このコラムの監修者

-
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
既婚者のマッチングアプリ利用で起こるトラブル・不倫慰謝料・離婚・・・弁護士が徹底解説!賢明な対処法と相場 | 慰謝料請求に強い弁護士
慰謝料コラム
「家庭に大きな不満はないけれど、どこか満たされない」
「実際に会わないなら相手を探すのは別にいいだろう。口コミも良さそうだし、無料の範囲で試してみよう」
既婚者でも、そうした軽い気持ちをきっかけに、出会い目的でマッチングアプリを使う人も少なくありません。
しかし、その気軽さ・手軽さの裏には、あなたの平穏な日常を根底から覆しかねない、「やばい」深刻なトラブルが潜んでいます。
「サクラに騙されて時間とお金を無駄にした」「顔写真付きの本人確認資料を提出したのにマッチングしなかった」というだけならまだ被害は軽いかもしれませんが、出会った相手とトラブルに陥ってしまうと、精神的に消耗して非常に大きな悩みを抱えることになります。
例えば以下のようなケースです。
この記事では、既婚者がマッチングアプリを利用することで起こりうるトラブルを紹介した上で、最も多くトラブルになりがちな、出会った相手との慰謝料問題を中心に、徹底的に検討・解説します。
万が一慰謝料問題に巻き込まれた際の賢明な対処法まで、専門的な視点から具体的に示します。
あなたの人生を守るための羅針盤として、ぜひ最後までお読みください。
目次
既婚者のマッチングアプリ利用によるトラブルは、以下のようなものがあります。
| トラブルの概要 | トラブルの相手 | 問題の内容 |
| 夫婦間トラブル、離婚 | あなたの配偶者 | 夫婦関係や離婚、離婚給付(離婚慰謝料など) |
| 貞操権侵害 | アプリで出会った交際相手 | 損害賠償(慰謝料) |
| 不倫(不貞)についての慰謝料 | 交際相手の配偶者、あなたの配偶者 | 損害賠償(不倫慰謝料、離婚慰謝料) |
| その他諸々(※) | 内容による | 婚姻関係崩壊、社会的信用失墜、金銭的損失など |
※:身バレ、サクラ、美人局(つつもたせ)、恐喝、ストーカー被害など
配偶者にアプリの利用や異性とのやり取り、連絡が発覚したことをきっかけに、夫婦仲が冷え込み、別居、そして離婚へと発展するリスクです。
「離婚は望まないがそうなってしまう」ケースだけでなく、あなたが離婚を望んでいる場合に「有責配偶者」として離婚の話し合いが不利になってしまう問題も含みます。
独身者対象のマッチングアプリを利用し、「自分は独身だ」と偽って交際した独身の異性から、貞操権侵害を理由に慰謝料を請求される、といったケースです。
貞操権侵害というのは、性的な事柄についての自己決定権の侵害のことで(=「既婚者だと知っていれば肉体関係なんて持たなかった」)、多くの場合、高額な慰謝料を要求されます。
あなたの配偶者から、交際相手との不倫不貞についての慰謝料を請求される可能性があります。
交際相手も既婚者の場合、交際相手の配偶者からも、不倫不貞についての慰謝料を請求されるリスクがあります(いわゆるダブル不倫)。
細かくいえば、交際相手が独身でも、「内縁の夫」や「婚約者」と名乗る人物から不倫慰謝料を請求されるなど、あなたとしては「美人局ではないか」と疑念を抱いてしまうケースもあります。
例えば以下のようなものがあります。
マッチングアプリを頻繁に利用したり、そこで出会った異性とLINEを交換してやりとりに夢中になったりして、配偶者から怪しまれることがあります。
その結果、配偶者にスマホのトーク画面を見られてしまってやりとりが全て発覚したり、保存していた画像を浮気の証拠として押さえられたり、探偵による調査で交際相手とホテルに入るところを写真に撮られたり、といったこともあります。
そうなると、配偶者から離婚を切り出される可能性もありますし、それに伴って多額の離婚給付(離婚慰謝料、財産分与など)をしなければならない、ということにもなりかねません。
マッチングアプリで出会った交際相手と性交渉等に及んだ場合、民法770条の「不貞な行為があったとき」に該当し、離婚原因(裁判で離婚が認められる事情)になります。
性交渉までしていなくても、場合によっては「婚姻を継続しがたい重大な事由」という離婚原因に該当すると判断されることもありえます。
離婚原因が存在すると判断されると、たとえあなたが拒否しても、配偶者の意向に沿って離婚となる可能性があります。
逆にあなたの側が離婚を望んでいる場合、その妨げになる可能性もあります。
一般論として、浮気した有責配偶者からの離婚請求は、そうでない場合に比べて難しくなる傾向にあります。
そのため、配偶者があなたの不倫・不貞を指摘して離婚を拒んできたり、あなたとしては離婚実現のために不利な約束をせざるを得なくなったりすることがあります。
例えば「既婚者なのに独身と偽って、独身の交際相手を騙して肉体関係を続けた」というような場合、交際相手から貞操権侵害を理由に慰謝料を請求される可能性があります。
よくあるのは、アプリの利用規約で独身者が対象となっているのに、既婚者が独身だと偽って登録し、探した異性と肉体関係を持つというケースです。
裁判例の特徴・傾向をみると、貞操権侵害の慰謝料が認められているのは、結婚前提とか結婚を視野に入れたお付き合いであったという場合が多いです。
結婚を視野に入れていたかどうかについて、あなたと交際相手とで認識・理解が異なることもあります。
あなたとしては本気でなくても、交際相手が「結婚前提の真剣な交際だと思っていた」と主張して慰謝料請求の連絡が届いたり、自宅や職場に弁護士から内容証明が届いたり、裁判所から訴状が届いたりする事態となる可能性もあります。
これらの結果、家族や職場に「アプリで出会った異性とトラブルになっている」と発覚する恐れも出てきます。
また、その点を交際相手が示唆して、法外な額の金銭を要求してくる可能性もあります。
あなたには「独身だと偽った」という落ち度があるため、不利な立場での交渉になりがちです。
場合によっては、交際相手に対して債務不存在確認請求訴訟を活用して、裁判で解決するほうが適切なケースも考えられます。
(裁判所を介した和解が成立する可能性もあります)
裁判例で実際に認められている慰謝料の額は、事情によってかなりの差があり、数十万円のこともあれば数百万円のこともあります。
実際にはかなり大きな額を請求されるケースが多いですが、逆に言えば、大幅な減額が可能なことも多いです。
詳細は、下記のおすすめの別コラムをご参照下さい。
参考:貞操権侵害の慰謝料とは?相場と対処方法についての知識を解説
あなたの配偶者から不倫慰謝料を請求される可能性もありますが、婚姻関係を継続していく場合には、請求されないことも事実上多いでしょう。
もっとも、「あなたの配偶者が交際相手に慰謝料を請求した→交際相手が慰謝料を支払った→交際相手があなたに求償請求してきた→あなたが交際相手に支払った」というプロセスを辿って、「あなたの配偶者の不倫慰謝料を、最終的にあなたも負担する」場合もありえます。
なお、交際相手が配偶者に対し、あなたに対する求償権(一部の負担を求める権利)を放棄した場合には、そのような負担は発生しません。
参考:求償権とは
交際相手が既婚者の場合、交際相手の配偶者から不倫慰謝料を請求される可能性もあります(いわゆるダブル(W)不倫)。
交際相手が独身でも、「内縁だ」「婚約者だ」と名乗る人物から不倫慰謝料を請求されるケースもあります。
不倫慰謝料を請求されて、その通知書や内容証明などが自宅に届いた結果、配偶者に浮気(不倫)のことが発覚してしまう可能性もあります。
逆に「あなたの配偶者が交際相手に不倫慰謝料を請求した→そのことを交際相手の配偶者が知って、あなたに慰謝料を請求してくる」ということもあります。
不倫慰謝料のおおむねの相場は、「交際相手の配偶者が離婚するとき:150~300万程度、離婚しないとき:100万円以下程度」ですが、その他の事情によって変わってきます。
実際に請求される額はこうした相場を超えることが多く、大幅減額できる可能性は十分あります。
あなたが慰謝料を請求されるとしたら、その状況を法的に整理すると、大きく分けると次のようになります。
①交際相手から:貞操権侵害を理由とする慰謝料
②交際相手の配偶者から:不倫慰謝料
➂配偶者から:離婚慰謝料/不倫慰謝料
なお、請求してくる人に弁護士がついていない場合には、「法的根拠(理由)もないのに慰謝料を請求してくる」という状況もありえます。
「慰謝料を請求される可能性が高そうだ」と判断される事情がある場合には、例えば「300万円を払え」などと具体的な額が分かっていない段階であっても、その時点で対応を開始するほうがよいこともあります。
例えば次のような場合には、慰謝料を請求される可能性が高い状況だと思われます。
(例)
実際に慰謝料請求を受けると、「大ごとにならないように(自分の配偶者に発覚しないように)穏便に解決したい」といった気持ちに引きずられて、不利な内容でサインしてしまうことも多いです。
慰謝料請求を受ける前に、専門家である弁護士に依頼すれば、請求の連絡が自宅に届かないようにする(そのことで家族に発覚することを避ける)などのメリットが見込めます。
「自分の配偶者から慰謝料を請求されそうだ」という場合については、離婚を選択するのか謝罪して再構築を目指すのかなど、夫婦関係についてよく話し合うべきでしょう。
慰謝料を実際に請求されると、「大ごとにならないように(自分の配偶者に発覚しないように)穏便に解決して安心したい」と考えがちです。
それ自体は当然のことですが、同時に「請求された金額は適正かどうか」を冷静に考えることができれば良いものの、焦ってしまい考えられないことも多いです。
冷静に考えたあなたが「弁護士に相談したい」と言っても、「自分のしたことが悪いと思うなら今ここでサインして」などと言われ、持ち帰っての検討が許されないこともしばしばです。
(「たとえそう言われても断固として持ち帰るべき」ではあるのですが、心理的に断りづらいので)
その結果、不利な誓約書や示談書にサインしてしまったり、サイン後に不安になったり高すぎることに気づいたりすることが非常に多いです。
しかし、「サインした後で争うのは、サインしていない場合に比べるとどうしても不利になりがち」というのは、重要なポイントです。
すぐに頼れるパートナーである弁護士に相談して、おすすめの対応策を検討しましょう。
できればサインする前に、サインしてしまったとしても慰謝料を支払う前に、相談すべきです。
法的には、離婚するかどうかと慰謝料を払うかどうかは別の問題ですが、実際上は、離婚や別居などをするなら慰謝料を要求される、離婚しないなら要求されない、ということも多いかと思われます。
請求されたということは、配偶者と離婚について話し合うことになる可能性も高そうです。
ただ他方で「配偶者は離婚を拒否しているが、私は離婚したい。配偶者から浮気(不倫)についての慰謝料を請求された」というケースでは、有責配偶者からの離婚請求ということで、離婚が認められるためのハードルが高くなってきます。
交際相手やその配偶者との間では慰謝料(お金)の問題となりますが、配偶者との間では離婚や家庭関係の問題にもなってきますので、その点についての検討も必要となります。
離婚する方向なのであれば、今後の手続き等について弁護士に相談するのも一つの方法です。
配偶者と交際相手との間で深刻な紛争が生じている状況ですので、それぞれが自らの立場を有利にするために、あなたに協力を求めてくる可能性も高いです。
特に配偶者との婚姻関係を継続する場合、配偶者と交際相手との間で板挟みになり、対応に苦慮することも多いと思われます。
あなたとしては、配偶者と交際相手のどちらにどの程度協力するのかを考える必要が出てきます。
(例)
場合によっては、配偶者と交際相手のそれぞれに中身の違う協力をすることで、双方からの要請にある程度応じたことにする形もありえます。
例えば、「不倫の事実は全て配偶者に明らかにする。ただし、後日求償された場合にはその大部分を払うと交際相手に約束しておく」と言った形もありうるかもしれません。
つまるところ、あなたが婚姻関係&交際関係をどうしていきたいのかという点を踏まえて、協力の内容・程度を選ぶことになってくると思われます。
以上で見てきたとおり、既婚者のあなたがマッチングアプリを利用することで、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
慰謝料という観点では、例えば①独身と偽っていたような場合には、交際相手から、貞操権侵害を理由として請求される可能性があります。
あるいは、②交際相手が既婚者である場合には、交際相手の配偶者からの不倫慰謝料請求を受ける可能性があります。
さらには③自分の配偶者から慰謝料や離婚を請求される可能性もあります。
慰謝料以外にも、身バレで信用を失ったり美人局などの犯罪被害に巻き込まれたりすることもありますので、慎重に行動することが大切です。
慰謝料を請求された場合、配偶者に知られず内密に処理したいということだけで頭がいっぱいになってしまい、不利な内容の約束をしてしまうことも多々あります。
これは非常に不利な結果を招くため、絶対に避けるべきです。
貞操権侵害の慰謝料にせよ不倫慰謝料にせよ、裁判で認められるであろう額よりもかなり高額になっていることは多いです。
逆に言うと、請求額から大幅に減額できる余地は十分ありえます。
すぐに弁護士に依頼して、対応を進めていくべきです。
(監修:弁護士橋本俊之)
このコラムの監修者

秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
はじめに 「不倫の件で示談書(念書、誓約書など。)を相手方(=交際相手の夫・妻)に書かされた、どうしたらいいですか?」 「交際相手に一切接触するなというのは構わない。でも示談金500万円なんて…」 このようなご相談も多く寄せられます。 不倫がバレて相手方から呼び出されると、色々と問い詰められます。 「書くしかない」「とにかく書かないと許してもら・・・
はじめに 夫のお気に入りの風俗嬢に不倫慰謝料を請求することはできるのでしょうか? 「単に客から指名されたのでサービスを提供しただけだ」 風俗嬢の立場から言えば、そのようにもいえそうです。 裁判例でも、店内での肉体関係について、不倫慰謝料は発生しないとしたものがあります。 もっとも中には、風俗嬢が店外で夫と不貞関係を持っているというケースもしばしば見受けられま・・・
不倫問題を当事者間で解決する際に、双方の一致点などを記した書面をやり取りすることがあります。 ※当事者:不倫をした人(加害者)と、配偶者に浮気された人(被害者)のことです。 そのような書面で用いられるタイトル・表題としては、示談書、合意書、和解書、覚書、誓約書、念書、といったものが多いかと思われます。 タイトル・表題が何かにこだわるのではなく、「書面の内容は・・・
はじめに 「不倫がバレて住所を教えろと言われています。教えないといけませんか?」 結論から言うと、相手方に住所を教える義務はありません。 しかし、住所を教えずにいればそれで済む、とは限りません。住所を教えるのも教えないのも、メリット・デメリットの両方があります。 もしあなたが弁護士に依頼すれば、相手方に住所を教えることなく解決できることもあります。 以下、細・・・
【慰謝料請求する側】 配偶者の浮気・不貞行為が発覚したとき、こみ上げる怒りや深い悲しみで、冷静でいることは難しいでしょう。 「許せない、絶対に償わせてやる」という気持ちになるのはわかりますが、やってはいけないことがあります。 感情的な勢いで行動してしまうと、取れるはずの慰謝料が取れなくなったり、逆に訴えられたりする最悪の事態を招きかねません。 ・・・
「不倫の誓約書に仕方なくサインしたけど、もし守らなかった場合どうなるの…?」 「サインさせても、もし守らなかったら、どうしたらいいの…?」 この記事では、「不倫発覚を機に誓約書(念書)を作成したが、これに違反した」場合に起こりうる法的責任やリスク、具体的なトラブル内容を弁護士が解説します。 誓約書に違反したらどうなるのか、 金銭や損害賠償の支・・・
不倫を会社にバラすと言われても、動揺せずに 不倫を会社・職場にバラすと相手方(=交際相手の配偶者)から言われることは、決して珍しくはありません。 二人が今も同じ職場だとか上司部下や同僚同士の関係にあるという場合に、しばしば問題になります。 相手方の言葉は「慰謝料1000万円を支払え。嫌なら職場や家族にバラす」といった直接的な(脅迫めいた)言い方・・・
はじめに:不倫・不貞行為で内容証明郵便が届いたら 不倫がバレて内容証明郵便が相手方(=交際相手の妻/夫)から届くと、不安でいっぱいになります。 「とてもこんな金額は払えない…」 「すぐ訴えられてしまうの…?」 「どうしよう、職場や自分の家族にバラされるかも…」 そんな思いで仕事や家事も手につかないことでしょう。 でも、内容証明郵便が届いたときに・・・
はじめに 「会社を辞めろ。今後一切夫に関わるな」というように、相手方(=交際相手の妻)から、強く退職を要求されることがあります。 交際相手が同じ職場の上司だったとか同僚同士の不倫の場合には、しばしば問題になることです。 会社を辞めろと言われても、当然ながらそう簡単に辞められるわけではありません。 とはいえ「ただでさえ不倫がバレて激高されているのに、要求を断っ・・・