があります。内容を見てサインを迷う場合、断るべきです。誓約書にサインせずとも、誠意を持って交渉することは十分に可能です。
Q2.誓約書で、慰謝料500万円を払うと約束しています。離婚しないときの不倫慰謝料の相場は100万円以下くらいと聞きました。高すぎるので減額できますよね?
A2.不倫慰謝料の相場というのは、あなたが何も約束していない状況で、かつ裁判所が判断するときの金額ですが、あなたの場合は誓約書があるので状況が違います。500万円という約束が本当に成立しているといえるのか、成立しているとして公序良俗違反・強迫などの無効・取消事由があるのかといった、「500万円の約束を果たす義務があなたに有るか無いか」という争いになります。あなたが請求されているのは「不倫慰謝料(不法行為による損害賠償)」ではなく、「誓約書に基づく金銭(示談契約による示談金)」だからです。
Q3.誓約書で、「交際相手には一切接触しない、接触したら300万円の違約金を支払う」という約束をしました。その後、交際相手からLINEメッセージが来て、返信したところ、約束違反だと指摘されてしまいました。何とかなりませんか?
A3.約束が有効であれば、基本的にはその金額を払う義務があることになります。もっとも、接触の内容等も一切問わずに300万円というのは疑義がありますし、支払を拒否して争う余地は十分あると思われます。約束違反の内容・程度を鑑みた多少の解決金を支払う内容で交渉してみることも考えられます。
Q4.誓約書で、「再度不貞したら一回ごとに300万円の違約金を支払う」という約束をしました。その後、不貞行為を3回してしまい、900万円の違約金の支払を求められています。どうしたらいいですか?
A4.約束が有効であれば、基本的にはその金額を払う義務があることになります。もっとも、相手方が900万円を回収するには訴訟提起→債務名義取得→強制執行という手順を踏む必要がありますし、満額回収可能か不確実だという思いがあるかもしれませんので、減額交渉に応じてくる可能性はあります。
Q5.相手方が激昂しており、話し合いにならず、責められ続けています。どうしたらいいですか?
A5.あなたは(正直な内心としては)渋々サインしただけかもしれませんが、相手方が「約束を破られた」と感情的になるのは、ある意味当然のことです。相手方の請求内容の妥当性を確認したうえ、妥当な部分についてはきちんと認めるということであれば、弁護士を介してその旨を申し入れて交渉してみるというのも一つの方法です。もちろん、相手方の請求内容に妥当な部分が全くないなら、要求に応じる理由はなく、場合によっては債務不存在確認訴訟を提起して争うという解決方向もありえます。
Q6.手元には資金がありません。分割交渉は可能ですか?
A6.弁護士から(減額を交渉したうえで)分割払いの打診をしてみることは可能です。ただし、厳しいことを言うようですが、あなたは一度約束を破ってしまっており、相手方の信用を既に失っている状況であることを忘れてはいけません。応じる条件として「支払いが遅れたら直ちに給与や預金を差し押さえることができるよう、公正証書にして欲しい」などと言われる可能性も高いです。それだけの重い責任を引き受けてでも分割払に応じてもらうのか、あるいは工面の努力をして(たとえば親戚から借りるなどして)一括で解決し、相手方との関わりを完全に切る(将来のリスクを消す)ほうがよいのか、諸状況を踏まえつつ慎重に検討すべきです。
誓約書には高額な違約金が定められていることが多いですが、そもそも約束が成立しているといえるのか、無効・取消事由はないか、本当に違反があったといえるのかなどの点で、検討・反論の余地があります。
検討の結果、相手方の請求に合理性が全く無い場合には、あなたとしては請求を完全に拒否し、もし相手方が訴えてきた場合には請求棄却を求めることになります。
場合によっては、あなたから債務不存在確認訴訟を提起する方法も考えられます。
相手方の請求に一応の合理性がありそうな場合でも、その金額は適切なのかといった点で争う余地がありますし、さらに相手方としては、あなたから違約金を現実に回収するには、最終的には債務名義取得→強制執行まで実行する必要があり、時間・費用がかかるうえ不確定要素も生じてきます。
そのため、相手方が交渉に応じてくる可能性はあります。
もっとも、あなた自身で話し合おうとしても、既に相手方から不信感を持たれており、交渉の糸口すらつかめないことが多いですので、弁護士を入れて対応すべきです。
弁護士に依頼すれば、相手方からの連絡は弁護士に入りますし、仮に相手方が誓約書違反の事実を家族に通告することを仄めかしていても、そうした行為をしないよう警告すれば控えてくるのが通常です。
弁護士を窓口にすることで、秘密を守りつつ平穏な日常を取り戻すチャンスも出てくることになります。
サインする前に、以下の3点を検討すべきです。
①約束の内容:何が禁止されているのか、何をしなければならないのか、誓約書の文言から具体的な内容を読み取ることができるか。
②公平性:約束を守ることでもたらされる相手方の婚姻生活の平和と、禁止される内容とのバランスはどうか。違約金や慰謝料は高額すぎないか。
➂実現可能性:誓約内容が現実的に実行可能であるか、無理な要求が含まれていないか。
例えば以下のような誓約書にサインするのは、極めて危険です。
・誓約書の内容自体が曖昧である
・過度に一方的な内容が含まれている
・禁止内容が広すぎて、すぐに違反が生じてしまう(違反を回避できない)
・違約金が高額すぎる
・退職や転職など大きな負担が生じる
女性が妻に差し入れる誓約書を例にとると、例えば以下のようなものです。
(例)
この例では、女性が妻に対し、不貞行為を行ったことについて謝罪や約束をしていることになります。
誓約書の内容としては、このように「不倫や交際をしない。違反したら違約金(違反金)を支払う」といったものが代表的です。
今回の不貞行為についての慰謝料が記載されていることもありますし、違反した場合の違約金だけが明記されていることもあります。
(「今回は慰謝料は請求しないが、違反したら請求する」といった趣旨)
その他にも、「今回の申告内容が正しいものだと誓う」「もし嘘があれば(妻が女性の)会社や所属部署に連絡しても異議はない」といった内容を見かけることもあります。
女性自身で自主的に考えた内容を誓約書に書くこともあるでしょうが、実際には、「妻のほうで誓約書の内容を準備・印刷しておいて、話し合いの場面で女性に提示し、サインさせる」といった流れのことも多いです。
(女性の立場でサインを拒むのは、心理的に事実上困難なことも多いでしょう)
したがって、誓約書には、違反時のペナルティやデメリットなどが明記されているケースが多いです。
もっとも先に述べたように、「女性と妻が示談書を締結する。その示談書の条項として、こうした謝罪や誓約が入っている。示談書には双方が署名押印する」という場合もあります。
その場合、それぞれの秘密保持義務(口外禁止)などを定めていることもあります。
示談書と誓約書を比較すると、示談書は妻と女性とで約束し取り交わす契約書ですが、誓約書は女性の約束だけが記載されているという点で違います。
例えば浮気した夫が、妻に「二度と浮気しない」「再度浮気したらマンションを財産分与として渡す」といった誓約書を差し入れることがあります。これはもっぱら夫婦間の問題ということになります。
誓約書を差し入れて改心を示した前提で婚姻を継続してきたのに、これを破ったのですから、離婚話が具体化する可能性があります。
離婚話が具体化すれば、配偶者の地位を失うことも含めた慰謝料(離婚慰謝料)の問題になってきます。
離婚慰謝料と、財産分与や養育費などは本来別の問題ですが、財産分与や養育費の増額により事実上慰謝料を支払ってもらう(あるいは慰謝料に上乗せしてもらう)、という話になる可能性もあります。
離婚はしないまでも、きちんと慰謝料(不倫慰謝料)を支払ってもらう、ということになる可能性もあるでしょう。
もっとも、誓約書の内容が不当なものである場合などは、その効力が認められないことがあります。
例えば、妻が「離婚したら子どもに絶対会わせない」といって夫がこれを承諾したとしても、子の福祉(父との交流で健やかに成長する利益)を害するもので正当とはいえないと判断される可能性が高いでしょう。
慰謝料額については、ある裁判例では、慰謝料1500万円及び連絡禁止の違約金1回あたり800万円という内容を一部無効としつつ、慰謝料を450万円としたものがあります(東京地裁、R4)。
夫婦間の誓約書の違反があっても、改めて誓約するなどして婚姻関係を継続することも事実上多いかとは思われます。
その場合でも、作成した誓約書は離婚協議や調停などにおいて重要な証拠となることがありますので、注意が必要です。
(監修:弁護士橋本俊之)
更新日:2026.2.22
参照:不倫で誓約書(念書)にサインしろと言われたら、どうしたらいい?
参照:不倫問題の示談書・合意書・誓約書などの役割を弁護士が解説
参照:不倫で示談書などを書かされた。内容に納得できない、どうしたら…
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