このコラムの監修者
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秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
慰謝料コラム
目次
「不倫慰謝料を請求されて話し合っていたが、その件で調停を申し立てられたという手紙が裁判所から届いた。どうしたらいいの?」
そういうご相談がたまにあります。
裁判所からの連絡(「不倫慰謝料調停の期日に来てください」という呼出状)は放置していいのでしょうか?不倫慰謝料調停には一応行くべきなのでしょうか?
結論をいえば、自分自身で不倫慰謝料調停に行くメリットはさほどありません。
それよりも弁護士に依頼して、弁護士に相手方との連絡窓口を務めさせたうえで、示談交渉あるいは訴訟で解決を目指す方向性のほうが適切かと思います。
①相手方も弁護士をつけてきて、弁護士同士での合理的な交渉が可能かもしれません。②相手方が弁護士をつけない場合、事実上請求が止まる可能性もあります。
以下、細かく見ていきましょう。
不倫慰謝料調停は、「相手方とあなたが、不倫慰謝料問題について、裁判所という場を借りて話し合う手続き」です。
調停といってもピンとこないかもしれませんが、「離婚調停」という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
離婚調停は、裁判所の一室で、調停委員を通じて夫婦が離婚問題について話し合います。
簡単に言えば、裁判所で話し合う内容を不倫慰謝料問題に変えたものが不倫慰謝料調停だ、と思って頂いてかまいません。
不倫慰謝料調停は、場合によっては、交際相手と相手方との離婚調停と一緒に(同じ時間・裁判所で)行われることもあります。
(備考)「相手方夫婦とあなたの3人が顔を突き合せて話し合う」という意味ではありません。あなた、相手方、交際相手のそれぞれが調停委員と話す形になります。
夫婦間では離婚問題(慰謝料、親権等々)を、あなたと相手方の間では不倫慰謝料問題を、それぞれ話し合うことになります。
このような場合なら、たとえば次のような形で、三者間の問題を一挙に解決できる可能性はありえます。
①交際相手とあなたがまとめていくらという形で、慰謝料を相手方に払う
②交際相手と相手方とは離婚する
もっとも、離婚調停の話し合いが長引いてしまい、それに引きずられて不倫慰謝料の話し合いも時間が掛かってしまう可能性もあります。離婚調停では、慰謝料以外にも色々と話し合うべきことがあるからです(親権、養育費、財産分与など)。
あるいは逆に「離婚の話し合いがまとまらないと不倫慰謝料の話し合いも進められないだろうから、それまで不倫慰謝料調停のほうは事実上棚上げにしておこう」「不倫慰謝料調停のほうは不調で終了させよう」ということもありえます。
「不倫慰謝料を払えという内容証明が弁護士から届いたり、裁判所から訴状が届いたりすることは聞いたことがある。でも調停ってどういうこと?」
その疑問はもっともです。
相手方が調停を申し立ててきた理由を推測してみると、おおむね2つが考えられます。
「不倫慰謝料を請求したいけど、弁護士に依頼すると費用が掛かるので自分で請求したい」
「不倫慰謝料を支払ってもらえないかもしれないのでもっと強く請求したい。しかし自分で訴訟を提起するのは難しい。調停なら、自分の力だけでも何とかなりそう」
おおむね、そういった理由が多いのではないかと推察されます。
不倫慰謝料調停の連絡を受けて、「相手方が弁護士を付けてこなくてよかった…」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、安心するのはまだ早いです。
相手方が弁護士を付けていないというのは、違う面から言うと、「相手方が自分の弁護士から説得されることもない」ということだからです。相手方は、説得を受けることなく過大な要求に固執し続ける可能性がある、ということなのです。
(備考2)相手方からすると、説得されるのが自分の弁護士からか調停委員からかでは、重みが違います。弁護士は依頼者利益を最優先に考えるので、「自分の味方が自分のためを思って説得してくれている」ということになります。他方、調停委員は単なる話し合いの進行役に過ぎません。
訴訟で、仮にあなたが「不倫・不貞行為はなかった」と否定したとします。
すると相手方は、あなたが肉体関係を持った事実などを証明する証拠を、裁判所に提出しなければなりません(ex.あなたと交際相手がラブホテルに入ったところの写真)
「2人の関係は怪しいが、はっきりとした証拠はない・・・」
そういう状況だと、相手方は自信をもって訴訟を提起できません。高額の弁護士費用を支払ったのに全く慰謝料が認められなかった、となりかねないからです。
そのいった理由で、訴訟を避けて調停を申し立ててきた、という可能性があります。
(参照)不倫(浮気)の証拠について
「不倫慰謝料問題についての話し合いを、裁判所で自分自身でしてみたい」
「もし調停に行かないと、話し合うつもりがないと思われるかもしれないから、どうしても自分で顔を出しておきたい」
そう思うのならば、期日に行ってみてもよいでしょう。
(備考3)後述のとおり、話し合うつもりがあることは、弁護士に依頼して交渉を持ちかけるという形でも、相手方に示すことができます。
もっとも実際には、不倫慰謝料調停での双方の言い分の隔たりが大きくどうにもならないことも多いように思われます。
話し合いがまとまらなければ、不倫慰謝料調停は不成立となります。
不成立となれば、「話し合ったが合意に至らなかった」という事実が残るだけです。何か生産的な結果が生じるわけではありません。
したがって、不倫慰謝料調停に行った方がいいとまでは言いづらいところです。
「不倫慰謝料調停には行かなくてもいいです」とまではっきりとは言いにくいのですが、行かないリスクは限定的だと思われます。というのは、調停に行かないこと自体には、ペナルティがないからです。
(備考4)訴訟の場合に、欠席裁判で「●●円払え」と言われてしまうのとは違います。
もっとも、「調停に出席しなかった場合、相手方はどうするだろうか?」ということを考える必要はあります。
相手方は、今度は弁護士をつけて連絡・請求してきたり、訴訟を提起してきたりするかもしれません。
(備考5)前述のとおり、不貞行為の証拠を確保していない場合には、費用や時間をかけてまで訴訟提起する可能性は低いかもしれません。しかし、「相手方には証拠がないはずだ」という確信まではつかめないことが多いでしょう。
(備考6)可能性はあまり高くないかもしれませんが、相手方が弁護士を付けず自分自身で訴訟提起してくる可能性も一応ありえます。
これらは「不倫慰謝料請求にきちんと対応しないリスク」というべきです(不倫慰謝料調停に行かないリスクというよりは)
「調停には行きたくない、話し合いもしたくない」
そういう態度を取るのは避けるべきです。これではさすがに、誠意がないと相手方に受け取られても仕方がありません。
不倫慰謝料調停に行かなくても、きちんと話し合う態度を示せば、裁判所に行かずとも話し合いが進んで示談がまとまる可能性はあるのです。
(備考7)弁護士を付けて相手方と話し合いを進めた場合、「話し合いはまとまっていないが、相手方からの請求が途絶えた」ということもありえます(「相手方には弁護士を付けてまで請求を続ける気は無い」ということでしょう)。
調停委員を介して話し合うので、あなたが相手方と直接話をする必要はありません。
調停に出席することで、相手方が「話し合いの意思があるようだ、ある程度誠意があるようだ」と受け取ってくれるかもしれません。
(備考8)調停に応じなくても弁護士に依頼すれば、相手方と直接話をする必要はなくなります(相手方との示談交渉は弁護士が行います)。
あなたにそれなりの言い分がある場合は、そのことを調停委員に説明して理解を得ることができれば、調停委員が低額での和解を勧めてくれるかもしれません。
低額での和解には相手方としては納得しにくい部分もあるかもしれませんが、「仮に訴訟を提起したとしても、色々反論が出てきそうだ・・・」というように考えて、早期解決の趣旨で最終的に和解に応じてくる可能性もあります。
調停が成立せず、費やした時間が無駄になったうえ不倫慰謝料問題は何ら解決していない、という結果になるリスクがあります。
調停は、通常だと各回2時間程度の時間がかかり、それが月1回のペースで行われます。それだけの時間をかけても、最終的に合意できなければ、不成立となるだけです。
不成立となってしまえば、不倫慰謝料問題は相手方との間で未解決のまま残っていることになります。
不倫慰謝料額についての開きが大きく、双方で話をしてもなかなか埋まらないことは非常によくあります。
そのため、「不倫慰謝料調停で話し合ってみても、費やした時間が結局無駄になるリスクは相当ある」と覚悟しておくべきでしょう。
(備考9)訴訟であれば、双方が和解できなくても、裁判官が判決を下します。その結果、何がしかの決着はつきます。
あえて言えば次のような場合には、不倫慰謝料調停に出席するという選択肢もありうるかもしれません。
①既にあなたが不貞の事実を認めているor相手方が不貞の明確な証拠を確保していそうな場合で、②不倫慰謝料額についての双方の隔たりが大きくなく、③どうしても問題をあなた自身で解決したい(弁護士を付けず自力解決したい)場合。
ちなみに、不倫慰謝料を請求された方から依頼を受けた弁護士の立場から言えば、問題をなるべく早期に適切に解決するためには、調停という手段は不適切なことが多いです。
前述のとおり、調停は月1回程度しか開かれないうえ、双方納得して合意しない限り解決が実現しません。そのような非効率な手段によるよりも、書面や電話で示談交渉(話し合い)を進めつつ、示談交渉が難しそうなら訴訟で裁判官を味方につけつつ減額を実現していくという方向のほうが、はるかに効率的で有意義だからです。
不倫慰謝料調停にもし出席するのなら、少しでも納得できない場合は合意しないこと、雰囲気に流されて迂闊な合意をしないことが重要です。
調停は、双方が合意に至れば、合意内容が調停調書となって成立します。
調停合意(和解)の内容を記した調停調書は債務名義となり、これには極めて強い効力があります。
すなわち、もしあなたが約束どおりに支払わない場合は、給与の差押えなどの強制執行を受けてしまう可能性もあります。
したがって、少しでも納得いかない内容には合意してはいけません。
「次回までに検討します」等と伝えた上で、合意前に弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
不倫慰謝料調停の中で、慰謝料を払う約束をあなたがしたとします。
「本当は相手方が不倫・不貞行為の証拠をほとんど何も持っていなかった」
そういう場合であっても、あなたが調停で約束した以上、支払う義務があります。
しかし、もしあなたが調停に行かなければ、不倫慰謝料調停は不成立になっていましたし、更にもしかしたら相手方は、不貞行為の証拠がないため訴訟提起をあきらめざるを得なかったかもしれません。
だとすれば、あなたとしては、結果的に不倫慰謝料請求から事実上免れることができていた可能性もありえます。
調停合意したあとで、「不貞を認めなければよかった」と悔やんでも後の祭りです。
どちらにせよ不倫慰謝料調停に出席するのなら、予めきちんと対応方法を考えてから行くことをお勧めします。
「とりあえず話をすればよいのだろう」
そのような何となくの気持ちで行くと、調停委員の目の前で不貞行為や不倫慰謝料を認めさせられてしまい、金額の面でも相手方に押し切られてしまう可能性もあります。
不倫慰謝料問題をきちんと解決したいなら、自分で調停に出席するよりも、弁護士に依頼する方が望ましいです。
依頼を受けた弁護士は、不倫慰謝料調停には出席せずに、相手方との示談交渉(話し合い)で示談できないかを試みる場合が多いと思われます。
(備考10)前記のように、三者一挙に解決できるようなメリットが見込める場合であれば、調停に出席する選択肢もあるかもしれません。
相手方の予想される反応は、概ね以下のどちらかでしょう。
(備考11)「弁護士を入れると相手方が逆上しませんか?」と心配する人がいますが、そういう心配はまずありません。仮に、弁護士を入れたことに相手方が苛立っていたとしても、それだけでは慰謝料の回収も何もできませんので、話し合いを試みようとしてくることが多いです。
「弁護士と話をするのは避けたい。自分も弁護士に依頼しよう」
と相手方が考えてくることも多いです。
弁護士同士で話し合いを行うことになります。
「自分で弁護士費用を払うのは嫌だが、相手(=あなた)がせっかく弁護士をつけたのだから、自分の要望を聞いてもらおう」
そういう場合も多いです。
相手方とあなたの弁護士で話し合いを行うことになります。
もちろん、話し合いを続けても、話がまとまるかどうかは別問題です。
まとまらないときは、相手方には、訴訟を提起するという選択肢が生まれます。
相手方に証拠がなければ、訴訟提起されずにそのまま事実上請求が終わる可能性もあります。
「示談はまとまらないが訴訟提起もしてこない。ということは、相手方は不倫慰謝料請求を事実上断念したのではないか」
そういう状況になることもあるのです。
場合によってはこちらから「不倫慰謝料を支払う義務はない」という訴訟を提起することもありえますが、相手方をわざわざ刺激してしまうことになりかねないので、そういうケースはあまり多くはありません。
訴訟になれば、裁判所の相場を踏まえた合理的なラインで解決できるように進めていくことができます。
ちなみに裁判の手続きがどのように進むのかは下記リンク先をご参照ください。
(参照)相手方との交渉のポイント
このように、「あなたが弁護士をつけたと知って、相手方は不倫慰謝料請求を事実上断念したようだ」ということもあります。
ただ、その期待をしすぎるのは禁物です。
「弁護士を付けてきちんと話し合っていこう。それでまとまらずに裁判を起こされたら、裁判の手続きのなかで適正に解決できるように頑張っていこう」
むしろそのように考えていくべきです。
「不倫慰謝料調停を相手方が自分で申し立ててきたのは何故か?」
不倫慰謝料調停を申立てられてしまった場合、まずはそのことを検討すべきでしょう。
もちろんそれは推測するしかありませんが、①費用を支払ってまで弁護士をつけたくないから、②あまり証拠がないので訴訟に踏み切れないから、そのどちらかが多いと考えられます。
不倫慰謝料調停に出席するのも、選択肢の一つです。ただ、そのメリットとデメリットをよく比較してからにすべきです。
不倫慰謝料問題では、相手方の請求してくる慰謝料額が莫大で話し合ってもなかなか折り合いがつかなさそう、ということもよくあります。調停で話し合っても溝が埋まらず時間の無駄だったというのでは、出席する意味はありません。
きちんとした形で最終的解決を目指すなら、あなたの側で積極的に弁護士をつけて対応していくことをお勧めします。
もっとも、弁護士を付けて対応していってもきちんと解決できず、うやむやな形になることもあります。
「相手方からの応答が途絶えた。示談成立もしていないし、訴訟提起もされていない・・・」
こういう状態になると、きちんと解決しておらず気持ち悪いと思うかもしれません。
しかしそれはそれで、相手方からの請求が止まっているわけですから、あなたにとっては有利なことです。そのまま時が過ぎれば、いずれ相手方の慰謝料請求権は時効にかかることになりますので。
(参照)弁護士に依頼するメリット
(参照)不倫慰謝料を請求された
このコラムの監修者
秋葉原よすが法律事務所
橋本 俊之弁護士東京弁護士会
法学部卒業後は一般企業で経理や人事の仕事をしていたが、顔の見えるお客様相手の仕事をしたい,独立して自分で経営をしたいという思いから弁護士の道を目指すことになった。不倫慰謝料問題と借金問題に特に注力しており,いずれも多数の解決実績がある。誰にでも分かるように状況をシンプルに整理してなるべく簡単な言葉で説明することを心がけている。
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