このコラムの監修者

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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
慰謝料コラム
目次

訴訟告知をごく単純に言うと、「こういう裁判をやっていて、今こういう段階になっています」というのを、裁判所を介して知らせることです。
不倫慰謝料請求問題との関係でいえば、「Aが不貞相手(=C)を訴えた。B(=Aの配偶者)に対して、Cが訴訟告知した」というのが典型的な例です(以下、この例をもとに説明していきます)。
なぜ訴訟告知をするのか、もし被告が訴訟告知をしたらどうしたらいいのか、自分が訴訟告知を受け取ったらどうしたらいいのかといった点について、以下解説していきます。

Cとしては、主に下記の理由から訴訟告知を検討することになります。
訴訟告知というのは、ある訴訟の当事者になっていない第三者に、その訴訟に参加する機会を与えるための手続きです。
先の例でいうと、Aが原告、Cが被告となって、この二人の間で裁判が行われています。Cと不貞したBは、もちろん不貞問題の当事者ではあるのですが、裁判の当事者にはなっていないのです。
(備考)もしAがBとCを相手に訴えた場合、Bも被告として裁判の当事者になっています。
もちろん、訴訟に参加する機会を誰にでも(誰彼とも無く)与えることはできませんので、訴訟告知できる人は限定されています。
こと不倫慰謝料請求の場面でいえば、「自分一人だけが不倫慰謝料を請求されてしまったという人が、『一緒に不貞した人』に対して、訴訟告知ができる」と理解すればよいと思われます(上記の例では、CがBに訴訟告知できる)。
これに対して、たとえば「AがCの母に訴訟告知する」「CがAの不倫相手に訴訟告知する」というようなことはできません。Cの母やAの不倫相手は、この訴訟の結末に対して法律的な利害関係がないからです。
Cは、「訴訟告知をして、一緒に不貞したBを訴訟に関与させ、自分に有利になるよう手続きを進めていきたい」と考えることがあります。
CがBに訴訟告知をすると、Bとしては、①その訴訟にA・Cどちらかの味方として参加する、②訴訟には参加しない、という選択肢があります。ですから確実に関与させることができるとまではいえません。
しかし、もしBが自分の味方として参加してくれれば、「もともと婚姻関係は破綻していた」という色々な情報・証拠を訴訟で明らかにしてくれるかもしれません。
あるいは、もしかしたら「CとBとが一緒になって●円を払う」という方向性に持ち込めるかもしれません。
すなわちCとしては、自分一人で払うよりも多額を用意できることになり、結果としてAとの和解がまとまりやすくなるかもしれません。
また、Aに慰謝料を支払った後でその一部をBに請求する(求償請求する)までもなく、ABC三者間で和解が成立して一挙に事件を解決できるかもしれません。
訴訟告知をすると、裁判の効力を第三者に及ぼすことができますので、Cが敗訴判決(慰謝料●円を払えという判決)を受けた場合のリスクをBに転嫁できます。
先の例では、裁判の当事者はあくまでAとCだけでした。そのままもし「CはAに200万円を支払え」という判決が出たとします。
その後にCがBに「200万円のうち一部を負担してほしい」と請求したとときに(求償請求したときに)、Bは「自分はその裁判に参加していなかったから、200万円と言われたって困る」と言えることになります。
しかしCがBに訴訟告知をしておくと、Bは(実際にその訴訟に参加していようといまいと)そのような反論ができなくなります。
すなわちCとしては、Bとの間で慰謝料額についての争いが生じることを事前に封じることができるわけです。

AとCとの判決の内容をそのまま受け入れ、後で女性から求償を受けたら淡々と応じよう、という方向です。
「Cと関係を持ってはしまったが、Aとの離婚は考えておらず、Cとは関係を絶つ」というような場合だと、AC双方の対立にあえて首を突っ込まず大人しくしておくというのはある意味賢明であり、この方向が選択される場合が多いように思われます。自分でCと不貞しておきながらわざわざAの味方をするため参加するというのは、BがCに対してよほど何か含むところがあるような場合ではないかと想像されます。
Aとの離婚を希望するような場合だと、あえてCの味方として訴訟に参加して、離婚実現の方向へ進めていくという選択肢が採られることもあります。
訴訟に参加することで一定の発言力が出てきますし、Cと協力して慰謝料減額を図ることができます。
(備考3)Bがこの訴訟の中で離婚を実現できるわけではありません。しかし慰謝料の点が解決できれば、別途の離婚手続きでの争点を一つ減らせることになります。

訴訟告知を受けたBが、①その訴訟に参加するのか、参加するとしてどちらの味方として参加するのか、②参加せずにおくのかが分かります。
そうすると、BがAやCとの関係を今後どうしようと考えているのかもある程度推し量れることがあります。
たとえばBがAと離婚したいような場合ならCの味方として訴訟に参加してくることが予想されますし、Cと関係を絶って婚姻関係を修復したいような場合なら参加せずにいることが予想されます。
Aとしては、それまでどおりCとの裁判を続けていけばよいだけです。訴訟告知があろうとなかろうと、Aにとっては特段関係はありません。
Bがどちらの味方として参加してきたのかにもよりますが、多くの場合はCの味方として、ではないかと予想されます。
そうすると、Bが、たとえば夫婦仲が悪かったとか、不貞が理由で離婚話になっているわけではないとかいうようなことを明らかにしてくるかもしれませんし、また、裁判官を介した和解交渉ではBを入れた三者間での解決が模索されるかもしれませんので、Cだけを相手にしていたときとは裁判の進め方が変わってくる可能性があります。
(備考2)端的に言って敵が増えるというマイナス面が出てきます。しかし他方で、Cには資力がなく回収困難と思っていたがBが慰謝料を払ってくれることになった、というようなプラス面も出てくるかもしれません。
もしBがAの味方として参加してきてくれたのであれば、Cが主張している不貞期間が実際には違う(ex.もっと昔から不貞している)といったようなことを明らかにしてくれるかもしれません。
なお、BがわざわざAの味方をするため参加してくるケースというのは少ないように思われます。AとBは婚姻関係にあるのですから、わざわざ訴訟に参加しなくても、事実上情報を伝えるなどしてAの味方ができるからです。もっとも、Bの同意により訴訟に関与してもらい三者間で和解することで、事件を一挙に解決したり(後でBがCから求償請求されることを防止する)、BにもCに接触しないと約束させたりすることも考えられます。
被告としては、一緒に不貞した人に訴訟への関与を求めたり敗訴判決のリスクを転嫁したりしたいということで、訴訟告知を検討する価値があります。
原告としては、特に訴訟告知を受けた人が被告の味方として参加してきた場合には、被告だけを相手にしていたときとは裁判の進め方が変わってくる可能性があります。
敵が増えるマイナス面もありますが、訴訟告知を受けた人が被告の資力を補ってくれるといったプラス面も出てくるかもしれません。
訴訟告知を受けた人は、訴訟に参加することもできますが、参加しなくても構いません。参加せずに原告被告間の判決が出たら、その内容を争うことはできなくなります。
「不貞相手が訴えられたので、原告の配偶者(=被告の交際相手)に訴訟告知した」という典型例でいえば、訴訟に参加するかどうかは、原告との婚姻関係をどうしたいのか(修復したいのか離婚したいのか)で変わってくることが多いと思われます。
当事務所では訴訟告知を利用して解決していった実績があります。「不倫慰謝料請求で自分一人だけが訴えられてしまった」「訴訟告知が自分に届いており、被告の味方をしたい」という方は、一度ご相談いただくことをお勧めします。
このコラムの監修者

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