このコラムの監修者

-
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
慰謝料コラム
パートナーの裏切りを表す言葉として、「浮気」「不倫」「不貞」という用語が使われます。
これらは一見同じように思えるかもしれませんが、それぞれの意味する内容やニュアンスは異なります。
民法には「不貞な行為」という表現が出てきます(770条)。
しかしそれが具体的に何なのかは、民法には規定がありません。
浮気、不倫についても、民法上の定めはありません。
本記事では、弁護士の立場からこの3つの用語の違いについて解説します。
浮気というのは、3つの中ではもっとも日常的に使われている言葉かと思います。
広辞苑第七版では「他の異性に心を移すこと」という解説があります。
(先述のとおり、民法上の定義は存在しません)
浮気という言葉を用いる場合、心を移す人・相手のどちらとも、独身か既婚かというのはあまり問題にはしていないように思われます。
(例:「彼氏(独身)が、既婚女性と浮気した」「妻が、独身男性と浮気した」)
言葉が指す内容としても、異性と頻繁にLINEをしていたり2人きりで食事をしていたりすれば「浮気だ」と感じる人もいるでしょうし、「身体の関係がなければ浮気ではない」と考える人もいるでしょう。
アイドルやバーチャルな存在に熱を上げている状態を「浮気だ」と考える人もいるでしょうが、「そもそも手の届かない存在だから浮気にならない」と考える人もいるでしょう。
何が浮気にあたるのかは、個人の価値観などにも左右されることになります。
広辞苑第七版では「人倫にはずれること。・・・特に、近年では男女の婚姻外の関係について言う」という解説があります。
(先述のとおり、民法上の定義は存在しません)
道徳的に非難される不義の恋といったところですが、既婚者が配偶者以外の異性と恋愛関係を持っている状態(=相手の立場からいうと、既婚者と恋愛関係を持っている状態)を指すものと言ってよいでしょう。
単なる友人付き合いを超えた男女交際ということで、性的関係・肉体関係が存在していることも事実上多いかと思われます。
民法上に「不貞な行為」(770条)という言葉が出てきます。
この民法770条は、裁判上の離婚が認められる要件を定める条文です。
そこでいう「不貞な行為」が何を指すのかは民法には載っていませんが、最高裁判所の判例があります(最高裁S48.11.15判決)。
最高裁は、不貞な行為=「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と言っています。
(ちなみに離婚問題の場面では、同性との性的関係・肉体関係は、民法770条の「不貞な行為」というより「婚姻を継続し難い重大な事由」の問題だと考えられています)
そこで不貞という言葉は、配偶者以外の者と性的関係・肉体関係を持つこと(=相手の立場からいうと、既婚者とそのような関係を持つこと)という意味で使われることが多いです。
(広辞苑第七版でも「貞操を守らないこと」という解説があります)
それを前提とすれば「恋愛感情だけで性的関係は一切ない」(プラトニックな関係)という場合、浮気・不倫はともかく不貞には当てはまらない、ということになります。
「不倫したら必ず慰謝料の問題になる」(支払ってもらえる/支払わないといけない)と考えている方は少なくありませんが、これは正確ではありません。
慰謝料を請求する権利(損害賠償請求権)は法的な権利で、認められるのは、民法の「不法行為」の要件が満たされる場合です(709条)。
浮気・不倫・不貞があったとしても、不法行為の要件が満たされなければ、慰謝料は発生しません。
たとえば以下のようなものが問題になります。
①故意・過失
・既婚者と知らなかったことに過失がなければ、慰謝料は発生しません。
②他人の権利又は法律上保護される利益があること
・もともと婚姻関係が事実上破綻していた場合、慰謝料は発生しません(最高裁H8.3.26判決)
③侵害行為
・異性との肉体関係(不貞)が典型です。
・同性との行為で慰謝料を認めた裁判例もあります。
・婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある交流があった、というような理由で慰謝料を認めた裁判例もあります。
③因果関係
・「ショックで心療内科に通うようになった」という場合がありますが、そもそも不貞のせいと言えるのかどうかが問題となります。
浮気、不倫、不貞という言葉は、似ているようで異なります。
いずれも、民法にはっきりとした定義は書かれていません。
違いをあえてまとめると、以下のような形になるでしょう。
浮気:他の人に心を移すこと
不倫:配偶者以外との恋愛関係(既婚者との恋愛関係)
不貞:配偶者以外との性的関係(既婚者との性的関係)
不倫慰謝料が発生するのは、不法行為の要件が認められる場合です。
典型は不貞(肉体関係)があった場合ですが、婚姻関係を破綻に至らせる可能性のある交流があったという理由で慰謝料が認められた裁判例もあります。
不貞等があったとしても、過失がないとか以前から婚姻関係が破綻していたというような場合には、慰謝料が認められなかったり、減額されたりすることがあります。
不法行為の要件が満たされて一旦慰謝料が発生したとしても、時効で消滅することもあります。
(参照)不倫の慰謝料請求の時効は何年?
不倫・不貞の慰謝料問題については、弁護士の法律相談を受けることをおすすめします。
このコラムの監修者

秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
1 はじめに 不倫や不貞行為がバレて、交際相手の配偶者から慰謝料を請求されたとき、どうしたらよいのでしょうか? この記事では,不倫・不貞行為の慰謝料を「請求された側」の適切な対処法や予備知識を弁護士が解説していきます。 (注)「交際相手」=不倫関係を持った相手,「相手方」=慰謝料を請求してきた人(=交際相手の配偶者)のことを指して・・・
(1)債務不存在確認訴訟というのは、裁判所に「被告に対する義務はない、と認めてほしい」と訴え出る裁判のことです。 不倫問題でいえば、「不倫慰謝料を払え」と請求されている人が、裁判所から「慰謝料支払義務はない」と認めてもらうために、自分の方から相手方(慰謝料を請求してきた人)を被告として訴える、というものです。 不倫問題が裁判に持ち・・・
「肉体関係がないのに、交際相手の奥さんから不倫慰謝料を請求された…」 「性交渉までしていないのに、交際相手の旦那さんからの通知書では、不貞行為があったと言われている…」 不倫というと、どうしても肉体関係がイメージされますが、必ずしも性交渉まで持つとは限りません。 それでも不倫慰謝料を請求されたというケースは、しばしば見受けられます。 「本当に肉・・・
はじめに 夫のお気に入りの風俗嬢に不倫慰謝料を請求することはできるのでしょうか? 「単に客から指名されたのでサービスを提供しただけだ」 風俗嬢の立場から言えば、そのようにもいえそうです。 裁判例でも、店内での肉体関係について、不倫慰謝料は発生しないとしたものがあります。 もっとも中には、風俗嬢が店外で夫と不貞関係を持っているというケースもしばしば見受けられま・・・
貞操権侵害の慰謝料と相場は? 貞操権とは、一言でいうと「性的関係を持つか持たないかを決める権利」「性的なことがらについての自己決定権」です。 (民法で定義があるわけではありません) 貞操権侵害で慰謝料が認められるのは、「既婚者なのに独身だと騙されて肉体関係を持ち、結婚前提で交際していた」という場合が典型です。 貞操権侵害の慰謝料の・・・
「誠意を見せろ」などと抽象的な要求を受けたとき、要求を具体的に特定せず進めてしまうと、後から追加で請求を受けてしまうなど重大な不利益を被ってしまう可能性もあります。
はじめに 「不倫慰謝料200万円を払え、今後一切夫と連絡するな」という要求をされているその最中に、当の夫(=あなたの交際相手)から連絡が入ることもあります。 相手方(=交際相手の妻)から連絡するなと言われているのに、連絡を取ってしまっても大丈夫なのでしょうか? そもそも何の用事で連絡してきたの? 交際相手からの連絡といっても、その内容はさまざまです。 「妻が・・・
浮気相手からの慰謝料請求:関係者の整理 浮気相手から慰謝料(損害賠償)を請求された、という場合があります。 たとえば「夫Aには妻Bがいる。Aは女性Cと肉体関係を持っていた。夫Aが女性Cから慰謝料を請求された」というケースです。 (AからみればCと浮気しており、CからみるとAと不倫している状況) Aとしては「お互い合意のもとで男女の仲になって交際・・・
前提状況 妻がA、夫がBで、Bの交際女性(浮気相手)がCだとします。 不倫慰謝料は、妻Aが、交際女性Cに対して請求するものです(夫Bにも請求できますがそれはさておき)。 ところがどういうわけか、当事務所には何度か、次のような質問が入ったことがあります。 B「妻Aの名前で、妻Aには秘密で私が動いて、Cに不倫慰謝料を請求できますか?」 (実際には、Bが夫のことも・・・