不倫・不貞行為の慰謝料の相場はいくら?弁護士が詳細を解説します | 慰謝料請求に強い弁護士

  • 0358354050受付時間 平日9:00~20:00
  • お問い合わせ
新型コロナウイルス対策オンライン面談・電話相談 実施中

慰謝料コラム

不倫・不貞行為の慰謝料の相場はいくら?弁護士が詳細を解説します

不倫・不貞行為の慰謝料の相場(はじめに)

既婚者との不倫関係が発覚すると、不倫・不貞行為の慰謝料を請求される可能性が出てきます。

「相場はどれくらいなのか」「いくら請求が来るのか」と不安な悩みを抱える方も多いでしょう。

不倫慰謝料は、一体どれくらいの額になるのでしょうか?

 

結論から言うと、不倫・不貞行為の慰謝料の相場(過去の裁判例や和解内容の大体の傾向)は、50万円~300万円程度です。

相場の中身を細かくみると、相手方の離婚・婚姻破綻が無い場合は100万円以下ぐらいで、有る場合は200~300万円程度です。

これらは一応の相場であり、あなたにとって有利に働く材料を主張立証(証明)していくことによって、減額を実現していくことになります。

 

もっとも、「不倫慰謝料を請求するときは、相場の範囲内で請求しないといけない」という決まりはありませんので、請求額>相場となっていることもよくあります。

さらに、上記の相場は裁判所が不倫慰謝料額を判断する場合のものですので、例えば「どうしても訴えられたくないから金額を上積みしてでも示談する」という選択をするような場合は、相場を超える額での解決となる可能性もあります。

 

また、請求されるものは不倫慰謝料だけとは限らず、合わせて経済的損害(調査費用など)が認められる場合もあります。

慰謝料の相場は重要ですが、それだけに気を取られていてはいけません。

以下、詳細を解説していきます。

 

 

不倫・不貞行為の慰謝料を決める要素

裁判所が不倫・不貞行為の慰謝料を決める際には、その事案におけるいろいろな個別要素・事実を考慮します。

減額実現に向けて、使える要素(減額材料)をできるだけ多く探すことが、重要となってきます。

主な要素を整理すると、以下のようになります。

婚姻関係に関するもの

(1)裁判で事実上重要視されている要素は、交際相手と相手方とが離婚したのか否か(婚姻破綻の有無)です。

不倫・不貞行為の結果として離婚(婚姻関係の破壊)があった場合には、相手方の受けた精神的損害(苦痛)は相対的に大きいものと判断されます。

一方で、不倫・不貞行為があってもその後婚姻関係が破壊されていない場合には、婚姻生活の平穏の侵害や精神的損害も相対的に小さいものと判断されるからです。

 

そもそも不貞行為よりも前に、もとから夫婦関係が破綻していた場合(元から離婚に向けて別居していたような場合)には、慰謝料支払義務はありません。

また、破綻とまでいえるかはともかく夫婦関係が相当悪化していた場合には、慰謝料を減額する有利な要素・材料となってきます。

逆に、不貞発覚後も相手方と交際相手が同居を継続している(婚姻関係の破綻がない)ことは、慰謝料を減額する有利な要素となってきます。

 

(2)離婚等したかどうか以外の婚姻関係に関する事情にも、影響してくる要素はあります。

例えば、相手方と交際相手との婚姻関係が短いこと、未成熟子(経済的に独り立ちしていない子ども)がいないことは、慰謝料を減額する有利な要素となってきます。

 

(3)以上まとめると、例えば以下のようなものは、慰謝料を減額する有利な要素となってきます。

  • 元々破綻していた
  • 不倫・不貞行為発覚後も、離婚・破綻はしていない
  • 相手方と交際相手との婚姻関係が短い、未成熟子がいない

 

逆に言えば、例えば以下のようなものは、慰謝料を増額する不利な要素になってきます。

  • 不倫・不貞行為によって離婚した、婚姻関係が破綻した、別居した
  • 婚姻関係が長い、未成熟子がいる

不倫・不貞行為に関するもの

(1)交際相手が既婚者であると知らなかった(独身だと思っていた)、知らなかったことに過失(落ち度)はないという場合、慰謝料は発生しません。

不倫慰謝料を支払う義務があるのは、既婚者だと知っていたときか、知らなかったことに過失があるときです。

なお、過失がある場合というのは、配偶者がいるのではないかと疑うことが可能な場合、例えば、交際相手が結婚指輪をしている、LINEのプロフィール画像などで家族の写真を使っている、異性と同居している、といったような場合が考えられますが、最終的にはケースバイケースの判断となります。

 

(2)既婚者だと知って不倫した場合でも、不倫期間が短い、不貞行為(性交渉)の回数が少ない、頻度が低い、関係解消済である、といった場合には、そうでない場合と比べて、悪質性が少ないという評価に繋がります。

そのため、こうしたそれぞれの事情は、慰謝料を減額する有利な要素・材料になってきます。

例えば、期間が1年以下である、不貞行為が数回にすぎない、といった場合です。

 

(3)不倫・不貞関係を主導していたのは交際相手であり、あなたは従属的な立場であったということも、減額要素として考慮してもらえる可能性はあります。

ただしこの点については、裁判所に考慮してもらえることもありますが、考慮してもらえないこともあります。

もし裁判所が後者の判断をする場合は、「相手方に慰謝料の支払いをしたちゅう後で、あなたから交際相手に対して求償請求を行い、その中で、どちらの責任が大きかったのかについて決着をつける」ということになります。

 

(4)以上まとめると、例えば以下のようなものは、慰謝料を減額する有利な要素となってきます。

  • 既婚者であると知らず、知らなかったことに過失がない
  • 不倫期間が短い、不貞行為の回数が少ない、頻度が少ない
  • 関係解消済

 

逆に言えば、例えば以下のようなものは悪質性が高いと評価される可能性があり、慰謝料を増額する不利な要素になってきます。

  • 不倫期間が長い、不貞行為の回数が多い、頻度が高い
  • 不倫を継続している、関係解消を約束したのに再開した

 

(5)なお不倫・不貞行為の悪質性という観点からは、妊娠、中絶や出産があったケースが、しばしば問題になります。

こうした事情がある場合の方が、ない方に比べて、相手方に与える精神的ショックは大きくなってきます。

そのため、これらは、慰謝料を増額する不利な要素になってきます。

その他

(1)例えば以下のようなものは、慰謝料を減額する有利な要素になりえます。

  • 不倫・不貞行為について、謝罪、反省を伝えた
  • 相手方が不倫・不貞行為を黙認していた
  • 相手方が交際相手に対して慰謝料を請求していない

 

このうち、交際相手に慰謝料を請求していないという点は、前述の主導性の点と同様、裁判所によって判断が分かれるところです。

もし裁判所が減額材料として考慮してくれない場合には、「相手方に慰謝料を支払った後で、交際相手に対する求償請求(求償権の行使)を行い、その結果として公平な負担を実現する」ということになります。

 

(2)逆に例えば以下のようなものは、慰謝料を増額する不利な要素になってきます。

  • 不誠実な態度を取った、不合理な弁解をした

 

(3)なお、既婚者同士の不倫(ダブル不倫、W不倫)の場合、四者ゼロ和解が成立することによって、慰謝料がゼロに減額される可能性はあります。

ここでいう四者ゼロ和解は、あなたとその配偶者、交際相手、相手方の四人で、あなたの相手方に支払う慰謝料と交際相手があなたの配偶者に払う慰謝料とをそれぞれゼロにする、という内容で和解(示談)することです。

あえて言うと「獲得する慰謝料と支払う慰謝料とを(夫婦単位で)相殺する」というような状況ですが、言うまでもなく四人全員がその内容で一致する必要がありますので、その準備段階であなたの配偶者にダブル不倫の事実が発覚する(伝わる)ことになりますし、四人の足並みが揃わず最終的合意に至らないこともしばしばあります。

 

参照:ダブル不倫の慰謝料を請求されたら?相場と対処方法の解説

不倫慰謝料として請求される額>相場

既に述べたとおり、請求される額(請求額)が相場の範囲内になっているという保証はありません。

相場の範囲内のように見えても、あなたにとって有利な事情が考慮されておらず、その結果「今回の事情に照らせば高額過ぎる」という場合もあります。

重要なポイントは、不倫・不貞行為の慰謝料を請求されたら、「相場を超える額ではないか」と疑ってみるべきだ、ということです。

 

不倫慰謝料の請求が弁護士から来た場合、当事務所の経験上では、おおむね200万円以上の額(300~500万円程度)を請求されているケースが多いです。

相手方本人から来た場合は様々で、数十万円程度のこともありますが、1000万円程度を請求されることもあります。

さらには不倫慰謝料とは別の費用として、調査費用などをあわせて請求されることもあります(詳細は後述)。

 

慰謝料の請求額がいくらになっていようと、それは相手方が妥当と考えている額に過ぎません。

相場以下の適正な額で解決するために、減額交渉をしていくべきです。

場合によっては「請求額自体が相場以下のようだし、これで解決できるなら構わない」と考える場合もあるでしょうが、その場合にも、注意すべきことがあります(次項参照)。

慰謝料請求額≦相場の場合、示談すべき?

相場以下の金額になっていて納得できるのなら、そのまま示談に応じるというのも一つの方法です。

ただし、「相場を超える額で請求せず、相場以下で請求してきたのは何故なのか」というのは、疑ってみてもよいでしょう。

その点はもちろん推察するしかありませんが、例えば、あなたに弁護士をつけさせず(=深く検討させず)早期に解決したいということも、一つの理由としては想像できます。

有利な事情が考慮されていない可能性

相場以下に見えても、あなたにとって有利な事情が考慮されていない可能性があります。

「そもそも不倫より前から婚姻関係が破綻していた」「食事に一回行っただけで、肉体的接触は一切無い」といったような場合であれば、そもそも慰謝料支払義務は無いかもしれません。

「交際相手からの情報によると、相手方は3年以上前に探偵を付けて不貞を知っていたようだ。その後一切関係を持っていない」という場合なら、慰謝料支払義務の時効消滅を主張できる可能性もあります。

(不貞から20年経つケースはともかく、知ってから3年が経っており時効というケースは、まま見受けられる事態です)

示談書の取り交わしが無い可能性

双方に弁護士がついていない場合、示談書を作成せずに話を進めてしまうことがあります。

例えば、口頭で100万円と決めて振込むような場合です。

示談書がないと、そもそもどういう内容で合意したのかが分からなくなりますし、その100万円を支払えば追加の請求は無いという保証もありませんので、後に紛争に陥りやすく、あなたとしては極めて危険な状況に置かれてしまいます。

 

参照:不倫慰謝料の示談書

 

参照:示談書なく口約束で不倫慰謝料を支払って大丈夫?

 

示談後にリスクがある可能性

示談書の内容は、慰謝料を請求する相手方のほうで原案を作ることが通常です。

示談書には、例えば、「慰謝料30万円を支払う」というほかに、「理由の如何を問わず、一切接触しない。違反した場合には1回あたり500万円の違約金を支払う」といった条項が設けられていることも多いです。

「30万円で済むなら構わない」と思ってその内容で示談し、解決したと思っていたら、後になって、接触禁止違反の違約金として500万円(×違反回数)を請求されてしまう可能性があるわけです。

 

上記の例では、違反の内容が不貞行為(性交渉)であろうとメッセージのやりとりであろうと、そこは一切関係なく「1回あたり500万円」とされています。

もし相手方が悪意を持っていれば、例えば、交際相手のアカウントからあなたに連絡し、あなたがうっかりそれに応答したら、これ幸いと500万円を請求してくるかもしれません(メッセージを3回送っていれば1500万円を請求してくるかもしれません)。

その請求に対して争う余地はありますが、そもそもそういった請求を受けないようスキを見せない対応をすること、相場以下の提案が来たらまずは疑って、「この内容で示談して、本当にきちんと解決できるのか」を慎重に検討することが、極めて重要です。

不倫慰謝料に加えて請求されるかも!

不倫・不貞行為が発覚して請求される可能性があるのは慰謝料だけではない、というのは、非常に重要な注意点です。

金銭でいうと、慰謝料(精神的損害の賠償)以外にも、調査費用、弁護士費用相当額など(経済的損害の賠償)を請求される可能性があります。

詳細は後述しますが、調査費用が最終的に認められるかどうかは裁判官によって判断が異なっており、弁護士費用相当額については、判決となる場合には「損害額の10%」が認められることが通例で、認められるものを計算した合計が最終的な損害額(賠償額)になります。

 

さらには、金銭とは別のことを請求されることもあります。

例えば、「交際相手に接触するな」という内容はしばしば見受けられます(接触禁止)が、このような金銭以外の事柄は、法的に強制されるような内容ではありません。

相手方からの請求内容は、①金銭請求と金銭以外の請求を分ける→②金銭請求は慰謝料とそれ以外に区別する、という形で整理すると、把握しやすくなります。

 

以下では、慰謝料以外の金銭的請求→金銭以外の請求、という順で見ていきます。

調査費用

調査費用というのは、探偵や興信所への依頼費用のことです。

相手方が実際に支出する金額は、数十万円程度のこともありますが、数百万円以上のこともあります。

(調査、尾行の時間・日数や担当者の人数などによります)

 

調査費用が発生している場合には、不倫慰謝料とあわせて請求されることが多いです。

(例)「慰謝料は300万円を下らない。調査費用が150万円発生した。ついては450万円を支払え」

 

もっとも、調査費用と明示されずに、事実上慰謝料の中に組み込まれて請求されることもあります。

この場合はもちろん、調査費用が発生しているのか、金額がいくらなのかは、直ちには分かりません。

(例)「慰謝料450万円を支払え」

 

調査費用を支払う義務があるかどうかは、裁判官によって判断が分かれています。

あなたとしては当然、「調査費用は相手方自身が支出すべき費用であり、賠償義務は無い」と主張して争うべきです。

 

仮に、調査費用を支払う義務があるとされる場合であっても、相手方の支出した調査費用全てについて当然に支払義務がある、というわけではありません。

裁判官が必要かつ相当と認定する範囲に留まります。

したがって、この点で反論することも必要です。

弁護士費用

相手方が、あなたに対する慰謝料請求を弁護士に依頼する場合、そのための費用を支払うことになります。

裁判になる前の示談交渉時点において「相手方弁護士が、実際の弁護士費用の額を、不倫慰謝料とあわせてそのまま請求してくる」というケースは、まず無いと思われます。

ただし「相手方弁護士が、不倫慰謝料とあわせて、弁護士費用の相当額を請求してきた。その額は慰謝料の10%になっている」といったケースはありえます。

 

示談交渉がまとまらず訴訟に移行する場合には、原告(相手方)が、損害の10%を弁護士費用相当額として請求してくることが多いです。

(例)訴状の中で、慰謝料300万円、調査費用150万円、弁護士費用相当額45万円、合計495万円の請求が記載されている。

 

これは、不法行為の損害賠償請求が判決で認容される場合には、認容額(損害額)の10%が弁護士費用相当額として認められるという取り扱いが多いからです。

示談交渉の時点では弁護士費用相当額を請求されていないが、訴訟に移行する時点で増額してくる、という場合もよくあります。

(例)内容証明で不倫慰謝料500万円を請求された。訴状では、弁護士費用相当額を含め、550万円になっている。

その他の金銭的請求

不倫・不貞行為の慰謝料を相手方本人から請求される場合、他にもいろいろな内容の費用が請求されることもありえます。

「交際相手とあなたが一緒に乗った車なんてもう乗れない。車の買い替え費用を出せ」「不貞がなければ引っ越すこともなかった。引っ越し代を出せ」というようなものです。

もっとも、裁判所でこうした費用の賠償が認められる可能性は高くはない、と考えられます。

金銭的請求についての補足

ちなみに、示談や和解の場合に問題になるのは、項目というよりは総額と支払条件(支払方法)のほうかと思われます。

たとえば「総額150万円、一括払い」で話し合いがまとまる場合、「解決金150万円」という名目にされることも多いです。

その150万円の内訳が「慰謝料150万円+調査費用0円」なのか「慰謝料100万円+調査費用50万円」なのかというのは、一般論としては、双方ともそれほど強い関心を有していないものと思われます。

 

判決の場合は、判決書の主文で「被告は原告に対し、150万円を支払え」というように記載されます。

主文の後に書いてある判決理由を読めば、150万円の内訳が分かります。

金銭以外の請求

(1)典型例は接触禁止、例えば、「面会、電話、LINE、メールなど方法の如何を問わず、今後一切夫(妻)と連絡しない」といった約束を請求されることも多いです。

それ以外にも、直接謝罪しろ、不倫の経緯を説明しろ、といった請求もありえますし、職場での不倫の場合、勤務先を退職しろ、異動しろ、といった請求が含まれることもあります。

なお、こうした直接謝罪等の請求がなされるケースは、相手方に弁護士がついていない場合がほとんどです。

 

参照:接触禁止文言とは

 

参照:不倫・不貞行為で会社を辞めろと要求されたら?

 

(2)口外禁止、例えば、「この請求のことを夫に告げるな」「第三者に口外するな」といった請求も、しばしば見受けられます。

「不倫中の写真や動画を廃棄しろ」「廃棄済みであると誓約しろ」というような請求を目にすることも多いです。

これらは、写真や動画の流出によるトラブルを防ぐという趣旨であると考えれば、口外禁止の一種ということになります。

 

(3)求償権放棄、すなわち「支払った慰謝料を夫に請求するな」と請求されることも多いです。

不倫・不貞行為の慰謝料は、法律上は「2人でした共同不法行為についての損害賠償義務」ですので、本来ならば、支払った慰謝料の一部を交際相手に請求する権利があります(求償権)。

その権利を放棄する場合、「慰謝料は全て自分の財布から負担する」ということになります。

 

参照:求償権とは

 

(4)違約金、すなわち「『接触禁止等の約束に違反した場合には違約金を払う』と約束しろ」という請求がなされることも多いです。

あなたとしては、約束違反があった段階で違約金支払義務が発生してくるわけですから、非常に危険な内容の約束です。

約束の内容が広すぎる・あいまいであるとか、違反の内容に対して違約金の額が高額すぎるということも、しばしば見受けられます。

 

金銭以外のこうした請求は、法的に強制されるものではありません。

とはいうものの、特に接触禁止や違約金の請求を単純に断った場合には、「今後も交際を続けるということなのか」「違反するつもりなのか」と言われかねません。

そのため、どのように対応すべきか、慎重に検討する必要があります。

慰謝料請求額=相手方の希望額

相手方が請求してくる額は、あくまで希望額にすぎません。

相場に沿っているとは限りませんし、あなたが支払わなければならない本当の額とも違います。

あなたとしては、相場を踏まえた減額交渉をしていき、場合によっては裁判所の手続きを利用して減額を実現していくことで、正当な利益を守ることが重要です。

相場を踏まえた減額交渉

あなたにとって有利な事情も考慮したうえで、相場を踏まえつつ減額交渉をすることが重要ですが、「相場より高いから下げろ」というだけでは、効果的な交渉にはなりません。

相手方に弁護士がついている場合には、訴訟提起をちらつかされて押し切られることも多いですし、弁護士がついていない場合でも、「減額を要求するなんて、本当に反省しているのか」などと反発されて抵抗しきれなくなる、ということも多いです。

むしろ、あなた自身が「相場を超える額や不適切な内容では示談しない。場合によっては法的解決も辞さない」という覚悟を決めて交渉にあたることが、「相場を踏まえた減額交渉」です。

裁判所を利用した減額実現

不倫・不貞慰謝料問題が裁判所に持ち込まれると、双方の話し合いがまとまれば和解成立で、まとまらなければ裁判官が判決を下すことで、解決がもたらされます。

和解の場合には裁判官が「原告被告双方とも、この金額で検討してほしい」と提案してくることが多いですし、判決の場合には裁判官の判断した金額が記載されますが、これらの金額は、相場を参考にして決められます。

したがって、裁判手続きを利用する=和解・判決によって解決することによって、相場・合理的な水準までの減額実現が期待できます。

不倫慰謝料の相場についてのよくある質問

Q 法律事務所からの請求です。相場ですよね?

法律事務所(弁護士、弁護士法人)から請求が来ているからといって、その額が相場の額であるということではありません。

その額は、相手方本人が請求したい額、相手方弁護士とで相談して決めた額、というだけです。

相手方弁護士があなたにとって有利な事情(=相手方本人にとっては不利な事情)を全て把握しているとは限りませんし、もし把握していたとしても、請求額を小さくする形で算定しているとは限りませんので、あなたとしては「反映されていない、相場とは限らない」とさしあたり理解したうえで、自分の弁護士の法律相談を受けるべきです。

Q 相場で示談させることはできますか?

あなたにも相手方にも示談する義務はありませんので、相手方が納得していない内容で「示談させる」ということは、できません。

一方、裁判の判決が確定すれば、相手方が納得していない内容でも、それで法的には解決となります。

したがって、例えば、相手方があなたの退職、接触禁止や膨大な違約金にこだわっており妥協点を見いだせないような場合には、判決で解決する方が適当なこともあります。

 

判決では、損害賠償義務の有無とその金額しか問題にならないという特徴があります(お金の話だけ)。

あなたが訴訟の手続きを利用する価値・有効性は、この点にあります。

もちろん、あなたとしても、内心納得していない金額でも、確定判決には従う義務があります。

Q 相場を下回る額まで下げることはできますか?

できることはあります。大きく分けると、①話し合いの駆け引きで可能となる場合、②特別事情の存在により有利な判決をもらうことが可能な場合があります。

①例えば、相手方に訴訟のデメリット(弁護士費用の負担が発生したり長期化したり等)を理解させて譲歩を勝ち取れる場合や、こちらが接触禁止等を受け入れる代わりに相手方には更なる減額に応じさせて和解に至る場合、既婚者同士の不倫(ダブル不倫)で四者ゼロ和解が成立する場合、などがあります。

②判決では、例えば、不倫が原因ではなく元々破綻していたと認められた場合や消滅時効の主張が認められた場合には慰謝料はゼロとなりますし、交際相手が慰謝料を支払済みであるとか慰謝料を含める趣旨で財産分与の額を取り決め支払済みであると認められた場合には、その分減額が認められます。

 

示談・和解の駆け引きにおいても、こうした特別事情の存在があれば有利になってきます。

Q 相場に下げてこず協議が進みません。どうしたらいいですか?

訴訟に委ねるか、消滅時効を待つことになります。

訴訟は、原則として相手方から訴えてくる形になりますが、例外的にあなたから訴える形もありえます(債務不存在確認訴訟の提起)。

示談交渉が終了し、その後法的手続きが取られないままであれば、3年経てば時効期間満了、時効援用により慰謝料支払義務は消滅します。

 

参照:不倫問題と債務不存在確認訴訟(用語集)

 

Q 相場以下のようです。支払っても大丈夫ですか?

示談書が作成されない場合や示談書の内容が不合理・不利な場合もありますし、大丈夫と軽々しく言えるものではありません。

相手方がその金額を回収して完全に満足するとは必ずしもいい切れませんし、あなたの方は「支払ったから解決だ」と思っていても、相手方の方が解決とそぐわない行動を実行してきたり紛争が続いたりする可能性もあります。

言質を取られたり支払ったりする前に、すみやかに弁護士の法律相談を受けて、アドバイスをもらうことをおすすめします。

不倫・不貞行為の慰謝料の相場(まとめ)

この記事では、不倫・不貞行為の慰謝料の相場を紹介してきました。

大枠の相場は50万円~300万円程度で、相手方の離婚・婚姻破綻が無い場合は100万円以下ぐらい、有る場合は200~300万円程度です。

 

もちろん、これはあくまで大まかな目安で、実際には、個別事案における諸事情が考慮されます。

離婚等があっても、不倫慰謝料支払義務を否定できたり低額に留めることができたりする場合もあります。

逆に離婚等がなくても、不倫期間が長期であったり子供を妊娠・中絶したりした場合などは、相対的に高額になる可能性もあります。

 

不倫慰謝料だけにどうしても注意が向きがちですが、実際には、調査費用や弁護士費用相当額を請求されることもあります。

こうした経済的損害が、最終的な損害賠償額の計算にあたり加算されてくる可能性があることにも、注意が必要です。

 

ただいずれにせよ、相手方からの請求額が相場より高かったり、負担するいわれのない費用が上乗せされていたりすることは、よくあります。

あなたに有利な事情を集めて反論していき、減額交渉をしていくべきです。

減額交渉がまとまらない場合、裁判所を通じて減額を図ることも重要です。

(裁判所は、相場を参考にして解決するから)

 

そのためには、弁護士のサポート・アドバイスを得て減額交渉するのがベストです。

弁護士に依頼すれば、あなた自身で相手方と直接話して示談交渉を進める必要はなくなりますし、裁判を駆使して減額を試みたりすることができます。

あなた1人で相手方に対抗するよりも、減額できる可能性が高くなってくるでしょう。

 

参照:不倫慰謝料、一体いくら減額できる?減額交渉を有利に進める戦略ガイド

 

参照:弁護士に依頼するメリット(請求された側)

 

更新日:2025.7.30

このコラムの監修者

  • 橋本 俊之
  • 秋葉原よすが法律事務所

    橋本 俊之弁護士東京弁護士会

    法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。

その他のコラム

  • 不倫慰謝料を請求された

不倫慰謝料請求調停の連絡が裁判所から届いたら?

はじめに 「不倫慰謝料を請求されて話し合っていたが、その件で調停を申し立てられたという手紙が裁判所から届いた。どうしたらいいの?」 そういうご相談がたまにあります。 裁判所からの連絡(「不倫慰謝料調停の期日に来てください」という呼出状)は放置していいのでしょうか?不倫慰謝料調停には一応行くべきなのでしょうか? 結論をいえば、自分自身で不倫慰謝料調停に行くメリ・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

示談書なく口約束で不倫慰謝料を支払って大丈夫?

示談書を作らず口約束で済ませると、後で争いが生じたりする可能性があるため望ましくありません。交渉結果をきちんと示談書にまとめてから支払うべきです。

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求したい

別居中に堂々不倫する夫。不倫相手に慰謝料請求するときは?

はじめに 「別居して冷却期間を置いているつもりだったが、いつの間にか夫が他の女性と堂々と交際しているようだ」といったケースもあります。 まだ籍を抜いていないのに、夫は夫婦関係が終わったものとして行動しているわけです。 こうした場合の不倫相手への慰謝料請求は、別居していることの影響を検討する必要があります。 前提知識:破綻後の不貞…慰謝料支払い義務なし 既婚者・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

肉体関係がなければ不倫慰謝料を払う義務はない?

はじめに 「肉体関係はないから、不倫慰謝料(不貞慰謝料)を払う義務もないですよね?」 そのようなご質問を受けることがあります。 確かに、不倫慰謝料を支払わなくてはいけない典型的なケースは肉体関係がある場合です。 しかし、「肉体関係がなければ慰謝料を支払う義務はない」とは限りません。 婚姻関係を破綻に至らせるような接触→慰謝料の可能性 不倫慰謝料請求は、民法の・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

不倫バレして誠意を見せろと言われたら?

「誠意を見せろ」などと抽象的な要求を受けたとき、要求を具体的に特定せず進めてしまうと、後から追加で請求を受けてしまうなど重大な不利益を被ってしまう可能性もあります。

詳しく見る
  • その他

貞操権侵害の慰謝料とは?相場と対処方法についての知識を解説

貞操権侵害の慰謝料と相場は? 貞操権とは、一言でいうと「性的関係を持つか持たないかを決める権利」「性的なことがらについての自己決定権」です。 (民法で定義があるわけではありません)   貞操権侵害で慰謝料が認められるのは、「既婚者なのに独身だと騙して肉体関係を持ち、結婚前提で交際していた」という場合が典型です。   貞操権侵害の慰謝料の相・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

離婚合意後に不貞行為の慰謝料を請求された!?対策等を弁護士が徹底解説

「離婚するって聞いていたのに、奥さんから突然、不倫慰謝料を請求する内容証明郵便が届いた…」 「離婚で合意済のはずなのに、不倫慰謝料を支払わなければいけないの?」   「離婚に合意している」「離婚する」と聞いて交際していたら、その交際相手の配偶者から突然慰謝料を請求された、というケースがあります。 交際相手の言葉を信じていただけに、裏切られたような気・・・

詳しく見る
  • その他

不倫がバレるきっかけ、トップ3は?

はじめに そもそもどんなきっかけで、不倫がバレるのでしょうか? 不倫がバレたきっかけを当事務所のご相談内容から分析すると、トップ3はつぎのとおりでした。 ①交際相手が配偶者にスマホなどを見られた ②不倫を問い詰められた交際相手が認めた ③交際相手と一緒にいるところを探偵に撮られた ①交際相手がスマホなどを見られた… 知られたかもしれない情報 交際相手とのやり・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

不倫慰謝料をいくら払える?法律事務所から回答書が届いたら

回答書が同封されていることも 回答書=不倫慰謝料額などの希望を回答する書面 「回答書」というようなタイトルの書面が不倫慰謝料請求の通知書と一緒に同封されていて、法律事務所へ返送するよう求められることもあるようです。 (便宜上、以下では回答書の呼び方で統一します) 「不倫慰謝料をいくらなら払うつもりがあるのか、どういう形で払えるのか(一括、分割)を教えてほしい・・・

詳しく見る
  • その他

浮気相手と交際解消したい、縁を切りたい…

浮気はしたけれど、解消したい… 「浮気相手との交際を解消したい。浮気のことは妻(夫)に打ち明けて許してもらった。 今後は夫婦関係をやり直していきたいので、浮気相手との縁を切りたい。弁護士に間に入ってもらいたい」 このようなご相談を頂くこともあります。 (備考)AB夫妻のうち浮気したのがB、その配偶者がA(=不倫慰謝料を請求できる人)、Bの浮気相手がC(=不倫・・・

詳しく見る
離婚のご相談 Consultation
03-5835-4050