このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
慰謝料コラム
目次
不倫と一言でいっても、実際には色々な交際の形があります。
一夜限り、セフレ関係、結婚(再婚)前提のお付き合い、すでに同棲中、…etc。
いずれにせよ、不倫であなたの妊娠が発覚したなら、今後のことを真剣に考えて対処する必要があります。
今回は、不倫で交際相手の子を妊娠するとどういう問題が出てくるのか、交際相手の妻(=相手方)から請求される不倫慰謝料はどうなるのか、を解説していきます。
「えっ、まさか…」
不倫での妊娠は、望んだ結果ではない、という場合が多いでしょう。
妊娠が突然発覚して気が動転し、何から手を付ければよいか分からないかもしれません。
言うまでもありませんが、まずは妊娠が確実なのかを病院で確かめましょう。
不倫で妊娠すると、色々な問題が出てきます。
妊娠確実なのであれば、それらにどう対応するのかを、考えていかないといけません。
人工妊娠中絶とは、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」に、人工的に胎児を母体外に排出することです(母体保護法2条)。
その時期は、通常妊娠満22週未満とされています(厚生労働省の通知)。
ただしこの期間なら自由に中絶できる、という意味ではありません。
以下の場合には、本人及び配偶者の同意を得て、指定医師が人工妊娠中絶を行うことができます(母体保護法14条)。
法律の内容だけを見るとかなり厳しいようにも見えますが、実際はそうでもないようです。
詳細は指定医師(中絶手術をして良いという指定を医師会から受けている医師)にご相談ください。
人工妊娠中絶には「本人及び配偶者の同意」が必要です。
母体保護法14条に、はっきりそのように規定されています。
「中絶同意書にサインをもらってきてください」
医師からはそのように言われるでしょう。
「交際相手に書いてもらえばいい?」
「自分の夫からサインをもらわないといけないの?(ダブル不倫)」
「誰からもサインをもらえない、どうしたら?」
色々悩ましい場面に遭遇するかもしれません。
中絶同意書のサインをどうすればいいのか。
中絶手術の依頼を考えている指定医師に相談しましょう。
子宮内容物を掻き出す方法や吸い出す方法。
日帰り手術。
人工的に陣痛を起こし流産させる方法。
数日間入院。
役所へ死産届を提出し、埋葬許可証をもらう必要があります。
原則として健康保険は使えません。
12週以後の場合は入院費用もかかります。
(詳細は指定医師にご相談ください)
かかった費用は、父(=交際相手)と母(=あなた)とで折半するケースが多いと思われます。
出産する場合、認知が問題になります。
あなたが単身者なら、交際相手に認知してもらうことによって、父子の関係が発生します。
交際相手の戸籍にも、子のことが載ってきます。
認知されるまでは、生まれた子は父なき子なのです。
あなたが既婚者の場合、話が違ってきます。
生まれた子は夫の子だと推定されます(民法772条)。
なお夫には、「自分は父ではない」と争う手段は残されています。
交際相手の認知があると、父子関係が発生します。
交際相手に対して、養育費を法的に請求できることになります。
「生んでも育てられない。中絶して、関係も解消する」
「年齢的に出産したい。関係は終わりにするが、養育費だけは払って欲しい」
事実上多いのは前者の選択肢でしょうが、後者の選択肢もありえます。
交際継続する=不貞関係が続く限り、不倫慰謝料を請求される可能性が続くことになります。
不貞期間が長くなり、不倫慰謝料額の増額要素となってもきます(後述)。
その可能性を断ち切って交際関係を安定させるには、交際相手にきちんと離婚してもらうしかありません。
交際相手に子を認知してもらったとします。
相手方が自分の戸籍を見ると、夫のところに認知のことも載っています。
夫があなたに子を産ませた=不貞(性交渉)があったことも、知ることになります。
中絶を知られた場合でも、「妊娠してしまうような性交渉があった」と知られることになります。
こうなると相手方は、交際相手との離婚を希望するかもしれません。
交際相手のほうも、あなたの妊娠等を知って、いよいよ離婚話を進めていく可能性があるかもしれません。
ただし交際相手は有責配偶者です。
不倫を知った相手方に離婚を拒否されると、離婚実現は難しくなってきてしまいます。
あなたも既婚者なら、あなたの側の離婚問題も出てきます。
夫に「自分の子ではなかった」とバレたような場合、なおさらです。
不倫慰謝料を、相手方から請求されてしまう可能性も高くなってきます。
妊娠した場合、これからどうするのか相談したり、中絶費用のことを話し合ったり、交際相手とやり取りをする機会が増えます。
交際相手も、あなたが妊娠したことを知って、少なからず動揺しているでしょう。
交際相手の様子がおかしいのを見て、相手方が不倫に気づくかもしれません。
単なる不倫にとどまらず、あなたが妊娠までしたことを知れば、相手方の怒りもかなり強くなってくるでしょう。
不倫慰謝料の額は、どうやって決まるのでしょうか?
次のような要素が考慮されて、裁判官が決めることになります。
不倫で妊娠した場合、それ以外の事情が同じなら、不倫慰謝料の額が高額になりがちです。
「夫が他に子供を作った」ということで、相手方の精神的ショックが大きくなるからです。
出産までしていれば、なおさらです。
相手方が離婚を選択する可能性も高くなってきます。
離婚は慰謝料の増額要素とされていますので、慰謝料額が高額になってくる可能性もあります。
「不倫で妊娠してしまったら、慰謝料は減額できないのかな…」
決してそんなことはありません。
そもそも、相手方から請求されている額自体が多額すぎることも、しばしばです。
慰謝料の金額は、妊娠したこと、ただそれだけで決まるわけではありません。
あなたにとって有利になる要素だってありえます。
そもそも、妊娠したというのも、決してあなただけの責任ではありません。
あなたの言い分をきちんと主張して、減額に向けて争っていくべきです。
そうはいっても、あなたが弁護士を付けていないと不利になります。
特に相手方が弁護士を付けている場合は、なおさらです。
「要求に応じないなら、裁判所で決着を付ける」
そのように相手方が考えやすくなるからです。
「どうするの、責任を取って」
交際相手にそう言いたくなるのは当然でしょう。
あなたと交際相手とで、今後のことをきちんと話し合っていくべきです。もし交際相手が誠実な態度を見せないのなら、交際相手に対して慰謝料を請求する余地もあります。
でも、妊娠についてあなたにも落ち度がありそうな場合なら、責任を交際相手だけに押しつけるようなことは避けるべきです。
「相手方との離婚話を早く進めて欲しい」
中には、そう思う人もいるかもしれません。
気持ちは分かりますが、離婚するかどうかは交際相手と相手方とで決めることです。
あなたがそれをプッシュしすぎるとどうなるでしょうか。
「私たちの結婚関係を破壊しにきている」
相手方はそう思うかもしれません。
中には相手方を攻撃する人もいますが、それはもっての外です。
相手方は不倫の被害者です。あなたを妊娠させたわけでもありません。
「責任転嫁だ、反省も何もない」と思われて、相手方の怒りを増幅させてしまいます。
「妊娠したのは私のせいじゃない」
たとえそうであっても、相手方からの不倫慰謝料請求を放置してはいけません。
話し合いでは埒が明かないと思われて、訴えられかねません。
さらには欠席判決となり、相手方の言い分がそのまま認められてしまう可能性もありえます。
「相手方の言うとおり、妊娠してしまい中絶した。でも避妊具は毎回付けてもらっていたのにどうして…」
最近、ステルシング(性行為中に同意なく避妊具を取り外すこと)が問題視されているようです。
もしそういった言い分があるのなら、相手方からの慰謝料請求に対して反論しないといけません。
もちろん当の交際相手への追及も考えられますが、それと慰謝料請求とは全く別の話です。
相手方からの請求には、きちんと応答しないといけません。
逆に、相手方の請求内容に異議を唱えず、丸呑みしてしまうのも危険です。
丸呑みした約束の内容は、原則有効になってしまうからです。
不倫で妊娠すると、いろいろな問題が出てきます。
…中絶するのか出産するのか。中絶費用の負担、出産なら認知、養育費請求といった問題もありえます。交際相手とは関係解消するのか継続するのか。相手方と交際相手の(+あなたと夫との)離婚問題。相手方からの不倫慰謝料請求。交際相手が誠意ある対応を見せないなら、交際相手への慰謝料請求なども考えないといけないかもしれません。…
もし相手方から不倫慰謝料請求を受けたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
あなた自身で対応するのは避けるべきです。
「自分勝手なことばかり言って責任転嫁している」
そのように相手方から思われてしまう可能性が高いです。
妊娠発覚で気が動転して、ろくな反論もできないまま、相手方の要求を丸呑みしてしまうかもしれません。
弁護士に依頼して、きちんと話し合いを進めていきましょう。
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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