風俗嬢に不倫慰謝料を請求できるの? | 慰謝料請求に強い弁護士

  • 0358354050受付時間 平日9:00~20:00
  • お問い合わせ
新型コロナウイルス対策オンライン面談・電話相談 実施中

慰謝料コラム

風俗嬢に不倫慰謝料を請求できるの?

はじめに

夫のお気に入りの風俗嬢に不倫慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

「単に客から指名されたのでサービスを提供しただけだ」

風俗嬢の立場から言えば、そのようにもいえそうです。

裁判例でも、店内での肉体関係について、不倫慰謝料は発生しないとしたものがあります。

もっとも中には、風俗嬢が店外で夫と不貞関係を持っているというケースもしばしば見受けられます。

知り合ったきっかけがたまたま風俗店利用だっただけ。

それ以外は(風俗嬢ではない女性との)一般的な不倫と何ら変わりがない。

そういう場合もあります。

当事務所でも風俗嬢から慰謝料を回収した実績はあります。

(キャバクラ勤務の女性でした)

一般論としては、風俗嬢ではない女性との不倫の場合と比べると、不貞慰謝料請求の難易度が高くなる傾向は有るように思われます。

しかし上記のとおり、一般的な不倫と変わりがないケースも多々あります。

実際に不倫慰謝料を風俗嬢に請求してみると、風俗嬢がいくらかの不倫慰謝料を払う方向で交渉に応じてくる可能性もあります。

このあたりは具体的な事情にもよります。

場合によっては、夫への慰謝料請求に留めたり、夫に風俗店を利用しないよう誓約を求めたりするほうが無難な場合もあります。

風俗嬢に不倫慰謝料請求するときのハードル

どの風俗嬢かの特定

ある風俗店に夫が入り浸っていると分かっても、どの風俗嬢なのか特定できないと、慰謝料請求ができません。

風俗店に慰謝料を請求できるわけではありません。

せめて名刺くらいの証拠は必要でしょう(逆に、名刺があればそれで十分というわけでもありませんが)。

既婚者と知っていた?

風俗嬢が、夫が既婚者だと知っていた(=故意がある)

風俗嬢が,既婚者とは知らなかったがそのことに過失がある(=過失がある)

不倫慰謝料が認められるには、そのどちらかが必要です。

風俗嬢が店内でサービスを提供しただけなら、既婚者だと知る機会はなかったという場合も十分ありえます。

風俗嬢から過失は無かったと反論されると、一般論としては証明がなかなか難しいでしょう。

もっとも、風俗嬢が夫と風俗店外で(勤務外で)継続的に不貞関係を持っている場合があります。

勤務外で、個人的・親密なLINEメッセージを繰り返しやりとりしていることもあるでしょう。

そのような場合であれば、「既婚者だと知る機会があったはずだ」(=過失がある)といえる可能性もありうるでしょう。

そもそも不法行為ではない?

後記裁判例が述べていますが、「婚姻共同生活の平和を害するものではない」として、そもそも不法行為にならないという考え方もあります。

もっともこの点については、“既婚者と知って肉体関係を持った以上、不法行為には該当する”というのが、どちらかといえば一般的な考え方のように思われます。

正当業務行為?

風俗嬢は性的サービス(例えばソープランドでは性交渉そのもの)を提供するのが仕事です。

そのため、“店での行為は正当業務行為であり、慰謝料支払い義務は発生しない”という考え方も強いです。

性交渉を持つのが“正当”業務なのか?という疑問をお持ちになるかもしれません。

その点はさておき、結論として、店内の行為については慰謝料支払義務は認められないという考え方が強いのではないかと思われます。

もっとも実際問題として、風俗嬢相手の不倫というのは「風俗店で知り合った後で、店のサービスとは別のところで(店と関係なしに)不倫関係を継続していった」というケースもしばしば見られます。

このような場合なら、店の業務とは関係ありませんので、正当業務行為にもあたりません。

店外での交際はある?

こうした関係で,風俗嬢が夫と店外で交際をしているか、が一つの考慮すべき事柄になってこようかと思われます。

店外で親密なやりとりをしていれば、既婚者と知っていた(知ることができた)かもしれません。

店の業務(仕事)とは関係ありませんから、不貞を断ることもできたはずでしょう。

裁判例

クラブのママの枕営業→不倫慰謝料は認められず

この裁判例は、「ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には、当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではない」から、不法行為にはならないと述べ、不倫慰謝料を認めませんでした(東京地裁平成26年4月14日判決)。

なお、枕営業は、ソープランドの風俗嬢とは違って誰に営業するかを自由に決められる(=「指名されたからサービスしただけ」とはいえない)のですが、そのことは無関係であるとこの裁判例は言っています(出会い系サイトを用いた売春やデートクラブと変わりないから、という理由です)。

ソープランド店内での性交渉→不倫慰謝料は認められず

夫がソープランド店内で風俗嬢と複数回性交渉を持ち、嬢が店を辞めた後も、店の利用料金と同額を支払って関係を継続したというケースです(東京地裁平成27年7月27日判決)。

この裁判例は、店内での性交渉については、不倫慰謝料は発生しないと判断しました。「利用客・・・が対価を支払うことにより従業員である被告が肉体関係に応じたものであると認められ、それ自体が直ちに婚姻共同生活の平和を害するものではないから、これが原因で原告とCとの夫婦関係が悪化したとしても、被告が故意又は過失によってこれに寄与したものとは認め難い」というのがその理由です。

なお、この裁判例でも、風俗嬢がソープランド店を辞めた後の肉体関係については不倫慰謝料が認められています。

風俗嬢に不貞慰謝料を請求する前に考えておくべきこと

一般論として、不貞慰謝料請求を行うのは①精神的苦痛を補填する損害賠償を回収することが本来の目的です。

そのほか、②配偶者に接触しないと約束させること(接触禁止文言のとりつけ)も事実上の目的になります。

(参照)接触禁止文言

もし風俗嬢が、店の客だからということで夫の相手をしているだけなのであれば、慰謝料自体が認められない可能性すらあります。

接触禁止についても「仕事で相手をしているだけだから断れない、接触禁止の約束もできない」と断られる可能性も極めて高くなります。

風俗店からの退職を強いることは不可能ですし、 請求しても成果が上がらないこともありえます。

このような場合なら、夫に対して慰謝料を請求するほうが無難のように思われます。

(備考)風俗通いを止めるよう説得しても改めないのなら夫が責められるべきでしょう(あなたがそれに耐えられないなら最終的には離婚も考えるべきでしょう)。「夫が聞く耳を持たないから風俗嬢に請求したい」というのは、お勧めは致しかねます。

しかし、もし風俗嬢が店外で個人的関係を夫と持っている場合ならば、慰謝料のほか、例えば「店を退職することはできないが、店外で面会したり交際したりしないとは約束する」というように、ある程度の接触禁止も取り付けることができるかもしれません。

このように、個別具体的な事実経過・事情をふまえたうえで、この風俗嬢に不貞慰謝料を請求することで何が実現できそうなのか、その実現可能性は高いのか否か、というのは事前に考えておくべきでしょう。

このようなことは、そもそも相手方が風俗嬢で無くても事前に検討すべき事柄ですが、風俗嬢の場合はなおさら慎重に検討すべきと思われます。

まとめ

風俗嬢に不倫慰謝料を請求するにしても、そもそもどの風俗嬢だと特定できるのか、仮に特定できたとして夫が既婚者と知っていたといえるのか、という問題があります。

さらに風俗嬢の立場からいえば、客からの指名を断ることはできません。

そのため、店内での性交渉について不倫慰謝料を認めるのは酷だという考え方も成り立ちうるでしょう。

おそらく、上記裁判例もそのように考えたのだと思われます。

しかし、風俗嬢が店内だけではなく店外でも関係を持っている場合は、単なる客と店員との関係とは異なってきます。

その場合は「夫の不貞相手の職業が、たまたま風俗嬢であっただけ」「知り合ったきっかけが風俗店利用だっただけ」とも表現できるでしょう。

現実問題としては、①夫が店外で風俗嬢と関係を持っているケースよりは、②風俗店に入り浸っているというケースの方が多いかとは思われます。

ここで②の場合、風俗嬢に不倫慰謝料を請求したところで、問題が抜本的に解決されるわけではありません。

風俗であっても不貞行為として離婚原因になりえます。

場合によっては離婚の手続きを進めつつ,その中で夫に不貞を理由として離婚慰謝料を請求することも検討すべきでしょう。

(参照)離婚原因

しかし①風俗嬢が店外で個人的に不倫関係を継続しているケースも、決して少なくはありません。

このような場合には、風俗嬢に不貞慰謝料を請求したり、それと平行して接触禁止を求めたりすることも、検討に値すると思われます。

このコラムの監修者

  • 橋本 俊之
  • 秋葉原よすが法律事務所

    橋本 俊之弁護士東京弁護士会

    法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。

その他のコラム

  • 不倫慰謝料を請求された

不倫・不貞行為で会社を辞めろと要求されたら?

はじめに 「会社を辞めろ。今後一切夫に関わるな」というように、相手方(=交際相手の妻)から、強く退職を要求されることがあります。 交際相手が同じ職場の上司だったとか同僚同士の不倫の場合には、しばしば問題になることです。 会社を辞めろと言われても、当然ながらそう簡単に辞められるわけではありません。 とはいえ「ただでさえ不倫がバレて激高されているのに、要求を断っ・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

不倫慰謝料を請求された…してはいけない行動4つとその理由とは?

はじめに 不倫がバレて慰謝料を請求されてしまいました。 「自分はこれからどうなってしまうの、訴えられるの?」 「こんな金額、払えない…」 「夫にバレないように解決できるの?」 不安ばかりが先に立って、気が動転してしまうのも無理はありません。 まず、何よりも「これだけはやってはいけない」ということを知っておきましょう。 不倫慰謝料を減額して解決していく道が開け・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

肉体関係がなければ不倫慰謝料を払う義務はない?

はじめに 「肉体関係はないから、不倫慰謝料(不貞慰謝料)を払う義務もないですよね?」 そのようなご質問を受けることがあります。 確かに、不倫慰謝料を支払わなくてはいけない典型的なケースは肉体関係がある場合です。 しかし、「肉体関係がなければ慰謝料を支払う義務はない」とは限りません。 婚姻関係を破綻に至らせるような接触→慰謝料の可能性 不倫慰謝料請求は、民法の・・・

詳しく見る
  • その他

不倫慰謝料の示談書(請求側・される側双方の視点から)

はじめに 不倫慰謝料問題について話し合って示談することになったら、双方で約束したことを書面にまとめることになります(示談書)。 示談書は示談の証として作成するものですが、その内容や作成経緯によっては、後になって有効性が争いになることもありえます。 はじめに示談書について簡単に説明します。 その後、不倫慰謝料を請求された側/請求する側それぞれの視点から、どのよ・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

不倫慰謝料請求調停の連絡が裁判所から届いたら?

はじめに 「不倫慰謝料を請求されて話し合っていたが、その件で調停を申し立てられたという手紙が裁判所から届いた。どうしたらいいの?」 そういうご相談がたまにあります。 裁判所からの連絡(「不倫慰謝料調停の期日に来てください」という呼出状)は放置していいのでしょうか?不倫慰謝料調停には一応行くべきなのでしょうか? 結論をいえば、自分自身で不倫慰謝料調停に行くメリ・・・

詳しく見る
  • その他

不倫でも本気だった…離婚しない交際相手に慰謝料請求できる?

はじめに Aに配偶者Bがいることを知っているけれど、「Aはもうすぐ離婚できるみたいだ、そうしたら自分と結婚してくれる」と思って交際を続けているCさんがいるとします。 このCさんのように、既婚者である交際相手Aから「離婚してあなたと結婚するつもりだ」と聞かされていたのに、全く離婚の話が進んでいる様子がなく、聞いてもはぐらかされてしまう。結果として何年も付き合っ・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

不倫慰謝料を請求されているのに彼から連絡が…。返事しても大丈夫?

はじめに 「不倫慰謝料200万円を払え、今後一切夫と連絡するな」という要求をされているその最中に、当の夫(=あなたの交際相手)から連絡が入ることもあります。 相手方(=交際相手の妻)から連絡するなと言われているのに、連絡を取ってしまっても大丈夫なのでしょうか? そもそも何の用事で連絡してきたの? 交際相手からの連絡といっても、その内容はさまざまです。 「妻が・・・

詳しく見る
  • その他

不倫の求償権請求をするorされたときには弁護士をつけたほうがいいの?

  はじめに ABが夫婦で、Bの不貞相手がCだとします。 不倫慰謝料をAがCに請求し、その問題は決着がつきました。 その後でCがBに請求するのが、求償権の請求です。 求償権の請求は、不倫慰謝料を最終的にどちらがどれだけ負担するかという問題です。言ってみれば不倫交際の後始末の問題です。 求償権請求の問題については、弁護士をつけずにCB二人が話し合って・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求された

W不倫で慰謝料請求された。妻・夫には知られたくない…

W不倫を自分の妻・夫に知られたくない… Aさんと交際相手はどちらも既婚者で、男女の関係を続けていました。 不倫が交際相手の配偶者(=相手方)にバレてしまい、慰謝料を請求されてしまいました。 Aさんは「不倫慰謝料は請求されても仕方ないし払うつもりがある。でも、自分が不倫していたことを自分の妻(夫)には知られたくない」と思っています。 いわゆるW不倫ということに・・・

詳しく見る
  • 不倫慰謝料を請求したい

不倫相手が未成年。慰謝料は誰に請求できる?

はじめに 不倫相手が未成年というと「えっ?」と思われるかもしれません。しかし、「女子高を出て新卒で入ってきた子に夫が手を出していた」、「大学職員である妻が、大学生と肉体関係を持っていた」というケースもありえます。 あなたが不倫慰謝料を請求するとして、いかにもお金の無さそうな未成年の不倫相手本人に請求するしかないのでしょうか。お金を持っていそうな親に請求できな・・・

詳しく見る
離婚のご相談 Consultation
03-5835-4050