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慰謝料コラム

遠方の裁判所から不倫慰謝料の訴状が届いたら

遠方の裁判所との物理的な距離や移動ルートをイメージさせるスマートフォンの地図画面

遠方の裁判所から不倫慰謝料の訴状が届いたら

不倫慰謝料を請求する訴状が届いた。しかも、自分の住んでいる地域とは違う遠方の裁判所からだった。このような場合、多くの方が「どうしたらいいのか分からない」と強い不安を感じることでしょう。

ここでは、不倫慰謝料を請求された側(被告)であるあなたが、遠方の裁判所から訴状を受け取ったときにどう対応すべきかを解説していきます。

 

仕事や家庭を抱えながら、何度も遠方の裁判所に出向くイメージが浮かび、「行けるわけがない。何とか裁判を取り下げてもらえないか」「今すぐ終わらせる方法はないか」と考えてしまう方も少なくありません。

不倫慰謝料を巡る訴訟は地方裁判所で行われることが多く、請求額も140万円を超え、場合によっては数百万円に上ることがあります。 「本当にこの金額を払わなければならないのか」「減額できるのか」といった金銭面の不安も重なりやすい場面です。

 

結論からいえば、遠方の裁判所で不倫慰謝料を請求された場合には、弁護士に依頼して対応することをおすすめします。

弁護士が被告代理人としてウェブ会議を活用しながら裁判に参加するのが現在の実務上は通常であり、多くのケースでは、被告本人が毎回遠方の裁判所に出向く必要はありません。 さらに、尋問前に裁判上の和解が成立して、被告本人が法廷に出頭することなく裁判が終わるというケースも多いです。

そして、請求額を適正な水準まで減額したり、有利な内容で和解するためには、それまでに適切な反論・主張・立証を積み重ねておくことが重要になってきます。

ここは、まさに弁護士の経験と専門性が問われる部分といえます。

遠方の裁判所から不倫慰謝料の訴状が届いたときの初動

遠方の裁判所名が書かれた封筒で訴状が届くと-あるいは裁判所の名前が記載された不在連絡票を確認すると-一体何から手を付ければ良いのか、と動揺してしまうことでしょう。

しかし、最初の対応を誤らなければ、その後の手続や解決の仕方に大きな悪影響が出ることは避けられます。

「訴状が届いた直後に本当に最低限やっておくべきこと」を確認しておきます。

1 訴状と同封書類を落ち着いて受け取り、中身を確認する

まず大前提として、裁判所から届いた訴状や呼出状を「怖いから」といって受け取りを拒否したり、封も開けずに放置したりすることは絶対に避けてください。

まだ受け取っていないなら、再配達を掛けるなり郵便局に出向くなりして、実際に受け取ってください。

裁判所からの郵便を受け取らない場合でも、一定の手続を経て「届いたもの」と扱われ、そのまま手続が進んでしまうことがあります。 無視していると、重大な不利益を受けるおそれがあります。

封を開けたら、最低限次の点だけは、落ち着いて確認しておきましょう。

  • どこの裁判所に訴えられているのか(裁判所名)
  • いつの期日に出頭するよう指定されているのか(初回期日)
  • いくら請求されているのか(請求額)
  • 原告はどういう言い分なのか(なぜ訴えられているのか)

2 初回期日と答弁書提出期限を確認する

訴状と一緒に(カバーレターのように)「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」といった書類が同封されているはずです。

ここには、初回期日(第1回口頭弁論期日)の日時や場所、答弁書提出期限などが記載されています。

答弁書提出期限は、多くの場合、「初回期日の1週間前まで」とされています。

受け取ってから初回期日まで、日程的余裕があることもありますが、切迫している場合もあります。

3 できるだけ早く弁護士に相談する

遠方の裁判所からの訴状を受け取ったら、とにかくできるだけ早めに、弁護士に相談するよう段取りを組んでください。
(弁護士へ相談したからといって、正式依頼をしなければならないわけではありません)

何をおいても「初回期日の対応をすること」が、極めて重要です。

 

この段階でどうしても最低限やらないといけないことは、初回期日に対応して期日を続行させる(裁判を続ける)ことです。

もし答弁書も出さず初回期日に欠席してしまうと、いわゆる欠席判決となり、原告の主張する慰謝料額がそのまま認められてしまう可能性もあります。

 「訴状に書いてある原告の言い分のこの部分がおかしい」とか「自分にはこういう言い分がある」という細かい話は、欠席判決にさえならなければ(裁判が続けば)後から提出することも原則的には可能です (後記のとおり、地方裁判所で欠席判決を受け、その後にそういう言い分を出すとしたら、高等裁判所への控訴が必要です)。

 

なお、「自分の正当な言い分を答弁書に全部書いて出し争っておけば、それで裁判が終わるだろう」と思うかもしれませんが、その場合は通常、裁判官が原告に対し答弁書に対する反論を指示したうえで裁判が続行される、という形になりますので、「答弁書の内容を正しいと認めてくれたうえ裁判が1回で終わる」という可能性は極めて低いです。

 

単刀直入に言えば、訴状を受け取った今は放置が許されない状況であり、仕事等を理由に後回しにできる段階ではない、と認識しておくべきです。

ちなみに、初回期日に弁護士のスケジュールが空いていないこともありますが、それ自体は支障にはなりません。

依頼を受けた弁護士としては、初回期日を変更せず答弁書提出だけで済ます(擬制陳述)なり、裁判所に期日変更してもらうなりの方法で、十分に対応可能だからです(当事務所の経験上、東京地裁では、当事務所が被告代理人としてついた段階で初回期日延期→ウェブ会議とされる→延期後の初回期日の1週間前までに答弁書提出を指示される、というケースが多いです)。

 

なお、弁護士の相談では、今後の裁判に向けて、以下のような点を確認しておくことには意味があります。

  • 訴状の内容に法的にどう反論し得るか
  • 今後どのように手続が進みそうか
  • 相場や増減事情を踏まえると、どの程度のレンジでの解決を目指し得るか

言うまでもなく、こうした点について相談していても、欠席判決となってしまうと意味がありません。

優先順位を間違えないようにしましょう。

訴状が届いたあとに「絶対に避けるべきこと」

前のセクションで、「訴状が届いた直後に最低限やっておくべきこと」として、初回期日の把握、できるだけ早めの弁護士相談についてお話ししました。


ここでは、そのうえで「やってしまうと後戻りが難しくなる NG 行動」を、特に注意しておきたい2点に絞って説明します。

1 答弁書も出さず、初回期日にも出頭しない(欠席判決のリスク)

遠方の裁判所から訴状が届いた場合、「いきなりそんな遠くまで行けない」「仕事が忙しいので、とりあえず放っておこう」と考えてしまう方もいます。
しかし、答弁書も出さずに初回期日に出頭しないという対応は、極めて危険です。

 

民事訴訟法上、被告が原告の主張を争わない場合や、答弁書を提出せず初回期日にも出頭しない場合、裁判所は原告の主張を真実と認めて裁判を進めることができるとされています。

その結果、いわゆる欠席判決となり、原告の主張する慰謝料額がそのまま認められてしまう可能性もでてきます。

 

初回期日については、争う内容の答弁書を出していれば、実際に出頭しなくても、その答弁書記載の内容の言い分を提出したものとして扱ってくれて(擬制陳述)、裁判を続行してくれます。

(もっとも、原告の言い分を認める内容を提出した場合は話が別です)

第2回目以後の期日については、地方裁判所では擬制陳述が認められません(簡易裁判所は別です)。

 

つまり、差し迫った初回期日については答弁書を出すことで擬制陳述で乗り切ったとしても、第2回目以後は(弁護士に依頼していない状況が続くならあなたが)出頭したり、きちんと詳細に反論・立証をしたりする必要があります。

その意味では、答弁書擬制陳述というのは、「きちんと反論するタイミングを一度先送りにできるにすぎない」ということです。

 

いったん地方裁判所で欠席判決が出てしまうと、それを覆そうとすれば、高等裁判所に控訴するしかありません。
控訴するためには、判決書の送達から原則2週間という厳格な期間制限の中で手続をとる必要があります。
さらに、地方裁判所の判決に仮執行宣言が付されている場合には、控訴しただけでは相手方による強制執行手続を止めることはできず、別途、強制執行停止の申立てなども検討する必要が出てきます。
「控訴して争わざるをえない」という状況になるくらいなら、最初から(地方裁判所の段階で)答弁書を提出したうえできちんと裁判に対応しておくべきです。

2 原告代理人に「取り下げてほしい」と裁判外で交渉してしまう

訴訟が始まっている段階で、裁判外で原告代理人と話をしてみたとしても、原告代理人から「既に裁判になっているのだから、そこで話をしましょう」といって断られることもあります。

裁判外での話し合いに応じてくれるとしても、多くの場合は「裁判上の和解(裁判手続の中での和解)」という形式を前提として話が進むことになります。

その理由は、原告としては、裁判上の和解という形式であれば、もしあなたが約束どおりに履行しなければ、そのまま強制執行が可能になるからです。

 

また、あなたは「何とか裁判を終わらせてほしい」と思っているわけですから、和解の内容としても、事実上、大きな譲歩を強いられることになる傾向があります。

その結果、「かなり重い内容の約束を、強制執行されるリスクを引き受けたうえで行う」ことになってしまいかねません。

 

そもそも、原告側の立場に立って考えると、既に裁判になっている以上、訴訟外での示談という形には応じない可能性が高いといえます(もし強制執行する場合、実質的に同じ内容について改めて訴えを起こす必要があり、非効率だからです)。

また、原告代理人としては、裁判の中で和解交渉を行う、あるいは判決を取得していつでも強制執行できる状態にしておいたうえで交渉する、といった選択肢もあります。

あなたは今すぐ交渉したいかもしれませんが、原告側としては必ずしもその必要がないため、不利な方向に話が流れがちです。

 

原告代理人に対して何か希望を伝えたい場合や、和解の可能性を探りたい場合には、裁判の中の和解交渉で伝える形が望ましいです。

あなた自身で裁判外で伝えても、足元を見られて不利な結果になりがちですし、弁護士を依頼したうえで「どの水準なら和解に応じるべきか」「どの条件なら判決まで行くべきか」を検討し、その結論に沿って対応していくべきです。

なぜ遠方の裁判所で訴えられるのか

「なぜ自分の地元の裁判所ではなく、わざわざ遠方の裁判所で訴えられてしまうのか」という点については、実際の相談でもよくご質問をいただきます。

 

不倫慰謝料の裁判は、法律上、被告の住所地、原告の住所地(慰謝料の支払い場所と考えられる地)、不貞行為をした地など、いくつかの裁判所から原告が選択できる仕組みになっています。

尋問を行うことになれば、原告自身もその裁判所に出頭する必要が出てきますから、多くの場合、原告にとって利便性の高い原告住所地を管轄する裁判所に提起される傾向があります。

その結果、特に原告の住所地が、被告(あなた)の現在の住所地から離れている場合、「遠方」の裁判所に訴えられる可能性が高くなります。

 

どこの裁判所が管轄するかは法律のルールで決まる部分が大きく、「遠方だから無効になる」「自分の地元の裁判所に必ず移してもらえる」といったものではありません。

そのため、「どの裁判所で争うか」よりも、「その裁判所でどのように負担を抑えながら対応していくか」を考えるほうが、現実的にははるかに重要になってきます。

遠方でも、すべての期日に裁判所へ行かなければならないとは限らない

遠方の裁判所に出向かずウェブ会議で期日に参加する様子をイメージさせるノートパソコンとヘッドセット

尋問以外の期日

遠方の裁判所で裁判が進むと聞くと、「毎回、現地の裁判所に行かなければならないのか」と心配される方が多いです。

弁護士に依頼すれば、「弁護士が被告代理人としてあなたの代わりに対応する」ことになりますから、あなた自身で出頭しなければならない期日はかなり限られます。

(「裁判官に直接自分の気持ちを伝えたい」といった事情があれば別ですが)

 

さらに、あなたの弁護士も被告代理人としてウェブ会議で裁判に参加する形となるのが一般的です。

そのため、あなたもあなたの弁護士も、現地の裁判所に毎回行くということはまずありません。

 

ウェブ会議は、近年の民事裁判手続のIT化により導入されたものですが、それ以前から実務上、「原告代理人が裁判所に出頭する一方で、被告代理人は電話で裁判に参加する(電話会議)」という形が広く行われていました。

最近では、弁論準備期日(今後の進め方などを原告代理人や裁判所と打ち合わせる期日)だけではなく、口頭弁論期日(いわゆる「法廷での裁判」に相当する期日)についても、裁判所が相当と判断した場合にはウェブ会議で実施できる、こととされています。

 

具体的には、訴状を受け付けた裁判所が、事件の内容や当事者の意向・状況などを踏まえて、どの期日をリモートで行うかなどを個別に判断することになります。

当事務所の経験上でも、被告側の弁護士として受任した事件では、初回期日を一度延期して別日を指定してもらい、その後はウェブ会議で期日が実施される、というパターンが多く見られます。

このように、多くのケースでは、遠方の裁判所に出向くのはかなり限られた場面にとどまり、通常の(尋問以外の)期日対応は弁護士がウェブ会議で担う、という形になってきています。

尋問期日と遠方の場合の出頭負担

尋問は、裁判官が当事者の話を直接聞き、話す内容だけでなく表情や態度なども観察して、その信用性を判断するという重要な手続であるため、通常の口頭弁論期日や弁論準備期日とは位置づけが異なります。

不倫慰謝料の訴訟では、尋問に証人を呼んで詳細に事実を争うケースはそれほど多くはなく、当事者尋問(原告・被告への尋問)だけで足りると判断されることも少なくありません。

(仮に第三者を証人として呼びたいと希望しても、裁判所が「不要」と判断して採用されないこともあります)

 

民事訴訟法上は、ウェブ会議等を用いた尋問を行うことも制度上は認められており、今後、事件によってこうした手段が用いられる場面が徐々に増えていく可能性はあります。

しかし、これまでは、原則として尋問は裁判所に実際に出頭する形で行われてきましたし、少なくとも本稿執筆時点においては、そのような運用が続いているのが実情です。

現時点では「ウェブ会議での尋問が制度上認められているから、裁判所に出頭する必要はない」と言い切れる状況ではなく、むしろ「尋問になれば裁判所への出頭が必要になる」と理解しておくのが適切でしょう。

 

以上をまとめると、弁護士に依頼している限り、

➀遠方だからといって手続の進め方が大きく変わるわけではなく、基本的にはウェブ会議で毎回の裁判が行われることが多いこと

➁ただし例外的に尋問まで至った場合には、その時に実際に裁判所へ赴く必要が出てくるので、負担がその分だけ(近場の裁判所よりは)重くなること

を押さえておくのが、実情に近いといえるでしょう。

不倫慰謝料の相場と和解を考えるうえでの基本

不倫慰謝料の金額については、「原告が離婚に至るかどうか」や「その他どのような事情があるか」に応じて、おおまかな相場のレンジがあります。

当事務所が扱ってきた事案や一般的な裁判例の傾向からすると、不貞行為の結果として原告が離婚に至る(婚姻関係が破綻した)ケースでは、慰謝料単体としては200万〜300万円程度の範囲で認められるケースが少なくありません。 もっとも、その中でも実際の解決金額は、事情によって150万円前後に落ち着く事案も多く、個別事情による振れ幅が大きいのが実情です。

離婚に至らないケースであっても、50万〜100万円程度が一つの目安とされることが多いものの、不貞期間が長い、回数が多い、原告側の夫婦関係に重大な影響が出ている、未成熟子がいるといった増額要素が重なれば、100万円を超える慰謝料が命じられている裁判例も少なくありません。「離婚していないから、そこまで高くはならないだろう」と安易に考えてしまうのは、適切ではありません。

 

慰謝料の額は、離婚するか否か以外にも、以下のようなさまざまな事情を総合的に考慮して決められます。

  • 不貞行為の期間、回数、頻度
  • 不貞前の婚姻期間の長さや夫婦関係の良し悪し
  • 不倫発覚後の対応(真摯な謝罪があったか等)
  • 未成熟子(経済的に独り立ちしていない子)がいるかどうか

例えば、不貞期間が長いという事情は慰謝料を増額させる方向に、逆に短いという事情は減額させる方向に、それぞれ働くことになります。また、不貞を認めて早期に謝罪や慰謝料支払の提案をしたか、それとも不合理な弁解を続けていたかといった、解決に向けた態度も金額に影響する要素として考慮され得ます。 

 

当事務所でも別コラムで不倫慰謝料のおおまかな相場について解説していますが、それらはあくまで「全体としての目安」に過ぎません。

実際の裁判では、例えば不貞行為の具体的な態様など、個別の具体的事情によって金額が左右されますし、「和解交渉で原告が相場を超える額に固執していて、あなたがどうしても絶対に尋問を避けたい」というのであれば、相場を超える額での解決を検討せざるを得ない場面も出てきます。

「相場コラムに書いてあったから自分もその程度で済むはずだ」と決めつけてしまうのではなく、あなたに有利な事情を適切に主張・立証し、裁判官にできるだけ有利な心証を抱いてもらうことで、ひいては「判決をもらえば、合理的なラインで解決できる」という目処を立てておくことが重要になってきます。

 

このように、「同じ不倫慰謝料の事件」であっても、個別事情の違い(や当事者の意向等)によって最終的な金額は大きく変わり得るため、「相場だけ」を見て自分のケースを判断してしまうことは、適切ではありません。

もっとも、遠方の裁判所かどうかによって、この「客観的に妥当と考えられる額の水準」や相場が著しく変わってくるということではありません。

東京地裁であれ地方の地裁であれ、原告が離婚するかどうかやその他の事情を総合的に踏まえたうえで、概ね上記のような相場・レンジの中で金額が決まっていく、というイメージになります。

「遠方だから高くなる」「近場だから安くなる」といった単純な図式で金額が動くわけではなく、あくまで事案の内容が中心になります。

 

不倫慰謝料の訴訟は、裁判官からの勧めを受けて和解が成立し、終了するケースが少なくありません。

だいたい3、4回目くらいまでの裁判期日で、原告・被告とも自分の言い分を述べ、物的証拠を提出し終えることが多く、その内容を踏まえて裁判官は「この事件について判決を書くとすれば、およそこれくらいの金額になりそうだ」という心証(見立て)を持ちます。

そしてその金額を一つの目安として、原告・被告双方に「この額で和解できないか検討してほしい」といった形で提案してくる流れが一般的です。

 

裁判官から提示される和解案の金額と、最終的に判決で認定されるであろう金額は、常に完全に一致するわけではありません(尋問の内容・結果も考慮されるからです)。 

とはいえ、事実上、和解案の額と判決で認定される額があまり変わらないことも多いです。

したがって、請求額を適正な水準まで下げたり、できるだけ有利な内容で和解したりするためには、裁判官から具体的な和解案が示されるより前の段階で、事実関係や有利な事情を丁寧に主張・立証しておき、「この事件で客観的に見て妥当といえる金額」のイメージを裁判官にきちんと持ってもらうことが重要になります。

 

そのうえで、裁判官から提示された和解案が、一般的な相場感や本件の事情を踏まえて、あなたとしても納得し得る水準だと感じられるのであれば、その案をベースに和解することには意味があります(遠方の裁判所に出頭することなく裁判を終わらせることができるため)。

一方で、裁判官から提示された和解案に対して、原告側がなお大幅な上乗せを強く求めてくるような場合には、遠方であってもあえて尋問に出頭して判決まで進み、裁判所の判断を示してもらう方が合理的といえるケースもあります(客観的な相場感や、これまでの審理の内容に沿った金額になる可能性が高いと期待できるからです)。

もっとも、そのような判断をする際には、尋問出頭による心理的な負担や、遠方の裁判所までの移動時間・費用なども併せて慎重に検討する必要があります。

 

遠方の裁判所であっても、実務上は多くの期日がウェブ会議で行われ、相場や和解の仕組みを踏まえて進んでいく以上、「どの弁護士に依頼するか」が最終的な解決の方向性を大きく左右することになります。

遠方の裁判所で訴えられたとき、どの弁護士に依頼するか

遠方の裁判所で不倫慰謝料の訴訟を提起されたとき、多くの方は、まずは弁護士に相談してみようと考えるでしょう。 そのうえで、「正式に依頼するとしたら、自宅の近くの弁護士でいいのか、それとも裁判所の近くの弁護士のほうがいいのか?」と悩むかもしれません。

 

先に述べたように、弁護士を代理人として選任していれば、尋問以外の通常期日(口頭弁論期日や弁論準備期日、和解期日など)については、「弁護士だけでウェブで参加する」という形が通常です。 さらに、あなたと弁護士との打合せも、多くの場合、メールや電話、オンライン面談(Zoom、Teams など)で行うことが可能です。

当事務所でも、原則としては事務所にお越しいただいて面談のうえご依頼をお受けしていますが、遠方にお住まいの方やお急ぎの事情がある方については、法律相談をオンラインで実施し、その後はオンラインで契約書を締結したうえで、依頼後はメール・電話・オンライン面談を組み合わせて事件の見通しや方針を共有していく進め方をとることも可能です。

そのため、仮にあなたの自宅と依頼する弁護士(法律事務所)とが離れていても、裁判対応に向けた意思疎通という意味では、さほど支障はありません。

 

裁判所が遠方かどうかにかかわらず、仮に尋問を行うことになれば、大きな心理的負担が出てきます。 公開の法廷で不倫の経緯等について質問をされ、これに回答しなければなりませんし、法廷には傍聴人がいる可能性もあります。たとえ傍聴人がいなかったとしても、原告本人と同じ空間で顔を合わせることになる点は、多くの方にとって大きな負担でしょう。

 

そして裁判所が遠方にある場合には、これに加えて、尋問期日に出頭するための移動時間や交通費、仕事を休まなければならないことによる収入面の負担など、物理的な負担も大きくなります。 こうした負担を考えると、「それなら、将来もし尋問になったときに通いやすい、訴えられた裁判所の近くの弁護士に依頼した方がよいのでは」と考えるかもしれません。

 

それも一つの考え方ですが、上述のとおり実際上は、尋問が実施される前に裁判官から和解を勧められ、和解成立により訴訟終了となるケースが非常に多く、尋問まで実施されるケースは相対的には少ないのが現状です。 そのため、「尋問のときに、弁護士が裁判所に通いやすいかどうか」というのは、必ずしも優先すべき基準ではありません。むしろ、「不倫慰謝料の相場や裁判所の運用を踏まえた主張立証にどれだけ慣れているか」「さまざまな内容の不倫事件を解決した実績があるか」といった点を重視して弁護士を選んだ方が、全体として合理的な選択になりやすいといえます。

 

当事務所へのご相談でも、例えば「千葉に住んでいて、大阪地方裁判所で訴えられた」「長野に住んでいて、東京地方裁判所で訴えられた」といったケースは少なくありません。 結果としては、被告本人が遠方の裁判所に一度も出頭することなく和解成立・解決に至ったものがほとんどです。

 

(参考:当事務所の解決事例)

【解決事例】遠方裁判所で不倫慰謝料訴訟 訴訟告知を行い70万円分割で和解した事例

 

さらに別の例として、「奈良に住んでいて、鹿児島地方裁判所で訴えられた」というケースを考えてみます。

このような場合、まずは自宅に近いところ(例えば奈良や大阪など)で弁護士を探す方が大半でしょう。しかし、尋問実施前にウェブ会議で和解に至ることが多いという実情を踏まえれば、例えば東京の弁護士に依頼したとしても、結果的に大きな支障は生じないケースも多いのです。

もちろん、尋問が実施される可能性はゼロではないため、その可能性を全く無視するのは適切ではありません。その場合の費用負担(弁護士の出張日当や交通費)等についても、依頼前に確認しておくことをお勧めします。

 

現状の裁判実務、すなわち、弁護士がついていれば多くの期日がウェブ会議で実施されること、そして尋問を実施する前に和解が成立して訴訟終了となるケースが大多数を占めることからすれば、「依頼する弁護士との物理的距離」というものは、必ずしも決定的な重要要素になるわけではありません。

まとめ:遠方の裁判所から訴状が届いたあなたへ

遠方の裁判所から不倫慰謝料の訴状が届いても、適切な初動と弁護士への早期相談ができていれば、欠席判決などの致命的な不利益は避けやすくなります。 その後の裁判手続は、多くの期日が弁護士によるウェブ会議参加で進み、尋問に至る前に裁判上の和解で終了するケースも少なくありません。

慰謝料の金額は、本来は不貞行為の内容などの事情によって決まるものですが、遠方の裁判所で訴えられてあなた自身で対応しようとすると、不利な結果につながりやすくなります。

不倫慰謝料事件の被告側の経験が豊富な弁護士と一緒に、どの水準での和解・判決を目指すかを検討していくことが重要です。

このコラムの監修者

  • 橋本 俊之
  • 秋葉原よすが法律事務所

    橋本 俊之弁護士東京弁護士会

    法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。

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